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第百五十話 当日-2

「アリムちゃんが勇者になるって聞いた時は驚いたわ」



 マネさんは綺麗な顔を綻ばせているり

 既に俺のほっぺをつつくのもやめていた。



「これでアリムちゃんが作った玩具はバカ売れね。やっぱり私の予想通りだったわ」



 あぁ、だからさっきから嬉しそうに笑ってるのか。

 しかし、すぐにその顔は真顔に戻った。



「アリムちゃん……これ、聞いた話なんだけど、国王様にグレートポーションを大量に売った上に、さらには、この戦争でも上級のポーションをばら撒くって本当?」



 だから、どこからそんな情報が漏れるんだよっ!

 この城の人達、口が軽すぎないか?

 とにかく、この人の前では下手に否定したりしない方がいいだろう。そんな気がする。



「は…はい、売りましたし、今回戦争に参加する人全員に配布しますよ、ポーション。配布するポーションは、実は戦争が終わったら消えるようにはしてありますが」

「そうなの…それを聞いて少しだけ安心したけれど。…でも王様には売ったのよね? …ねぇ、おかげでポーションの価値が少し下落したんだけれど?」



 ヒィィィっ!?

 怖い、睨んできてるっ…あれは数多くの土壇場を切り抜けてきた人の目だ!

 怖いよぅ…。



「は…はいっ…ごめんなさいっ…」

「いいのよ、謝らなくて。それは貴女の力を発揮してやったことだもの。けれどね、覚えておいて。ポーションが売れなくなって困る人もいる事を。例えばウチ…ポーションの全アナズムシェア、60%だから」



 うわぁ…。

 これからはよく考えて物作りをしないといけないぞ。

 いままでは大抵は俺、あるいは俺に物作りを頼んできた人を中心で取引してたからなぁ。

 それ以外の人たちのことなんて一切考えてなかった。

 反省しなければ。



「その…あの…本当にごめんなさい…」



 もう一度、そう謝ると彼女は今度はニッコリと笑顔になった。

 さっきから怒ったり笑ったり、顔の筋肉が忙しそう。



「いいのよ! アリムちゃん、戦争が終わってから、今度代わりに新しい商品でも考えてくれれば、少なくとも私達はね」



 もしかしてこれ、俺に罪悪感かぶせて本命は新しい商品の開発に乗り出したかっただけじゃないのか?

 


「はぁ…まぁ、頑張ります」

「うふふ、また稼げるわね! あ、そうそう。アーキンとグレープから一言言葉を預かってるわよ」



 アーキンさんとグレープさんからか。

 なんだよ、直接メッセージで言えばいいのに。

 まぁでも、メッセージで言うよりは口で言ってもらった方が重みがあるもんね。



「まずはアーキンね、『アリムちゃんや、勇者となって大変なことがあるだろうが、金のことでも考えて冷静に居れば、きっと悪魔神だって怖くないさ』ですって。これには私も激しく同意ね」



 アーキンさん…励ましてるつもりなんだろうけれど、悪魔神と対峙してる時に金のことなんて考えられないと思うんだけどな。



「じゃあ、グレープね『んー、アリムちゃん! まさか悪魔神と戦うなんてね、夢にも思わなかったよ。戦争に勝っちゃって、また新しい商品でも考えて、私と商売しよう』ですって』



 なんだろ、この人達は励ましの合間に必ず金の話を持ってこないと気が済まないのか? 

 彼らには彼らなりの励まし方があるんだろうけれどさ。

 まぁ、商売人らしいと言ったら商売人らしいか。



「以上よ」

「ありがとうございます」

「うふふー、いいのよ。じゃ、頑張ってね。貴女ならきっと大丈夫。これ、エルフの長年の経験からの推測ね」



 そう言ってまた彼女もどこか別の人混みへと紛れていった。

 俺はまたしばらく色んな人に挨拶・対応をする。因みにカルアちゃんは俺が知人達と話してる間に国王様の元に行ったみたいだ。


 それはそうと、本当に色んな人が居た。


 例えば、メディアル商人組会とは別の商人組会の会長さん。

 この人には最初、商売の話を持ちかけられたけれど、俺と話していてメディアル商人組会と仲が良いと悟ったのか、途中で諦められた。


 あと、馬御者通行会とかいう会の会長さん。

 この人はあの、馬車を操る御者さん達のボスのような存在らしい。

 馬へ対する愛がすごかった。


 あと、隣国の王子様。

 彼は俺になんか一生懸命アピールしてた。

 だが、俺は男だ。残念だったね。

 異性としての興味無さげに軽くあしらわれたのが悲しかったのか、俺から去っていく後ろ姿は大変に哀愁が漂っていた。

 まぁ、話してみて性格は悪くないんだけど、結局は金も地位も顔もティールさんの方が上なんだよね。


 まだ、その人は全然良い人の方で、中には威張り散らしてくるだけの貴族だとか、無駄に娘自慢をしてくる公爵とか、変に俺と張り合おうとしてくるどっかの令嬢とかも居た。


 中でも酷かったのはセクハラ王子様。

 この人はさっきの国の王子様とは別の隣国の王子様らしいんだけれど、出会いがしら俺の尻を揉んできたね。

 まぁ、思いっきり殺意を込めて睨んだら青い顔をして逃げてったけどね。

 まるで、いつぞやのファウストの野郎の様だ。


 無論、そんな人ばかりでなくめちゃくちゃ良い人も居たけどね。


 ま、こうして色んな偉い人とこの玉座の間に入ってから1時間ほどは話していた。


 会話がひと段落済み、国王様の方に歩を進めている途中、今度はSSSランカーの3人が俺に声をかけてきた。


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