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第二百六十六話 野宿 (翔)

 リルは武器用の斧で周りの木を数本切り倒し、ちょっとした広場を作った。



「まあ、こんなもんかな。御主人! 私、木で気休め程度だけど、柵とかを作るよ」

「そうか。そういや木材加工っつースキル持ってたな。頼むわ。俺は飯つくってる」

「うん!」



 というわけで俺は飯作りを、リルは木材で何かいろいろやり始めた。


 さて、今回のメニューはノートフォーガの肉の塩焼きだ。

 炭水化物や野菜が持ってきてる分しかなく、今、食べちゃう訳にいかないのは悲しいが、肉だ。

 めっちゃ肉がある。

 成長期真っ盛り、思春期の男子高校生としてこれは嬉しい。


 まずは適当に薪木を組んでそこらへんの石とか周りに積み上げていい感じにし、魔法で火をつける。

 そしてフライパンをバックから出してそれに置いてみる。…いい感じだ!

 そして、フライパンにノートフォーガの脂身をしく。


 前もって塩胡椒を振っておいた肉を投入すれば、終わりだ。まあ…今回の量的に計4回は焼かなきゃダメかもな。



「ふぇ…いい匂い…」

「そうかそうか」



 リルがこの香ばしい肉の匂いに反応した。

 まぁ、狼だしな。

 …そんなこと言えるまで回復してるんだな。本当に良かった。


 しばらくして、食べようと思っていた分の肉を全て焼き上げ終わった。味は塩胡椒だけだが、美味いはずだ。



「リル、ご飯だ」

「ん!」


 

 リルはナイフなどの道具をバックにしまい、こちらにやってきた。

 俺は肉を盛った皿の一つをリルに渡す。



「悪いな、肉しかなくて」

「いいよ、御主人。私はパンや野菜より肉が断然好きなんだ。狼族だし」

「そうだったな。じゃあ食おうか」


 

 いただきますの挨拶も手短かに、俺とリルはフォークで肉を刺し、かぶりつく。

 

 美味かった……チャイルドラゴンの肉よりうめぇ。

 この世界はなんでこんなに肉が美味いんだ…野菜やパンは普通なのに。



「本当に高級肉って感じだな」

「そうだね! ハフハフ、美味しいね! 御主人!」

「ああ」



 この世界に来てから1番豪華な飯を、遭難している最中に食う事になるとは皮肉なもんだぜ。

 

 ノートフォーガの肉を食い終わった俺達はそれぞれのするべき事をし始めた。

 俺は皿洗いした後にノートフォーガの解体作業。

 リルは引き続き木で道具やらなんやらを作る。


 今はちょっとノートフォーガが多すぎて解体作業に追われているが、もしそのうち手が空いたら木材加工を教えて貰って手伝うのも悪くはない。


 辺りが完全に暗くなり、さらに数時間過ぎた頃、リルは作っていた物を俺に見せにきた。



「御主人、柵はやっぱりやめといたよ。椅子と机を作ったんだ」



 作業道具が斧とナイフしかない中、よくこれだけの物が作れるな。かなり良い出来だ。

 椅子は丸太を削ってつくったみたいだが、机は釘とか接着剤とか無いのにどうやって作ったんだろうか。わからん。



「すごいな。俺も解体作業が丁度終わったところだ。さ、風呂入って寝…」



 そこまで言って気が付いた。

 風呂は無いんだったな。

 

 だが、桶(リルのために最初に買ったもの)はあるから、タオルと俺の水と火の魔法を併用して、身体を拭くことはできるな。

 しかし……そう、それは男の俺は問題無いだろうが……なぁ?



「お風呂か。それは無いから水を含ませたタオルで身体を拭こう」

「お…おお、おう、おう。そうだな。おう」

「……? 御主人、どうかしたの?」

「いやぁ? な…なんにも、ななな何にもねーよ」

「じゃあ御主人から先にする? それとも私?」

「じ、じゃあ、おお俺で! うん…」



 俺はマジックバックからタオルと桶を取り出し、それに水を入れ、火であたためた。



「えーっと…じゃあ俺、向こうで」

「……御主人、こんな夜に一人で遠く行くなんて危ないよ」

「じゃあどこで身体を拭けと」

「それはここで……あっ…あー…!」



 やっとだ、やっと気がついたか。

 たまにそういうの疎いことがあるな、リルは。



「ともかく、俺は向こうで身体拭いてっから、なんかあったら言えよ」

「う…うん」



 俺は木4~5本分遠くに行き、木の後ろに隠れてさっさと身体を拭き、別の服に着替えた。

 こういう時、早いのは助かる。



「えーっと、終わったぞリル。向こうで済ませてこい」

「うん。わかったよ」



 俺がさっき居た場所と同じ方向にリルは消えていった。

 マジで暗闇だから、なんも見えねー。


 だがしかし、俺はとりあえずそちらに背を向けた。

 とりあえず今は、さっきまで着てた服を水洗いする事にする。リルに何か無い限り後ろは絶対に向かないからな。


 素早さを意識しながら洗い物をしたら、それなりに早く洗えたから、残りの時間は魔法で服を乾かした。

 もうここまでちゃんと魔法をコントロールできる。慣れるもんだな。



「御主人、終わったよ」



 リルが戻ってきた。

 いつぞやの時みたいに裸のままこっち来られたらどうしようかと考えていたが、それはいらん心配だったようだな。



「そうか。じゃあリルは自分の服を洗っておけよ。これが水で…これが乾かすために丁度いい温度にした火の松明だからな。俺は…そうだな、寝られる準備でもしてるわ」

「了解したよ」



 俺はまたリルがいる方を背にする。

 リルがさっきまで着てた下着を自分で洗ってるシーンを覗く訳にはいかない。俺は変態ではない。

 俺は寝袋二枚を取り出し、床に敷く。



「なあリル」

「んー? なんだい? 洗濯ならもうちょっとで終わるよ」

「そうなのか。ところで寝る順番はどうする? どっちかが起きてどっちかが見張ってなきゃいけねーけど」

「……私、ずっと起きてるよ。別に眠く無いし」



 んなこと言って…。

 耐えられる訳無いだろ、眠気には。

 リルが不眠に強く無いのは理解してるつもりだ。



「いや、寝ないと明日が大変だからな」

「大丈夫だって」

「んなわけねーだろ…。ここは遠慮とかしてる場合じゃねーぞ」

「遠慮…。別に遠慮はしてないけど…わかった。寝るよ。御主人が先に寝るといい。主に魔物を倒してたのは御主人なんだから」



 俺が先に寝たら、リルら起こさない…とかはねーよな? 

 ちょっと心配だな…釘を刺しとくか。



「わかった。じゃあ俺から寝る。5時間後に交代しよう。……だが、起こさないのはダメだからな? 一方が寝ないだけで、互いの命が危うくなることだってあるんだ」

「…! そ、そうか。わかった。ちゃんと起こすよ」

「5時間だぞ? あと火はそのままつけてていいからな」

「うん、了解したよ。おやすみなさい、御主人」

「ああ、おやすみ」



 洗濯物を乾かし始めたリルをよそに、俺は寝袋の中に入る。

 なんだかキャンプしてるみてーだな。其れもこんな可愛い子と____いや、やっぱりサバイバルだよな…一つのミスが命取りだもんな。


 俺は明日の予定を考えているうちに、寝付くことができた。

 

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