第二話 ここはどこ?
いや、マジでどこだよここ。
俺はゆっくりと、立ち上がってみる。
………ん?
少し待てよ? いつもより目線が少し低いような気がする。頭をうっておかしくなったのかな、俺。
おかしいのはもとからだって、美花がいたらいいそう。
そんなことよりまずは状況把握しなければ。ここは……見る限り森の中。だけど日光がちゃんと射している。また、少し先の木にピンク色の鳥が止まっているのが見える。
なんつー鳥だろ…?あれ。フラミンゴみたいな色をしている。
いや、見たことがないのはあの鳥だけじゃない。俺の足元に咲いている花。これも全く見たことがない形状をしている。さらに、森の木の中の数本、葉っぱが整ったハート型なんだ。
おかしい。
さっきまで俺は誰かに連れ去られてここに放置されたのかと思っていたけど、どうにもそれでは納得がいかない。俺を連れ去る理由がわからないってのもあるけど、
周りのこの見たことのないような動植物……。直感が言っている。
………ここは別世界。少なくとも日本ではないと。
俺はふと、自分の左腕を見た。
驚愕したよ。なぜなら俺が3年前、傷を負って7針ほど縫った箇所が見当たらないんだから。
いや、それだけじゃない。
肌も白めになっているし…。そして極めつけは頭からヒラッと落ちた髪の毛だ。その色が驚くべき色だった。
ーー真っ赤ーー
いや、頭を強くうったので血で赤くなるのは当然かもしれない。だけど、今、頭は濡れていない。ガビガビになってもいない。そして、その髪の毛は血の黒っぽい赤とはかけ離れた綺麗な鮮紅。姿もべつ者になっているみたい。
_______決まりだ。ここは俺が元居たところなんかじゃない。もし、誰かいたら笑われるかもしれないけど、どうしてもここが地球だとは思えない。
確かに本当の俺に似ているとこもあることはあるが、俺はここをこう思うことにし、ポツリと呟いた。
「別世界……か…」
その時、ハラリとまた、上から何かが落ちてきた。
「紙?」
思わずそう呟く。その落ちてきた紙を拾って読んでみた。そこにはこう書いてあった。
《君へ。突然のことでビックリしたことでしょう。
残念ながら貴方は地球で、落下してきた植木鉢が頭に当たり死んでしまいました。しかし、貴方がこの間、私の頭に落ちてきた鳥の糞を落とし、お供え物までくれたその優しさ……。感動しています。
ですから私のできる範囲内で魂だけでもすくいだしました。
この世界の名前は"アナズム"。
本当は貴方が地球で死ぬのを回避させたかったのですが私にはそこまでの力が及ばず………。本当に申し訳ありません。
こうして魂を別の世界に送ることはできました。そこの世界で人生を楽しみ、幸せになって頂けると嬉しいです。
ここからはこの世界についての説明ですが、貴方に特別な力などを授けたりすることも、力及ばず、することができませんでした。ただ、この世界の言語を貴方は読み書きできるようにはなっています。
また、目を閉じ[ステータスを見たい]など頭で念じると、色々な説明がみえてきます。まぁ、それはこの世界の住人全員ができることですが。
最後に忠告です。
貴方本来の年齢は16歳ですが、今この世界では貴方は12歳ほどになっている筈です。ちなみに、この世界でも死ぬと、今度は魂も死にます。
どうぞ、お気をつけて。幻転地蔵より。》
「っ………。」
マジかよ。俺、やっぱ死んだのか……。
気になることはたくさんあるけれど、まずは幻転地蔵ってだれだっけ?うーんと……。ああ、俺の家の近くのお地蔵さんか…。
ちゃんと見てくれてたんだなぁ…。歩きスマホしてた、俺が悪いのに助けてくれるなんて。
こんなことになるなら、修学旅行中に美花に告っとくんだった。お母さんも親父も悲しんでるよね…。弟がいるから、変な心配はしなくていいんだけど。
うん、こころ残りは美花と家族だ。でも仕方ない。
これは俺の不注意で起きたこと。地蔵様に感謝しなきゃ……。後悔しても遅い。
この世界…アナズムという名前らしい。俺はここで生きてみせる。足掻いてみせる。
それが俺に与えられた運命だから………。
って、やっぱり無理なんだよ。そんなに簡単に過去を忘れるだなんて。
そう決めても、俺は泣いていた。
何がいるかわからないから小声で声を殺して泣いた。
美花に会いたい。告白しとけば良かった。ずっと好きだったのに。お母さん、お父さん、親孝行する前に俺、死んじゃったよぅ……。ごめんなさい。ごめんなさい。悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい。なんで俺がこんな目に。なんで?どうして?戻れるなら戻りたい。なんだよアナズムって。もう……もう…なんなんだよぉぉぉぉぉぉ!!!くそっ………………………くそっ………………。
……。
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泣いて泣いて泣き明かして、何分経っただろうか。体感にして三時間位かな?でも、本当はもっと短いかもしれない。
俺は覚悟を決め、前に進み、この世界を、この現実を、受け入れることに決めた。
「俺は___________この世界で、アナズムで、生き抜いてみせる!」