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第千百十三話 初代アナザレベル

「アァ……久しぶりダゼ、シャバの空気はヨォ!」

「一年近く封印されていたからな……」

「久々の生あゆちゃんだ……その、少しほっぺたを触っても……?」



 今は依代がない状態のはずなのに、それぞれちゃんとした姿を保っているな。なんでだろ。サマイエイルは何枚もの羽をもつ天使みたいな姿で、スルトルはショーに取り憑いていた時みたいに皮膚が黒く、ひび割れしている箇所がマグマのように真っ赤な男の人。シヴァは三面六臂で青い肌をしている。

 とりあえずシヴァはまだ良いよとも言ってないのに勝手に俺のほっぺたをその6本の手で代わる代わるツンツンしてくる。



「にゃ、にゃんで三人とも実態を保っていられるにょほ? 誰かに取り憑かなきゃいけないんじゃなかったの?」

「ああ、だからこの姿を保っていられるのは三分だけだ。早く合体させてくれ、アリムよ」

「とりあえずシヴァがほっぺたから手を離したらにぇ」

「ホラ、いい加減二しろっテ。時間ネーんだゾ」

「うう……」



 シヴァが俺のほっぺたを弄るのをやっとやめてくれたので、三柱のお願い通りミックスマスターの効果を使ってあげた。感覚的にゲームで仲間の魔物を合成したりする感覚に似てる。

 三柱は大きな白い光に包まれると、一箇所に合わさった。

 しばらくして光が晴れると、そこには大きな複数の羽を持ち、三面六臂、皮膚は真っ白だけどひび割れた箇所からマグマのようなものが見えるという元の魔神達の特徴を合わせたような神秘的と言わざるを得ない存在がそこにいた。それに三つの顔はそれぞれちゃんとサマイエイル、スルトル、シヴァになってる。

 なんだろう……ゲームでよくみる神聖で強いタイプのボスキャラみたいだ。



「……我が名はアナザレベル。アナズムの神なり。感謝しよう、アリム・ナリウェイ……もとい成上有夢よ。貴様の協力で我は元に戻ることができた」

「うん、よかったね!」

「わ、わふぇ……これが本物の神様……」

「わーふー、夢でもみているかのようだ……」



 この世界の住人で、普通にアナザレベルを信仰していたリルちゃんとその両親は目から涙を流してそういった。信仰対象が目の前に現れると人って感動して泣いちゃうものなんだね?



「さて確認のために再度問おう、成上有夢とその仲間たちよ。我は再び神として降臨してもよいものなのか」

「俺はさっきいいよって言ったけど、みんなはどう?」

「私は、シヴァみたいに有夢にへんなことしなきゃ構わないよ」

「失敗を反省してんならな、いいんじゃねーかな? もうスルトルやサマイエイルとは別物みてーだし」



 だいたいみんなそんな感じの意見みたいだ。アナザレベルは自分が認められたことを認識すると、ありがとう、と言って浅くお辞儀をした。そして光夫さんと幻転丸の元に歩み寄る。



「特に二人には、神として、魔神として、両方の意味で大変迷惑をかけてしまった」

「いいですよ。直接貴方に何かされたというわけではありませんので」

「拙者もでござる。本物の神を恨むなどできぬでござるよ」

「本当にすまなかった。……さて」



 アナザレベルはスキルを抜かれても眠ったままの二代目アナザレベルの前に立った。そして皆を見回すようにこちらを振り向く。



「この男はどうしてくれようか? 我を含めこの場にいる全員、この男の被害者だ。この男の運命を決める権利がある」

「……記憶もステータスも消して、送られてきた元の時代の元の時間に戻してあげることってできる?」

「アナズムの神である我はすべてのスキルを所有している。その程度のこと容易だが、それでいいのか?」

「あ、でもにいちゃん。この人を元に時代に戻して未来が変わっちゃったりしないかな? タイムパラドックスっていうのは一人の人間が本来居なくなるべきところで、存在しちゃってるだけでも起こるものだからさ」



 ああ、だから俺と美花が元の世界に戻ったら時間自体が巻き戻っていたわけか。それにリルちゃんに関しては無理やり過去が捏造されていたし。……あれ、そう考えたらこの二代目アナザレベルを戻してもいい具合に書き換えが起こるだけで済むんじゃないかな?



「今までの事例でいけば大丈夫な気がするけど?」

「……たしかに我はアナズムと地球で互換性を持たせる時、大きな被害が出ないよう調整している。しかし、なに、この二代目だった男はお前達より未来の人間だ。どのみち心配する必要はない」

「そうなんだ、未来の人なんだね」



 それなら俺たちの時代にまでどっちみち影響はないかな。どのくらい未来の人なんだろう、気になってきた。



「で、何年先の人なの?」

「成上有夢達の時代からおよそ百年先の人間だ」

「はぇ、そんな先の……。あれ、でもこの人は俺達のことを殺して、呼び出したりなんかして、自分の時代に変化が起こることとか気にしなかったのかな?」

「見込みのある者を選ぶだけで手一杯だったようだ」

「そうなんだ……」



 それほど冷静じゃなくなるなんて、やっぱり神様を受け継がなくてよかったよ。しかし百年先かぁ……そのくらいならまだ俺と美花は地球では死んだことにしておいて、アナズムで若返ってイチャイチャしてる可能性があるな。



「さて、ではこの男の記憶を消し、元の時代に戻そう……と、その前にまだやるべきことがある」

「やるべきこと?」

「ああ、実はこの男、ミックスマスターのスキルで魔物のみならず何人か人間を取り込んでいてな。普通は取り込まれた人間は死者として扱うのだが、我は個人的に開放してやりたい人物が居るのだ」

「そうなんだ」



 そういえば、二代目アナザレベルって口調がぶれぶれだったっけ。それって人を自分に合成してからなんだね、こわいね。

 アナザレベルは二代目アナザレベルの額に手を当てると、おそらくミックスマスターのスキルを使用して合成解除を行った。体が発光し、二つに分かれる。

 その二つになった光が晴れた時、一方は普通に二代目アナザレベルに、もう一方は二十代後半くらいに見える女の人になった。

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