二人目の客 (サナダ)
「てなわけで、今日も一人遊びに来るの」
「そうなのね」
ローズちゃんが訪問してきた次の日。また、私たちは玄関先でそのお客さんを待っていた。
あゆちゃん、ミカちゃん、リルちゃんに桜ちゃん。この四人が揃ってて、なおかつ叶くんと火野がいないってことは訪れる人物は確実に女性である。
「なんだ、フミは初対面なのか?」
加えて、昨日からこの屋敷に泊まっており一緒に新客を出迎えようとしているローズちゃんが私にそう尋ねてきた。
あんなに根掘り葉掘り質問責めにしたのにこの子は普通に私と友達になってくれた。
そりゃ、もちろん私もインタビューのプロフェッショナルだし、嫌われないように巧く立ち回る技術も持っているけれど、それでもすんなりと心を開いてくれたのは驚いた。
「うん、私にとってはほとんどみんな初対面よ。この屋敷からまだほとんど外に出てないし」
「そうか。まあ、別世界からやってきたんだ。のんびり慣れていけばいい」
尚、この屋敷では女子が集まったときは必ず全員一緒にお風呂に入るという謎の風習がある。もちろんあゆちゃんは除いて。
一緒にお風呂に入るにあたって拝むことができたローズちゃんの裸体。竜族だけあって身体つきはリルちゃんに近く、スポーティだった。お腹周りとか特に。
でも胸は普通。私より少し大きい程度。この屋敷に来てから巨乳の三人に囲まれて不憫な思いをしてたのでなんだかホッとした。
それはさておきこの屋敷の戸がノックされる。どうやら目当ての客が来たみたいだ。あゆちゃんが「どーぞ」と扉に向かって声をかけたると、ゆっくりとそれは開き、一人の女の子が姿を現した。
「おじゃましまーす」
「いらっしゃい、マーゴさん!」
あゆちゃんにマーゴさんと呼ばれたその子に私が抱いた第一印象は、安心。なんだかホッとするような感じだ。
この子に母性がありそうとか、そういうわけじゃない。顔だ……顔がギラギラしてないんだ。
たしかに間違いなくこの子も美少女なんだけど、あゆちゃんら四人とその傾向があるローズちゃんと違って『絵に描いたような美の塊』というわけではない。
例えるなら、金塊の群れの中に一つ、落ち着いた色の宝石が放り込まれてきた感じ。
もしこの子が私たちと同じ学園にいたら、美少女ランキングで10位ぐらいを延々とキープしてそう。
「いやー、相変わらずみんな可愛いね。いいなぁ……。おっと、それで貴女がチキューから来た新しい子かな?」
「ええ」
「そっかそっか。私はマーゴ! よろしくね!」
「私はフミ・サナダです。どうぞよろしく」
マーゴさんは手を差し出してきたので、私はその握手に応じた。
……なんとなく、まだ不確定だけど、なんとなくこの子は普通の人間じゃない気がする。この世界にいるらしいエルフやドワーフといったそういう類の人類。
とはいえ感じる違和感はそれだけ。見た目も口調も別段突飛なところはなくあくまでミカちゃん達と比べたらの話だけど、普通。その安心感の方がやっぱり勝る。
「なんでだろう……?」
「ん? どうか?」
「私、貴女とこの屋敷にいるとなんだかホッとするな」
「……! わ、私もです!」
やはり何か通じ合うものがあるのだろうか。マーゴさん……この人とは特別仲良くできそうな気がする。
しかし、見た目の年齢は私たちとそう変わらないんだけど、どうしてこの人は敬称付けなんだろう。年齢を聞いてみるか。
「私のことはフミとお呼びくださいね。ところでマーゴさんはお幾つで?」
「え、年齢? 17歳だよ?」
「あ、同い年なんですね!」
「同い年? やったぁ! 今まで完璧に同年代なのリルちゃんだけだったんだよね!」
ん、リルちゃんだけ? ああ、そっか、あゆちゃんとミカちゃんはこの世界じゃ13歳だし、ローズちゃんはなぜか年齢不詳。そうなるよね。
ついあゆちゃんに釣られて敬語使ってたけど、それなら……。
「タメ口でいい……?」
「うんうん! いいよ!」
「じゃあ、改めてよろしくねマーゴ……ちゃん?」
「うんうん! じゃあ私からはフミちゃんって呼ぶね」
ああ、いい。知らない世界で友達ができていく感覚。
世界を渡り歩く系のバックパッカーとかってこういうのが楽しくて旅してるのかもしれない。なんだか分かった気がする。
ああ、せっかく仲良くなれたのだから是非とも知りたい。この子の何もかも。……悪いくせがまた出てこようとしている。抑える気のない私の悪い癖。
私はメモ帳のペンを取り出した。
「……?」
「マーゴちゃん、もしいいのなら少々お時間を」
「え、なになに?」
「あー、また捕まったね」
「恒例行事になりそうだね」
あゆちゃんとミカちゃんがなんか言ってるけど、そんなのかまわない。私の知りたいという欲望は誰にも止められないのだから。
ローズもマーゴも何気に書籍版の2巻に普通に登場してるんですよね。メインキャラである翔や叶や桜が名前しか登場しておらず、リルに至っては存在すらしていないですが……。まあ、順番なので仕方ありませんね。
一度打ち切りという形で終わった作品が後々で人気が出て続きが出る場合って、あるじゃないですか。Levelmakerもそうなって欲しいですね。
〜雑談〜
今回、愚痴はあるにはあるんですけれど相談できる内容じゃないのでお口チャックです。
生活や心境はこのコーナーを始めた頃と辛さ等現在まで全く変わりありません。
なので今回は、私が異世界モノなり、バトルモノなりの設定を考える時に高確率で譲らない共通した設定を公開しようと思います。
それは、「主人公をシステム上で特別にしないこと」です。
いわゆるチート(ガチの方の意味の)をしない・させないを徹底しています。いや、正確にいえば徹底していたことに最近気がつきました。
主人公とそれに関わった人間だけが神様から与えられた超強力な能力を使う」とか「鍛えてたらステータスがカンストの先をいってた」とかが嫌なんです。
私の作品の場合、必ず他のキャラでも同じ程度の強さになることが可能なようにしてしまっているんです。○○だから特別、というのはありません。
例えば……。
『Levelmaker』の設定ならば、有夢クラスの忍耐力とダンジョンの有用性に気がつけるだけの発想力があれば有夢じゃなくても神をも倒せる力を手に入れられます。
実際、何十人と有夢から方法を教えられて「転生」まで漕ぎ着けています。
『私は元小石です!』も賢者の石という主人公専用というわけじゃないタダのパワーアップアイテムを知能が高い生物が手にしたのなら、その条件を満たしていれば誰でも主人公と同等な強さまで到達できます。実際、本編内で犬の子がそうなっています。
『題名のない魔王』は魔王という元から強い生き物が別世界に置かれた話です。これだけちょっと毛色が違いますが、それでも身体能力以外は特に特別なことはありませんし、別世界でも普通に何度か敗北しています。
『神速の大魔導師』も主人公を主人公たらしめてる強力な二つの能力は、主人公専用というわけではありません。その世界の住民ならば他の誰かが獲得できる可能性のあるモノです。ただ、その組み合わせとなると……という話です。
『最弱の下で互角であれ!』はむしろ主人公はその世界のシステム上、悲惨なことになっています。ただそこに偶然、相性の良い能力(通常入手不可能ではない)を手に入れたから強いのです。
と、いった感じです。
だいたいが「システムや偶然手に入れたモノ(確率は低いが主人公だけが特別手に入れられるというわけではない)をフル活用&組み合わせをしてチートみたいな強さを作る」といったところでしょうか。
書き出してみるとなかなかめんどくさい拘りですね。
要するに「特別な力」が嫌いで、それを避けて「主人公以外でも実現可能だけど主人公以外に使いこなせい」を作り出したがるのです。
何が言いたいかっていうと、努力ものは正義ですね。