お正月! 2024
「はい、これ持って!」
「あ、ああ…‥いいけど。なんだ、これ?」
ふふふん。ちょっとした新年なりの悪ノリさ。
身近に干支の動物がそのまんま居るのだから、こういうこともしてみたくなる。
だから俺達は屋敷にドラゴンであるローズを呼んで、晴れ着を着せて、『謹賀新年』と墨で書かれた和紙を持たせたんだ。
いやまぁ、普通、竜が一番あり得ない存在なんだけどね……。
戌っぽいリルちゃんは実際は狼だし、兎であるパラスナさんはこう、お仕事忙しいし、家庭あるし、テキトー且つ気軽に呼べるわけじゃないからね。
「しかしこれが……アリム達の祖国の服かぁ。食事に呼んでくれた時も思ったが、これが異文化交流ってやつだろ? 悪くないな」
「そでしょぉ。ちなみに、本来ならすっごく高い服だからね。この世界で言うドレスだよ。ドレス。それはボクが作ったからプライスレスだけど」
「そうなのか。アナズムの貨幣価値でどのくらいなんだ?」
「えと、どのくらいだっけミカ」
「んー。安いやつで二万ベル、高いやつで三十万ベルとかかな」
「ひょぇえ」
ローズが戸惑ったような表情を見せる。その瞬間を、ミカはニコニコしながらこっそり激写した。
さっきからずっと撮ってる。一番良く撮れたものを今度、ガバイナさんに見せつけるつもりらしい。そして早くこの二人をくっつけるのだそうな。
…‥普段一緒に遊んでるローズはともかく、ガバイナさんは写真なんてもの知らないんだけどね。うーん、なんて反応するのやら。
「わふー、そういえばローズちゃんは元が金色だから縁起も良いよね? 向こうの文化的に」
「本当だ。たしかにそだねぇ」
「そうなのか! じゃあもしそっちの世界に行くなんてことになったら、元の姿でもチヤホヤされたりするのか? ふっふっふ」
「ううん、怖がれるね。ドラゴンいないもん」
「なん……だと……!?」
ローズは目を丸くした。ミカはまたカメラのシャッターを切る。
今の瞬間、どうやら中々可愛いのが撮れたようで、かなり満足そうな顔をする。
うん。こんなものかな? じゃあそろそろ引き上げて用意したご馳走でも食べようかな。
「んじゃ、お疲れ様っ。とりあえず次はご飯食べようね。ご馳走用意してるよ!」
「あ、ああ! 有難いが、今日はなんでそんなに我だけ良くしてくれるんだ? その、皆んなの集まりでもないのに……」
「いやぁ、今年の主役だからね」
「うんうん」
「……? そうなのか。あ、ところでその、ご馳走がまた我の尻尾の肉だなんてことは……」
「あー……ふふふ、どうだろうね」
「ひいぇええ!?」
興味本位で人間にしちゃった時とは違う。
ローズはもう大事な友達の一人だから、そんなことするわけないんだけど。……反応がいいからついからかっちゃうね。
あけましておめでとう御座います。