第百九十四話 ミカの誕生日 後編
漫画のようなシュチュエーションを有夢にやってもらった後は、2時間たっぷりと遊んだ。
例えばそうね…温水のウォータースライダーとか。
水着は有夢が、私が紙に書いた通りのものを作りだしてくれたの。
ただ、水着を出す時と私が水着を着る時、有夢は女の子に戻ったのよね。つまらん。
私が水着を着けた時の感想が、有夢とアリムで違ったのは面白かったけどね。
有夢が『似合う』で、アリムが『かわいい』って。
ちなみに有夢は男性用の水着を着けてたよ。
ウォータースライダー自体は普通に面白かった。
ウォータースライダーで一時間半遊んで…それで次にしたのはほっぺたプニプニね!
有夢にアリムに戻ってもらって、30分間ほっぺをプニプニしたの。ふふ…それだけじゃない。
前に一緒にお風呂に入った時のように、胸を揉ませてもらった。服ごしだったけど、すごく…柔らかかったです。
いちいち反応するのも、おもしろ可愛かった。
そして、お昼ご飯。
有夢は私になにが食べたいか訊いた。
「なんでも作るよ!」
「じゃあね…お寿司!」
「だと思って、実は昨日の夜中に新鮮な魚を釣ってきたんだ」
流石、私の幼馴染。
私がお寿司を食べたいというのを予測していたとはね。
有夢はお寿司盛りをすぐに作って、私と自分の席の前に並べる。
「召し上がれ」
「いただきます!」
まず最初に、私はSランクの魚の魔物の身だと思われる、美味しそうに脂ののったのを一貫、口に頬張る。
「ぅぁ…おいひい」
「えへへ、よかった」
天にも昇れそうなおいしさ。
やっぱり、有夢のアイテムマスターによる伝説級の料理は舌がドロドロにとろけそうになる。
おっとっと、ご飯がおいしすぎて忘れるところだった。あーんってして貰わないとね。これを忘れちゃだめ。
私は有夢の肩を叩き、こちらを向かせ、そのあとはただ口を開いて待った。
「あーん、する?」
私は頷く。
すると有夢は優しく私の口の中に海老のお寿司を入れた。この海老も多分、Bランクはするだろう。
ぷりっぷりの甘い身が有夢が使用中の箸に掴まれてやってきた。
「どう?」
「すごくおいしい! ね、有夢……はい、あーん」
私も、今、有夢からもらったのと同じネタのものを箸で掴んで顔に近づける。
有夢はニコニコしながら、それを食べた。
まぁ、この程度ならいつもやってる事。毎日やっても飽きないのよ、これが。
と、言っても男の有夢に対してあーんをするのは久々だけど。
「自画自賛になるけど…おいしい!」
「えへへー」
そのあとはひたすらお寿司を食べた。
全部、言葉では表せないくらい美味しかったよ。
好きな人と、誕生日に美味しいものを食べる……うん、これがきっと幸せなんだ。
お昼ご飯を食べ終え、時間を確認すると、今は、午後1時30分だった。
「30分くらい休憩しよっか」
「うん」
その30分間、私と有夢はただソファに座ってダラダラとしていたの。
楽しいかって? それはもちろん。
有夢と居ればどこだって楽しいの。
午後2時になって、有夢は立ち上がった。
「よぉーし、じゃあ次のおもてなしだね! ついてきて」
「わかった!」
シアタールームに行く時と同じように、私は、この屋敷を歩く有夢の後ろを着いて行く。
またすぐに、1つのドアの前に着いた。
そこを開けると、中は数台のベッドに、いろんな道具やリラックスできそうな部屋の配色…おそらく、マッサージをする為の部屋になっていた。
「おぉ…これは…」
「そう、マッサージルームなんだよ……じゃあ一旦服脱いで、バスタオル巻いてここに寝てね。準備ができたら呼んでね」
そう言い残すと、有夢はこの部屋の別の戸の中に入っていった。
マッサージかぁ…有夢がマッサージかぁ…。
きっと有夢のことだから、変なトコとか一切触らずにキチンとやるんだろうなぁ…。
とりあえず、私は有夢から指示された通りに支度した。
そして有夢を呼ぶ。
「準備できたよー」
「ん、いまいくー」
声がアリムだった。性別変換しちゃったのね、やっぱり……まぁ、有夢は照れ屋さんだし仕方ないけど…。
「よし…じゃあボクがミカのお疲れな身体をほぐすよ!」
案の定、出てきたのはアリムだった。
むぅ…。
「どうしたの? なんでミカはほっぺを膨らませてるの?」
「有夢…男のままやって欲しかった」
「ええっ……ぅ…わかったよぉ……」
渋々、男に戻る有夢。
まぁ、別にアリムのままやってもらっても良かったんがけど、中々、有夢の照れてる顔とか見るのは楽しいからね。もう少し、いじめてみようかな?
「……変なところ…触んないで……ううん、触ってもいいよ?」
「………ぁあ…うん、それは後でな。とにかく、今はマッサージを始めるよ」
「……うん、お願い」
あーあ、サラッと流されちゃった。
照れた反応が見れると思っ………ん? 今、後でっ…て言った? 後でって……。
う…うぁぁ…つまり…その…そういうことだよね?
えへ…えへへへへぇ……楽しみにしてよーっと…。
それはさておき、有夢はすごく上手く私の身体をほぐしていく。
「どう? 疲れてたでしょ、取材に続く取材で」
「んぅ…気持ちぃ…」
「よかった」
案の定、一切のおかしな挙動をしなかった有夢のマッサージは2時間で終わった。
……恋人同士がイチャイチャしてマッサージし合うアレじゃなくて……プロのマッサージだった。
いつの間に、あんなの覚えたんだろ?
「また、やってほしいかな」
「わかった、まかせてね」
マッサージを終えた私達は元の服を着なおし、部屋に戻った。
「次は何するの?」
「ん…昔みたいにさ、一緒にゲームなんてどうかな? 実はダークマターで作れてて……」
「んー……」
その提案にのるか、私は悩んだ。
何しろ、有夢は一旦、ゲームをやり始めると中々やめない。確かに、私と有夢は日本にいた頃はしょっちゅう、部屋でゲームをしていた。
それを懐かしんでのチョイスだろうけど…。
「有夢がゲームに夢中になって、私に構ってくれなくなりそうだしなぁ…」
「だ、大丈夫! 格ゲーだから!」
それなら大丈夫かもしれない。
有夢がのめり込むのはRPGだけだから。
でも有夢は格ゲーが…すごく弱…まぁいいか。
「なら…いいよ、しようか」
「よし、じゃあ準備するね」
そう言って有夢はダークマターで小さなテレビとゲームを作り出した。
テレビとゲームの電源はどうやら魔力みたいだ。
準備が終わった有夢は、私を呼んだ。
「じゃあ始めよう!」
「おーっ!」
有夢と私はベッドの横にもたれ、床に座り込んでゲームを始めた。
テレビ画面には私と有夢が1番遊んだ格闘ゲームのタイトルロゴが浮かんでる。
この感覚、本当に懐かしい。
よく考えたら、つい3~4ヶ月前まで2人で…たまに翔を交えたり、叶君や桜も加わって複数人でやってたっけ。
懐かしんでいたら、ゲームにキャラを早く選ぶように秒数カウントで無言の催促をされてしまった。
有夢はキャラを既に選んでいて、私がキャラを選び、スタートボタンを押すとすぐにゲームがスタートした。
ゲーム画面でチャイナドレスを着た女の人と、ムキムキのおじさんが闘っている。
みるみるうちに女の人の体力ゲージが減っていき…そしてムキムキのおじさんが勝った。
「うゎ…美花、強い」
「有夢が弱すぎるだけじゃない?」
「むぅ!? もう一回、もう一回!」
「あ、まって、その前に……」
私はピトッと有夢に寄り添った。
そして、そのまま有夢の肩に私の頭をのせる。
「ずっと、こうしてみたかったの…実は。えへへ」
「ふふ…もう遠慮とかする必要はないからね」
「うんっ」
その後の2戦目、3戦目、全て私の操るおじさんが勝った。
「ふっふっふっ……」
「強い……」
「あ、有夢、ちょっと脚を開いて?」
「ん…? あぁ」
私が言った通りに、有夢は脚を開いた。
私はその間に座り込み、自分の身体を有夢にもたれるように預けた。
「これは何回かやったよねー」
「うん…でも中3あたりからしなくなったよね」
「いや…なんだか恥ずかしくなっちゃって」
この状態のまま、私達は大体1時間30分くらいゲームをプレイし続けた。
大体、15戦くらいしたのかな…?
ほぼ全て私が勝った。
「私に勝とうなんて10年早い!」
「……むぅ…ぐやじい………って、もう5時半か…。そろそろ夕飯にしよう」
「私の勝ち越しだね!」
「うっ……そうなるね。とにかく、夕飯は今日はこのお部屋では食べないよ、ついてきて」
有夢はまた、この部屋からでて別の場所に向かった。
そしてまた、それもやけに豪華なドアが一つ。
「ここだよ」
「あ、わかった、中は高級レストランみたいになってるんでしょ?」
「せいかーい」
有夢がドアを開けると、中は私が言った通り、高級レストランそのものだった。
そして私と有夢はその場所の、個室へと入る。
「しばらくしたら料理がくるよ」
「あれ? 有夢は作らないの?」
「実は既に作っててね、マジックバッグで保存してた。料理はロボットが運んでくるからね」
「へぇ…楽しみ」
この個室から見える夜景がすごく綺麗。
多分、これもバーチャルなんだろうけど。
しばらくして、お料理と飲み物が運ばれてきた。運んできたのはすごく精巧に作られた紳士的な男の人のロボット…と言うよりはアンドロイド。
アンドロイドは料理の説明をすると、何処かへ行ってしまった。
有夢はシャンパンみたいな色をした飲料が入ったワイングラスを持ち上げる。
「んーえっと、コホン。君の瞳にきゃん杯……」
「あ、噛んだ」
「……っ……」
「大丈夫! 落ち込まないで、カッコよかったよ!」
私もグラスを持ち上げ、有夢のグラスにコツリとぶつけた。
「はい、乾杯!」
「か、乾杯!」
私はグラスの中身を口に注ぎ込む。
お酒じゃないよ? 林檎のサイダーだよ?
なにやら有夢がポケットをゴソゴソしている。
そして、綺麗に包装された何かを取り出し、私に渡してきた。
「プレゼントだよ」
「去年はクマさんだったよね。今年は…結婚指輪?」
「いや…それは4、5年後に。まぁ、とりあえず開けてみてよ」
私は包みを開ける。
中から箱が出てきて、それも開けた。
その箱の中からは綺麗な腕輪が一つ。
「これ…は?」
「これはね…ブレスレットだよ」
「見たらわかるよ…有夢のことだから普通のブレスレットじゃないんでしょ?」
「そう、その通り…それはね…」
有夢の説明によると、このブレスレットは神具級で、私に何かがあった時には私自身をその10秒前に戻すんだって。
例えば…私が何かによって死んじゃったり、封印されちゃったりした時…このブレスレットをつけてるつけてないに関わらず、私がその10秒前に戻って、それはなかった事になる。よく、こんなの作り出せたよね。
「これ、俺の分も作ったんだ。お揃い」
「あ、本当だ…えへへ」
その他にも効果がゴチャゴチャと山ほどあってよくわかんなかったけど、有夢とお揃いならそれで良しとしよう。
私の宝物がまた増えた。
「じゃあ…ご飯食べよっか」
「うん」
私は豪華なディナーに舌鼓をうった。
美味しい、有夢が作った、有夢と一緒なら尚更。
私と有夢がご飯を食べ終わると、また、あのアンドロイドが来た。
「それでは、食後のデザート……美花様へのバースデーケーキをご用意致します」
そう言って、またアンドロイドは去っていった。
「バースデーケーキかぁ…もちろん、有夢が作ったのよね?」
「うん、そうだよ」
だったら、きっと最高に美味しいに違いない。
あぁ、有夢はここまで、尽くしてくれた。
だけど、私、有夢の誕生日にここまでしてあげられるかな? うーん……。
「どうしたの美花、そんなむつかしい顔して、何か良くないことでも…」
「ううん、とっても嬉しいの全部! でも、私…来月の有夢の誕生日に…有夢が満足できることできるかなぁっ…て」
そう、つぶやくと、有夢は私の両手を握った。
「俺は、美花がなにをしてくれても全部、嬉しいけど?」
「ぅ…でも…」
「俺だって、自分がやれることを全てやっただけ。もし地球だったら、デートして…プレゼントするぐらいまでが限度だったと思う」
「私は…それだけでも十分…」
「でしょ? だから、俺もそうだよ。その…1番大切なのは気持ちだって、だれかが言ってた」
ニコッと笑う有夢。そっか…うん…。
気持ち…か。なら、私は有夢の誕生日に…できる限りの、気持ちいっぱいの事をしよう。
それしかできないけど、それでいいのかもしれない。
「お持ちいたしました」
ケーキが来た。
半分にしたら二人分丁度の大きさだ。
大きい3本のロウソクと小さい2本のロウソクが火を灯しながらケーキに刺さっている。
大きいロウソクが5歳で…小さいのが1歳か。
17歳ってことね。
ぺこりと一礼して、アンドロイドは去っていった。
「じゃあ、ロウソク吹いて」
「うんっ!」
私はその苺が沢山のってるバースデーケーキのロウソクを一息で全部消した。
「お誕生日、おめでとう! 美花っ!」
「えへへ、ありがとう」
有夢はバースデーケーキを4分の1カットを切って、2つずつお皿にのせた。
私は早速、一口食べる。
ケーキなんだけど甘すぎず…私の好みにぴったりの味。
「おいしいっ…私の好みを知り尽くしてる味ね!」
「そりゃね。ずっと一緒だったから」
「これからもだよね?」
「もちろん」
私達はケーキを食べ終わると、高級レストランっぽい部屋を出て、二人部屋に戻った。
「今は…7時半か。お風呂に入ろう」
「大浴場行きたいー!」
「うん、そのつもり」
と、いうわけでまたあの大浴場へと向かった。
私は脱衣所で服を脱いでたんだけど……気づくと有夢がまた、アリムに戻っていた。
「あ、有夢! また女の子になってる…どうせなら、今日はお風呂も男の有夢と入りたかったなぁ…前はアリムと入ったわけだし」
「お風呂は…勘弁して…」
「やだ! 今日は有夢と入るの!」
「えぇ…ならバスタオル巻いててね?」
私は渋々、バスタオルを巻いた。
有夢は男に戻ったみたいだ。下半身にだけバスタオルを巻いていた。
「さ…さぁ、入ろうか」
「でもさ…なんでそこまで恥ずかしがるの? 私達、付き合ってるんだよ? それに………前…お互い夜…さ…」
「あああああっ…れはあれ、こっ…これはこれ……っ!」
むぅ…本当になんかなぁ…。
実は、お風呂の中で唐突にバスタオルを脱いでやろうと思ったけど、それをすると有夢、なんだか倒れちゃいそうだね。
あの日のことが嘘みたい。
んー…まあ、これが有夢だし、仕方ないかな。
で、肝心のお風呂は…まぁ有夢が恥ずかしがって中々こっちを見ようとしないこと以外はなにもなかったかな。
お風呂をあがった私達は部屋に戻った。
時計を見ると10時だった。また長湯しちゃったみたい。もう寝るのかな、訊いてみよう。
「もう寝る?」
「ん…何かしたいことある?」
したいこと…有夢とイチャイチャ……って、正直に言うのは恥ずかしい。
だから、とりあえず抱きしめてって言っておこう。
「ギュってして」
「ん」
有夢は私を抱きしめる。
「…チュウして」
「ん」
有夢は私にキスをした。
ぁぁぁ…物足りない…幸せだけど…なんか…物足りないよぉ…。
「美花……なんか不満気な顔してるけど……本当にやりたいこと言ってなかったり……」
「私が本当に有夢としたいこと言ったら、有夢、絶対に恥ずかしがると思うよ?」
思わず、本音がポロッと出ちゃった。
「ぅ…ごめん……俺…」
「あ……その……気にしないで…もう寝よう、ね?」
私はベッドへと歩を進めようとしたけれど、有夢が私の腕を掴んでそれを防いだ。
そして、そのまま引っ張られ、有夢の元へと戻ってくる。
「ふぇ?」
「まだ…寝るのはもう少し待って」
私は抱き寄せられ、頭も優しく抑えられ…半開きの唇と唇が合わさる。
あの、戦争から帰ってきた日の夜のように、有夢の舌が私の舌と絡まる。
「ん……」
そして、しばらくして離れる。
えへ、やっとここまでしてくれた。
「実は……さ、まだ美花にプレゼントがあるんだ」
有夢は恥ずかしそうに頬を掻く。
まだ…プレゼント?
なんだろう…なんでも嬉しいけど…。
「改めて、ハッピーバースデー……美花」
そう言って、彼は片膝をつけ私に薔薇の花束を差し出した。
私はお花が大好き、特に薔薇。
だからこれはすごく嬉しいんだけど、それにしてもすごい本数……一体何本あるのかしら?
それに、薔薇の花束の間に、ハートのシールで封をされた手紙が一通挟まっている。
「有夢…薔薇…何本あるの?」
「101本だよ。『これ以上ないほど愛しています』っていう意味があるんだって」
これ以上ないほど愛してる…か。
「ありがとっ…私も愛してる」
「手紙も読んでみてよ」
「うん」
私は、薔薇を一旦そばの机に置き、手紙を読んだ___。
____
__
_
嬉しい……嬉しいっ…嬉しいよぉっ……。
私、私っ…有夢と会えて良かった……有夢を好きになって良かったっ……!!
手紙を読み終わった私は、気がついたら有夢に思いっきり抱きついて、顔から涙や鼻水を流していた。
心がドキドキする、手紙一つ、だけど私にとっては最高の贈りものだった。
「大好きっ…大好き…私も、とーっても大、大、大好きっ……!! あゆむっ…あゆむっ!」
私は強く、有夢を抱きしめる。
有夢は、そんな興奮しておかしくなってる私を、優しく優しく抱きしめてくれる。
嬉しいよぉ…。
「ねぇ、あゆむ、結婚しよう! 今すぐ! 年とか見た目とか関係ないよ、私、有夢と居られればそれでいいからっ。ね、ねっ!」
思わず、そんなことをくちばしった。
有夢は私の背中をさすってなだめようとしている。
「美花…その…そんなに喜んでもらえて嬉しいけど…一旦落ち着…」
「ムリッ!」
あったかい、とても腕の中っ…。
でも、抱きしめられるだけじゃ足りない…なら、私から、私からデーィプキスをしちゃったって良いじゃない。
私は顔を近づけて、有夢に口を合わせて深くキスをする。ネチョネチョと音を立てて、私は自分の舌を絡める。
有夢も私に合わせてくれる。
そしてお互い、口を離した。
「美花っ……」
「まだ…まだいいよね?」
「ん…」
2回…3回…4回、5回っ!、
私と有夢はキスをして、呼吸するために離して、またキスをする…これを何回も繰り返した。
脳みそがうまく働いてくれない。幸せということしか頭にない。身体もなんだかあついし…。
もう…。
「………あゆむぅっ……ねぇっ……わたし…」
「………わかった……臆病もやめだね。あの夜したみたいな事をまた……」
「んーん、あの時だけじゃメッ……もっと、もっとなの」
「でも…あれ以上もっと、って……言ったら……」
有夢の顔が赤くなる。
「有夢が私を大切にしてくれてるのはわかるよ? でも…私は有夢なら…有夢だからっ…有夢以外の人を好きになる事も無い。だから…お願い」
上目遣いで有夢を見つめる。
しばらく、そのまま考えている様子の有夢だったけれど、何かを諦めたのか、それとも吹っ切れたのか…。
「わかった……でも、これだけは訊くね。本当に後悔しない?」
私はフルフルと首を横に勢い良く振った。
「後悔なんてありえないっ、絶対ないよ! …それに、私はもう17歳だよ? 日本だったら16歳で結婚できるし……この世界だったら男の人でも16歳で結婚できる……つまり……その……」
何がおかしかったのかはわからない、けれど有夢はにっこりと笑う。
「俺も……美花を大切だとか言って、逃げてたのかもしれない。いや、何かからはわからないけれど」
そう言うと、有夢は私を、また、お姫様抱っこしてくれた。
「今日二回目だね、お姫様抱っこ」
「うん……」
有夢は私をお姫様抱っこしたまま、寝室へと歩いた。
_____
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朝。
外で小鳥がチュンチュンチュンチュンと鳴いている。
なんだか、デジャビュを感じる。いや、前よりも小鳥の数が多い…?
私はグッシャグシャのベッドから、ちょっと無理して身体を動かして這い出た。
部屋は私達が風邪をひかないように、まるで春終盤のように暖かくなっている。
シャワーを浴びようと思って立ち上がろうとしたけれど、やっぱり力が入らない…。
私は偶然近くにあった私のマジックポーチからマスターポーションを取り出して飲んでみた。すると、さっきまで力が入らなかったり、だるかったりした身体が回復したの。
これはアリムがいつも薬に頼るのもわからなくもない。
私はそのままシャワールームに直行して、シャワーを浴びる。
そういえば、有夢はベッドのエンチャントの一つに、自動的に綺麗になる機能があるから、洗ったり干したりしなくても大丈夫とか言ってたけれど…いやぁ、それはちょっとね……。わかってても気になる。
やっぱり、後でお洗濯しよう。
運良く今日は天気も良いし。
シャワーをとめて、シャワールームから出て服を着る。
そして朝ごはんの準備。
うーん案外、私…冷静だなぁ…。こういうものなのかな?
でも、気持ちはすごくすごくすごくすごーーーく、幸せなの!
有夢は私のもの、私は有夢のもの…もう完全に揺るぎなくて…私は身も心も有夢一色なの! って、全然冷静なんかじゃなかったわね…えへっ。
私が朝ごはんの準備をしていると、有夢は起きてきた。
「あっ、おはよう、アナタ!」
「おはよ、ミカ!」
有夢はこちらにスタスタと歩いてきて、私にキスをする。
「ん…」
「んっ…えへへへ。 あ…有夢、とりあえずシャワー浴びて、服着て…」
「あぁ、そうだね」
そのまま有夢はシャワールームへと向かっていった。
なんだか、いきなりいろんな抵抗がなくなった気がするというか…。えへへ。
すぐに有夢は戻ってきた。
今日は…アリムに…戻ってない!?
「有夢、アリムにならなくていいの?」
「今日は特別。午後までこのままでいるよ」
「そっか」
私達は席について、できた朝ごはんを食べる。
「ミカ…痛む所とか無い?」
有夢が私のことを見つめながら、そう言った。
さっき、ポーションを飲んだから大丈夫。
「んふふ、大丈夫! あ、そうだ! ねぇねぇ、有夢」
私は食事の途中だけれど、有夢の側まで立ち上がって駆け寄った。
「不束者ですが…これからも、よろしくお願いします!」
「うん、こちらこそ」
私は有夢に頭を下げた。有夢も私に頭をぺこりと下げる。
あぁ、そうそう、手紙も一生大事にとっておくからね。
私の1番の宝物として。
あ、私の1番の宝物は有夢そのものか…。
えへへへへ。
あー、楽しかった!
これでまた、しばらくは2人のイチャイチャはありません。残念です。正直言うとあと二十話くらいはイチャイチャさせたかったです(´・_・`)
次回予告
ついに、アレが再登場します。




