第千百四話 レベルを上げて二日目
「ふああ……あ」
「ん……おはよ、あゆむぅ」
「おはよー、みかー」
朝! 起きて目が覚めた。風にさらされない場所で、こんなふかふかのベッドに暖かい格好して眠れるっていうのはとても幸せなんだって噛み締めさせられたよ。明らかに体調もいいしね!
俺と美花は上半身を起こしてから特に何を言うでなくたっぷり、ねっとりとキスをした。ふと思い出したけど、ほんとは歯磨き前にキスしないほうがいいって言うよね、細菌が口の中を移動して回るとか。……まあ、俺や美花みたいな美少女に細菌なんてあるわけないからいいんだよ。
それから朝ごはんを用意して食べる。今日の朝ごはんはスープだ。鹿骨もスパイスもあるからまともなのが作れたの。暖かいご飯を食べられることに感謝しつつ完食。その次は歯磨き。歯磨き自体はこれだけ生活が豊かになっても変わらない。わさわさした植物と炭で磨くんだ。思ったより綺麗になるんだこれが。
そして二人一緒に朝風呂に入り、なにもかもスッキリさせたら準備完了だ。
「で、今日はどうするの?」
「ここしばらくは魔物狩りかなー。今日は一旦、美花と俺で転生回数を統一させたいね」
「じゃあ次も私が倒す番なんだね」
「うん」
俺と美花は交互に魔物を倒すようにしようと思う。どっちか一方だけ強くなるといざって時に大変になりそうだからね。
まずは美花の勘を頼りに魔物を探す。なんとなく、美花が魔物がいるかもという方角を指差して、そっちに進んでいくだけなんだけどね。てな訳でここから北東に進んでみることになった。
家を出て決めた方角へステータスの速さに任せてまっすぐ進んで、15分ほど。森を出て広めの川に出た。そして見つけた、本日一匹目の魔物。大きな大きな蝶々。
とても綺麗だけどゲームなら大抵、鱗粉に毒が含まれてたりするからそれが怖くて近くに近づけない。
「どうする?」
「ここから魔法で倒せるか試してみるしかないよ。錬金術の魔法使ってみようかな」
俺は大きなその蝶々を視認できる場所から、『神の鋼鉄錬金術』を使って攻撃を仕掛けてみることにした。MPをたくさんつかって鉄製の巨大な腕を作り出す。蝶々と同じくらいの大きさだ。その鉄の腕を操作し、相手にパンチを繰り出してみる。
パンチが当たった蝶々は苦しそうに身を悶えさせ、フラフラと少し高く飛んだ。……そして鉄の拳は一瞬で風化してしまったようにボロボロになる。こわいね、近づいて攻撃してたら殺されてたよ。
そして攻撃してきた方向、つまり俺たちの方へ体を向けた蝶々は羽を震わせると自分の体と同じくらいの魔法陣を出現させた。
「……強さを見誤った?」
「逃げた方がいいかな……」
「いや、ここはもう決着つけられるくらい攻めよう」
魔法が発動しきる前に、ね。今度は樹木の連勤で沢山の木を蝶々の体に巻きつくように生やし、拘束した。どうやら鉄製より木製の方があの魔物の効果を受けにくいみたいだ。上手く捉えられた。
そこから鉄の拳を作り直して攻撃を加える。羽根がとれたりして弱った蝶々。なんとか魔法陣も消え去った。あとは転生した美花がトドメを刺せばいいね。
美花は氷魔法と水魔法を連続で発動。蝶々の本体が凍りつき、倒れた。魔核が出てきたのも見える。倒せたとて鱗粉が怖いので魔核は念術でこの場から回収。これで良し。
「ふぅ、上手くいった」
「次は有夢がレベルを上げる番ね! ……たぶん、この近くにもう一体いる気がするんだけど……」
「ほんとだ、早速反応が……」
しかしなんだか様子がおかしい。大探知には映ってるのに目で確認することができない。色神犬がまた出たってわけでもないと思う。……俺たちが登っていた木が到達に揺れだした。そして下から巨大なツノが出現する。俺たちは慌ててそれを回避した。
「危ないなぁ。ムカデの魔物かぁ」
「これ、叶君が同じやつ、アナズムで倒してなかった?」
「そーだっけ?」
真っ黒で巨大なボディをもつムカデ。たしかに見た記憶がある。とりあえず虫は急所を潰しても即死しないから美花に倒せるギリギリまで任せることにする。
美花、今度はSSランクの水魔法をそのムカデにかぶせて攻撃し、すかさず同ランクの氷魔法で氷漬けに。もう瀕死にすることができてしまったみたいだ。そして俺が氷の中にいるムカデを念術で攻撃すれば……おっけー、レベルが上がった。
「順調だねー! 虫の魔物しか倒してないから素材集めが捗らないのが難点かな」
「いいじゃない、お肉は沢山残ってるし。一旦帰ってステータスの整理しよ」
「そだね」
俺たちは拠点へ戻ってステータスとスキルの調整を始めた。
……と、いっても俺はダークマタークリエイトを作るためにスキルポイントは残しておきたいからステータスポイントだけ。今育ててるのはMP、魔力、器用さ、素早さの4つ。とりあえず今回はこれらを全て同じ数になるよう割り振った。
美花はなにか獲得したいスキルがあるらしく、色々やってる。俺が昨日用意した薬草のあまりとすり鉢でゴリゴリやったり、木の板に絵を描き始めたり……。なんとなく何したいかわかった。そして案の定、その1時間後に完成させたみたいだ。アイテムマイスターを。
「ふふ、これで私も有夢に美味しい手料理を食べさせてあげることができる!」
「おー、楽しみー」
「てな訳だから今日のご飯は私が作るね!」
「そだね。でもまだお昼ご飯まで時間あるから少しでも魔物を倒しに行こう」
「わかった!」




