第二百七話 馬車 (翔)
スキルの説明をちゃんと見てから、だいたい2時間たったんじゃねーかな?
木の棒をそれっぽく振り回しながら歩いていたら、剣技っつーSK2が二段階も上がった。
本当にこれだけで良かったんだな。
というわけだから、今は腕をそれっぽく振り回してシャドウをしながら歩いている。周りから見たら完全に不審者だぜ……。
シャドウをしながら車輪の跡を辿っていると、割と整備されている道に着いた。
良かった、森からは抜けられたから、ひとまず安心だ。
シャドウもやめないとな、人に会うかもしれないし。
ここまで魔物には1匹もあってねーがな。
しばらくその道を辿っていたんたが、後ろから何かが走る音がしてきた。
後ろを振り返ってもまだ何も来ていなかったが、取り敢えず、道の脇に避けておく。
その10秒後くらいに、馬のような生き物3匹が大きな荷車を引いてやってきた。
馬車自体には男の人が鞭を持って乗っている。御者というヤツだろう。
俺はこの馬車が通り過ぎる時、荷台の中が見えちまった。
……中身は数人の女の子達。ボロボロの布切れを着ていて、肩には刺青か…焼印かはわからないが、とにかく黒い紋様がつけられていた。
それに、なんだか動物の耳がついていたような…。
その耳が片方千切れてる子もいたな。
なんにせよ、奴隷とかいうヤツか…?
あそこにいた女の子達はだいたいみんな、10代前後半くらいだったみてーだから……奴隷だと仮定すると、される事はつまりっ……! くそっ……胸糞悪りぃ。
かと言って、今の俺がどうこうできるわけじゃねーしな…。ただ馬車を見送ることしかできなかった。
無力だな…俺。本当に無力だな。元いた場所じゃ、親友2人が死んだってのに、ただ、悔やむことしかできなかった。その弟妹らも、こんな異世界に飛ばされて離れてしまった。
神様から特別に力を貰ったってのに、何かできるわけでもねぇ。
…………今は歩くしかないな。
つーわけで、また、10分くらい歩いていた。
そういえば肌寒い。木の葉の色や気温的にここは今、秋なのか?
やっぱ、だとしたらこの先、どのくらいでひとがいる場所に着くかわかんねーけど、学ランだけじゃ寒くなってくるな。
さっきの子達は…あんな格好で寒くないのか?
そう考えていた時だ。前方に、何かが見えた…って、さっきの馬車だ。なぜか道端で止まっている。
何事だ?
気になり、その馬車の元まで駆けてみると、運転していた人が馬車から降りて、何かと戦っていた。
かなり手こずっているようだった。
俺はより、その馬車まで近づいてみる。
ほぼ、馬車の真後ろまで来たその時、荷台の中にいる犬耳をつけてる見た目の子と目があったが…その目はまるで光が篭ってなくて…。
そうだ…今なら、この子達を救えるか?
いや…だが…そうなるとかなり色々な問題がでてくるだろうな。今の状況より酷いことになるのは目に見えている。
なら…今の俺は何ができるんだ?
………困っている人を助ける…か?
困っている人は…あの御者か。
でも……奴隷商人かもしれないヤツを救ってなんになる? いや、よく考えたらそれは俺の推測であって、実はあの子達は奴隷なんかじゃなかったら…。
それに、俺がここでこの馬車を無視し、御者が襲ってきているヤツに負けたらどうなる?
荷車にいた子達も………。
なら、あの御者の手助けをしねーとな。
俺はその御者が戦っている場所まで来た。
戦っていた相手は……赤い皮膚に鋭い耳と目を持ち、刃物や棍棒をもった、子供くらいの背の何か。
……俺の記憶が正しいなら、ゴブリンと呼ばれているはずだ。
それが……6匹か…?
「手伝いましょうか?」
俺はその御者に声をかける。
すると、その御者は短剣を振るいながらこちらを振り向いた。顔は思ったより凶悪じゃない。
「誰だかわからんが、助かるっ…!」
よく見てみると、御者は数匹のゴブリンの動きを魔法陣みたいなのが止めていたりする。
確かに普通だったら6匹も居る人型の何かを1人では防げるとは思えねーからな。なんか使ってるんだろう。
俺は一番近くにいたゴブリンに目をつける。
こいつに柔道の技は効くのかわからないし、強さもどれくらいかわからない。
それに、相手は服を着てない。だがそれに関しては…投げられないというわけじゃねー。
俺は釣り込み腰でゴブリンを投げ飛ばした。…初戦闘だが…手応えはあるな。
柔道を見た事ないのか、他のゴブリンもビビってるように思える。
俺はこの隙に、数匹のゴブリンを投げ飛ばしていった。
うち1匹が、打ち所が悪かったのか、気絶した。
あぁ、確かあの状態でさらに攻撃を加えると、死ぬんだっけか?
俺はそのゴブリンを蹴り飛ばす。
それと同時に、身体が温かくなった。芯からって感じがする。ステータスに変化でもあったか? 後で見てみるか。
しばらくして、御者と俺は全てのゴブリンを倒し終わった。つっても、やっぱり素手で倒すのは難しいのか、ほとんどは御者の短剣でとどめを刺したんだがな。
「いんや、助かった」
「通りがかっただけっスから…」
「そうか? でもどこかに行こうとしてるんだろ? 礼だ、進行方向が同じだったら送ってってやるよ。ちなみこの馬車はエグドラシル城下町に行くぜ?」
送ってってくれる…か。
ここは言葉に甘えるべきだろうか…? 城下町というだけあって、きっと大きな街なんだろうが…。
どうする?
奴隷商人かもしれない人に送ってもらうのか?
って、変なプライド持ってたら進むに進めねー。ここは…ま、送ってってもらうか。
「じゃ、頼めますか?」
「あいよ、んじゃあ隣に乗んな」
俺は言われるまま、御者の隣に乗る。
____馬車は動き出した。
本日は……私のもう一つの作品を投稿しようと思います!
題名は
私は<元>小石でございます! 〜癒し系ゴーレムと魔物使い〜
と言います。
詳しくは状況報告と、その作品で!




