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センパイ (リル)

 ショーや皆と共に新学期を迎えて、私も高校の三年生になった。チキューのジャパンでは4月は出会いと別れの時期。

 5歳までしか義務教育がないアナズムに居ても味わえなかったであろう、その双方の感慨深さってやつを学べた。

 と、言っても私の場合は旧三年生に知り合いはほとんど居なかったため、出会いの方が大きい。つまり新入生がこの学校にたくさん入ってきたというわけなんだ。


 私達が通ってる学校はいわゆる名門校。その上、エスカレーター式も受験式もどちらの学生も受け入れているため毎年生徒の数が多い。

 生徒の数が多いと部活動の人数も自ずと多くなる。故に沢山の新入生が柔道部の門を叩いたんだ。

 しかも今年はそれだけじゃない。ショー達みんなが奮闘して柔道で実質全国一、特にショーはさまざまな業界に引っ張りオクトパス……だっけ? とにかくそれになるくらい注目されたから、例年と比べて10倍は入部届があったらしい。顧問のゴリセン先生から教えてもらった。


 しかもしかも、私が新入生の勧誘する場で皆と一緒に柔道部のパフォーマンスを手伝ったおかげか、今まで私以外無かった女子の入部希望者が急増。

 いつものようにいち早く事態を把握した情報マスターであるサナちゃん曰く、「あんな綺麗な女の人もいるんだ!」という理由で元々柔道に興味があった子が入りやすかったらしい。嬉しいことだよ。


 それと同時に私目当てで入部した男子も相当数いるらしい。

 私の顔だろうが、身体だろうが、どこに注目して私に興味を持って柔道部の門を叩いたかは知らないけれど、私目当てという不純な動機で「武」の世界に身を置いてやっていけるか心配だ。


 ……ショー目当てで柔道を始め、チキューではまだ半年くらいしか経ってない私が言えることじゃないけどね。

 今から半年後、私狙い組が3分の1残ってたらいい方だと考えよう。なにせ私はお家にいる時ほどじゃないけど、学校でも普通にショーに甘えてる。部活中でもその片鱗は垣間見せることが多々ある。彼氏持ちだとわかって意気消沈する子は少なくないはずだ。



「あ、あの! リル・フエンさん……ですよね?」

「わふん?」



 なんて、いろいろ私なりに考えながら当番の掃除用具を片付けていたところ、一人の女の子に話しかけられた。

 この学校は上履きの模様の色を見ればその人の学年がわかる。みたことない顔だなと思ってたら、案の定、一年生。つまり新入生だった。



「う、うん。その通りだよ!

「わぁ! 私、一年の中野っていいます。実はこの間の新入生歓迎会で柔道部の披露を拝見してからずっとフエン先輩のことが気になってて……!」

「せ、センパイ……!」



 ナカノっていう子のその一言が、私の骨の髄に響いた。あるいは心臓かもしれない。

 先輩、せんぱい、センパイ……! なんと甘美な言葉なんだろう。先の輩と書いてセンパイ。


 下級生が上級生のことを先輩と呼ぶのは当然知っていた。しかし、途中編入して同学年の子以外との交流が極端に少なかった私は、その言葉に一切の免疫がなかったんだ。


 奴隷だった私が、敬われる立場にまわり敬語を使われる。まさかこんなことが自然と時を重ねるだけで巡って来るなんて。学校ってやっぱり素敵だと思うんだ。



「あ、あの、フエン先輩?」

「わ、わふっ!? ご、ごめんね。ちょっとだけ上の空になっちゃったよ。それで中野サンだっけ? 御用は何かな?」

「あ、いや、その、挨拶だけなんです! すごく可愛いのに、男の人をスパンと投げる姿がかっよくて……とにかく機会があったら絶対挨拶しようって思ってたんです」

「わふー、それはありがと!」



 要するに、このコはサナちゃんの言っていた女子の新入部員の一人ってわけだね。言ってた通り、私を見て入ってきてくれるなんて、照れちゃうじゃないか。



「あ、あの、これからよろしくお願いします!」

「うん、よろしくね! 部室で会えることを楽しみにしてるよっ!」

「はいっ! あ、あの、では私はこれで!」



 そう言って挨拶に来た私の後輩第一号は去っていった。

 コウハイ、センパイ……。ああ、なんていい響き。これから部活動がある日は毎日こんな感じのやりとりがあるんだね。すっごく、すっごく青春してるって感じがするよ。


 そしてその日の部活で。

 どうやら皆んなにも柔道部に女子部員が増えるという噂が届いたようで、私は同部員の男子達から女子をたくさんひき入れてくれた女神としてその日は讃えられることになった。好物の乾燥肉のオヤツをたくさん奢られてしまった。


 そんなに女子がいるのっていいことなんだろうね? 私にはわからない。喜んでくれてることに喜んでいいのかすら。そういえば前々から私がいるだけでも皆、かなり喜んでたっけね。


 うーん、女の子が増えたことで柔道部の実力が下がったりするような結果にならなきゃいいけど。いや、よく考えたらショーが私とイチャイチャしてても大丈夫だし、みんなも大丈夫かもしれない。

 私は頭が良いってよく言われるけど、まだまだわからないことだらけ。これからもこうして学んでいかないと、ねっ。

ちなみに私の本作での女子組1番のお気に入りキャラはこのリル・フエンです。

このキャラを考えた当初、実はショーのハーレム要因の一人で尚且つ負けヒロインにするつもりだったんですよ。でも出してみたらセリフとか仕草とかが予想以上に可愛くて、そのほかのヒロイン予定だった子の存在自体が消滅。そのまま準主役の一番大事な人まで上り詰めてしまいました。この子のおかげでキャラクターが自我を持つ感覚を知れたかも知れません。

……当初の予定通りのナイスバディ+お色気要素有りのキャラの面は消えてないのに、不思議なこともあるものです。


ちなみにこの話を書いてる最中に、この子の誕生日が16月末(地球では3月末の早生まれ)であることを思い出しました。

そのうち、皆に人生初の幸せな誕生日を盛大に祝われて号泣する話を書こうと思います。乞うご期待。



なお、リル・フエンの名前の由来は北欧神話の巨狼、フェンリルです。フェンリルの名を冠してる割にはオーディンを由来にした叶君との関わりが友人ってぐらいで、全然ないんですよね(´-ω-`)

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