第二百七十五話 デートもどき -2 (叶・桜)
カナタとサクラは手を繋いだまま外に出てきた。
周囲からカップルだと思われていることは言うまでも無い。
「すごく綺麗な街並み…」
「ね、本当…西洋文化の最中に居るって感じがするでしょ」
「そうね。これでフランスとかイタリアとか旅行に行かなくても良いかも」
「えーっ…行こうよ、フランスとかイタリアとか、一緒に旅行にさ。大人になって…いつかの話だけど」
「まあ…考えとく」
二人は美しい街並みを手を繋ぎながら歩いた。
時にはお店の中に入ったりする。
まずは大衆向けの武器屋に入った。小さな店だと何か買わなくちゃいけなかったりする為である。
「ここは武器屋だね」
「ローキスさんが良い武器くれたんでしょ? なら武器は要らなくない?」
「や…でも雰囲気がさぁ…。武器って唆るじゃん? 我の力が増幅される気がするのだよ……! まあ、地球には既に剣や槍の武器屋なんて無いんだから、折角だし見てこうよ」
「もう…。だけど、確かにそうね」
二人は武器屋を出てまた、街中を歩き始める。
「ねえ叶。あの人…あの猫耳の女の人って…首枷とかついてるけど…? あ、ほら、あそこの耳が異常に長い美人な人も、首枷は無いけどなんか…。もしかしてこの国の人って、そういう系が好きなの?」
「どっからその思考が…。ああ、美花ネェが持ってたあの漫画のせいか…。少女漫画のクセに内容がきわどいからなぁ…アレ」
これの漫画のせいでミカもサクラも変な知識があるのである。
因みに、その漫画はミカが福引で1セット当てた物であり、自分で買ったわけじゃ無い。
ミカはそれを最初に読んだ時、ひどく赤面したのだった。サクラも同様に。
「叶…私にもああいうことしたい? だって私のエッチな姿覗いたんだもんね、きっとしたいんでしょうね。私は_____」
「いや…したいわけじゃ…。それにあの人達は奴隷だよ?」
「ほら、やっぱり」
「いや、だからそっちの意味じゃ無いって……」
カナタは珍しく、サクラに対して呆れ顔をした。
そのカナタの反応を見て、サクラは慌てだす。
「わ…わかってるって。ボケてみただけよ! 言うの恥ずかしいのよ? 叶だから通じるボケだなーって思ったんだけど…」
「そ、そうなんだ…」
「2回も幼馴染を恥ずかしめたんだから、お昼ご飯は叶の奢りね」
「そもそもサクラはお金持ってないじゃ無い」
「うん。それにしても奴隷なんて物騒ね…。ローキスさんに言って、奴隷の決まり、無くしてもらったほうが良いんじゃ無い?」
「いや…それは俺達が関わる問題じゃないと思う。でもやっぱり見ていて気持ちが良いものでは無いのは確かだよ」
「ええ…」
その後、二人は少し豪華なレストランへと入った。
みたところカップルばかりのレストランであり、サクラはカナタとここに来ることにより、デートっぽさが本格化したことに内心喜んだが、口に出してはいないので地獄耳のカナタでもその心に気が付いてはいなかった。
「か…叶。えーっとね、隣に座って良い? 席? 前じゃなくて」
「え、なんで?」
「良いじゃ無い、強いてワケを言うならそうね…あっ! ほら、昨日まで少し食事の時も手伝ってもらってたでしょ? その名残よ。これも少しずつ慣らしていきたいの」
「まあ、そういう事なら…」
サクラは4人座れるテーブル席で、カナタの前に座らずに隣に座った。
目的はカナタのより近くにいるのに他ならない。
二人はメニューを開き、頼む物を選んでいた。
「城で食べたものもあるね」
「メイドさん、食べる前に料理の説明してくれるからね」
「でも全く知らないのもあるし…ね、叶。それぞれ違うの頼んで、はんぶんこしない?」
「うん、そうしようか」
二人は昼食を食べ、デザートも大量(サクラが甘い物好きなため)に食べ終わった後も街を見て回った。
サクラにとってはとても楽しいひと時であり、カナタにとってはサクラを喜ばせるのに必死なひと時であった。
「こんなに二人だけで出かけて遊び歩いたのって久しぶりじゃない? 案外」
「そうね…最後にこんなに遊んだのは1ヶ月以上前ね。…叶、今日は色々頑張ってたでしょ? 実は」
「あっ…うん。わかってたんだ」
「それはそうよ、生まれた時から一緒だからね!」
家に帰り、買ったものなどを整理した後は、サクラが夕飯を作り始めた。
サクラがカナタに手料理を食べさせるのは3回目である。御礼の意味も込めて全力で作ったらしく、見た目はヤケに豪華。それもカナタ好みの味付けばかりである。
「さあ、召し上がれ!」
「うん…いだだきます!」
「………ねぇ、どう?」
「おいしいよ、すごくね。…本当に目が見えるようになって良かった」
夕飯を食べ終え、各々風呂に入り、寝る時間となったのだが_____
「な、なんか恥ずかしい…叶」
「だから俺はソファで寝るって…」
「ダメよ、これも少しずつ慣れないと…! あ、でもこんなに恥ずかしいなんて思ってなかったし…」
「………そうだね」
恥ずかしがっている一方、サクラはこれでもかというほどカナタに密着し、抱きついていた。
無論、先に眠りにつけたのはサクラであった。




