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Levelmaker ーレベル上げしながら異世界生活ー  作者: Ss侍
第九章 召喚されし者達
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第二百二十六話 英雄と兎 後編

「いらっしゃいませ。ウルト・ラストマン様とパラスナ・ネルヴァン様でしょうか?」

「はい」



 店のオーナーが二人を相手した。

 ちなみに、この店はギルマーズや、バッカス、その他SSランカー。一度だけアリムとミカも来たことがあった。

 そういう店のため、口は固く、どんな有名人が来ても驚くことはなく極上のおもてなしをしている。



「ご予約されていた、あちらの席へどうぞ」



 二人がオーナーに案内されたのは、この店の中で一番いい席だった。ちなみに、アリムとミカはここに座った。

 


「ここ、一番いい席じゃないの」

「まあね、少し頑張った」

「私のため?」

「もちろん」

「ふふ、ありがと」



 二人はメニューを見て、この店の自慢のフルコースとそれに合う酒を頼んだ。

 しばらくして、順番に料理は運ばれてくる。



「美味しそうね!」

「そりゃあ、この国で一番の高級料理店だからね」

「でも私、ウルトの料理も大好きよ?」

「それはありがとう」



 二人はそのまま食事を楽しんでいた。

 しかし、ウルトは食事中、肘が当たってしまい水をこぼしてしまう。



「うわっ…やっちゃった…」

「ボケッとしてるからよ。もぉ…」



 パラスナは立ち上がりウルトの元まで行きハンカチでウルトの服を拭こうとしたが、ウルトは自分のスキルを使って服を乾かし、床に散乱していたはずの水もなくした。



「はは、気をつけないとね」

「本当よ」



 その後も度々、スープを飲もうとしてナイフを使ってしまったり、サラダのミニトマトが中々掴めないなど…ウルトやらかした。

 普段ならそんなことはない。



「ウルトどうしたの? クリーチャーマスターの力を使って脳みそもう一個増やしたら?」

「……いや、それはやめておくよ」



 そうは言ったものの、やはり何かがおかしいと勘付いたパラスナはしびれを切らし、何か隠し事があるんじゃないかと考え直接ウルトに訊いてみることにした。



「ね、ウルト」

「なんだい?」

「なんか、私に隠し事してるでしょ」

「し…してないよ」

「怪しすぎるのよ。普段ならウルトそんなにドジなんてしないじゃない」



 ジト目でウルトを睨みつけ、パラスナはこう続けた。



「まさか……浮気?」

「いや、それはない」



 ウルトは即答した。

 パラスナはそんな彼の態度を見て、浮気ではないということは確信した。



「むぅ…なら、なんなのよ?」

「まぁ…どっちみち今日言わなきゃいけないし……。パラスナ、真面目で重要な話なんだ。聞いてくれ」



 ウルトはかしこまってそう言った。

 パラスナは慌て始める。



「ちょっとまって…貴方がそう言う時って、本当に重要な時だから……。すこし落ち着かせて。……まさか別れ話とかじゃないわよね? もしそうだったら私、ここで大泣きするわよ?」



 と、パラスナはもともと紅い目をさらに赤くしながらそう言った。

 ちなみにパラスナが住んでる場所はウルトの宿の、ウルトの部屋の隣である。

 アリムと初めて会った時は帰るフリをしていただけだ。



「別れ話なんかじゃない。むしろ逆というか…」

「逆?」



 ウルトは服のポケットをゴソゴソしだし、そして、一つの小さくて高価そうな箱を取り出した。

 そして、ウルトはその箱を片手に乗せ、開けた。


 中には指輪が入っていた。



「そう……今日はその…これを渡したくて」

「こ…これうぉ?」

「ああ」



 お互い、声が震えている。



「これってその…あれ、あれよね?」

「うん…結婚指輪だ。…………結婚しよう、パラスナ」



 パラスナは両手で口を押さえた。

 目からは大量の大粒の涙が流れる。

 そして、首を激しく何回も縦に振っている。



「えーっと…了承してるってことでいいのか?」

「うんっ…うんっ…!」



 ウルトは頬を赤らめながらも、パラスナが落ち着くのを待った。

 そしてようやくパラスナは落ち着きを取り戻し、涙をぬぐいながらウルトに話しかけた。



「はぁ…ごめん、取り乱しちゃって」

「や、いいよ」

「……夢じゃないわよね?」

「現実だよ」



 パラスナは自分の頬をつねった。



「…違うね」

「そりゃね」

「……ふふ、すごく嬉しいっ! だけど、なんでプロポーズする気になったの? 今までそれらしい素振りは一切見せてこなかったじゃないの」



 そんなパラスナの問いに、ウルトは恥ずかし気に答えた。



「いや…その、魔神との戦争でさ」

「うん…」

「いろいろあって…その…俺は、パラスナのことが本当に大切なんだって再確認したんだ」



 それを聞いたパラスナは至極嬉しそうに顔をほころばせた。ウルトは話を続ける。



「それにさ」

「それに?」

「実は、プロポーズしようと思ったのはこれで3回目なんだよ」

「ええっ!? うそ、何時?」

「去年と一昨年の今頃だよ」

「えーっと、去年と一昨年の私達が初めて会った日にちかしら?」

「うん、そうだよ。ごめん、断られたらどうしようって、中々勇気が出なくって。3年もかかっちゃった」



 そう言いながら、ウルトはパラスナの手を握る。

 パラスナはそれを強く握り返す。



「本当よ。……ふふ、でもこれで私は晴れて、貴方のお嫁さんね?」

「ああ」

「これからもずっーとよろしくお願いしますね? ウルト様! えへへ、中々懐かしい喋り方でしょ?」

「ああ、本当に懐かしいよ」



 その後、料理を食べ終えた二人は宿屋、光へと仲睦まじく帰っていった。


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