第二百四話 空中
本日から九章、物語としては第二部でございます。
気づくと、翔と叶、桜の3人は高く空中に出ていた。
彼らが出てきた箇所には、水色の魔法陣が展開されていたが、すぐに消えた。
「は?」
「えっ…」
そう、言う事しかできない。
何しろ自体が全く飲み込めないのだ。
抵抗する暇などはなく、3人はそれぞれ真っ逆さまに下へ落ちてゆく。
「うわぁぁぁ!?」
「キャァァァッ!」
空中で風の影響のため、3人少しずつバラバラに広がっていってしまうが、かろうじて叶が桜の手を握り、自分の元へ手繰り寄せた。
翔のみが2人とどんどん離れていく。
(くそっ…何なんだよ、コレッ……)
翔がそう考えるのも仕方がない。葬式場に居たら魔法陣が出現し、いつの間にか気づいたら空中に居たのだから。
しかし、彼は落ちている最中だったが、あまりにも自体が突拍子もないせいか、逆に冷静でいた。
(何だかよくわかんねーけど……とりあえず、あの2人は助けねーと)
風の流れのせいで離れていく2人に、必死に近づこうと体を動かし、手を伸ばす翔だったがそれもかなわず、さらにさらに、2人から離れていく。
一方、叶も翔に手を伸ばしたがどう考えてももう近づけないと悟ると、今度は桜を握ってる手を動かした。
そして、何とか桜より下に行こうとする。
先ほどまで姉の葬式で泣いていたゆえの涙と、突然の落下による恐怖による涙を流しながら落ちていた桜だったが、その叶の奇行によって腕を動かされる感覚で気がついた。
「バカっ…ちょっ…あ……んた……なに……してんの?」
何とか自分の背中に桜を乗せることに成功した叶は体を翻し、桜な方を向く。
彼もまた、目に涙を浮かべていたが、桜にこう言った。
「この高さじゃ……まず助からない…でも、万が一……0.000001%よりも下かも知れないけれど、ここで俺がクッションになれば、桜が助かるかも……」
そう言いながら、桜を抱き上げる叶。
桜はより、涙を流しつつも戸惑う。
「えっ…まって…どういうこと……? なにがどうなってるかわかんないっ……メガネがないから見えないしっ……」
そう言っている間にも、地面はどんどんと近づいてくる。
(もう……ダメか……? くそっ、どうなってやがる? どうしてこんなことに……2人はどの方向にっ…)
翔の姿は森の中へと消えていった。
それを見ていた叶は叫ぶ。
「翔さんっ!? くそっ…」
「えっ…え? 翔さん? 何処にいるの? 見えないよ、翔さんがどうしたの?」
「……桜だけは……絶対に________」
すぐ目の前にまで、地面は広がっていた。
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叶がついに地面との衝突を覚悟したその時、彼らの身体が水色に光り、地面とスレスレで止まった。
と思ったらすぐにその光りは消え、少し乱暴に叶と桜は地面に着地した。
「わっ!?」
「きゃっ」
空気抵抗がなくなったからか、2人は抱き合う形となっている。
「助かっ……た?」
「なに…なにこれ…わかんないよぉ…」
桜は首を動かして周りを見ようとするが、やはりメガネがないからほぼなにも見えない。
そんな中、背中に誰かが触れるというより、軽く叩かれた感触がした。
「ひやっ!?」
「あ……ごめん、そろそろ俺から降りてくれると…」
「あっ…その……あ……えっと……バカっ!」
まるで叶にそう言うのがが当たり前になってるかのように桜から馬鹿と発せられた。
桜は少し乱暴に、叶から退いた。
2人とも立ち膝をする。
「あの…あのさっき……えっと…その…。庇ってくれようとしてその…あり…ありが…」
「どういたしまして」
「バカっ…最後まで言うのを待ちなさいよ」
顔を赤くして、桜は叶に恥ずかしがりながらバカと言う。
「それにしても…ここは何処だろね?」
「わからない……なにがどうなってるのか……」
「あっ…メガネがないんだったね。今な、空から落ちてきて森の中に居るんだ」
「えっ…でも私達、さっきまでお姉ちゃんの……ぅぁ…お姉ちゃんのっ…お葬式にっ……」
また、桜は泣き出す。
「うぇぇ…お姉ちゃんっ…お姉ちゃんっ…怖いよっ…何処なのココ…助けてよ」
桜は叶に正面からゆっくりと身体を預け、彼の胸で泣きだした。
姉を失った悲しみと、得体の知れない恐怖のせいだ。
そんな桜の背中を優しく撫でる叶だったが、何者が近づいてくるのに気づいき、そのままの体勢でその方向をにらむ。
「これが賢者か? 2人も居るな」
やってきたのは、1人の偉そうな人間と大きな馬車に、その馬車と人物を護るように居る、大勢のチーターのような動物の皮をかぶった戦士や、甲冑を来た女の人の群勢だった。
お楽しみいただけましたでしょうか?




