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第千九十五話 殺戮

「うっ……」



 一言も発することができずに体が消し飛んだ。前々から普通の人に向かってSSSランクの魔法撃ったりしたらどうなるんだろうって思ってたけど、正解は一瞬で消滅する、だったみたい。

 もちろん俺と美花は復活から逃れられないので、再び魔物の前に蘇る。魔物はすでに俺たちが殺しても殺しても蘇ることに慣れたようで、すでに次の魔法を準備していた。笑ってる、楽しんでる。俺たちのことをおもちゃにしてるんだ。見た目に対してあの魔物幼いのかもしれない。美花の方を見る前に魔法は発動し、言葉をかけあうこともできずにまた消滅する。

 そして復活。魔物にとって今のマイブームは魔法で俺たちを殺すことなのか、四方八方に大量の魔法陣が敷かれており、次々と放出される。ほんと、救いなのが威力が桁違いすぎて痛みを感じないことだね。

 俺は美花の様子を見るのをやめ、魔物のことを見続けることにした。この方が都合がいいからだ。恋人が無抵抗に嬲られる姿すら確認できないのは悲しいけれど、いつかきっと、この魔物から逃れられるチャンスが来るはず。



 ……俺たちが復活してから魔法が放たれるまでおよそ二秒。復活するのに十秒くらいかかってると考えると、五回死んでおよそ一分。だとすればもう三十分は確実に経っただろうか。魔法による復活狩りが始まって、さらにそれを数え始めてから150回殺された。

 美花はうんともすんとも言わない。もちろん、言う暇がないから。そして俺はずっと魔物のことを見続けている。最初の40回はずっと光属性の魔法を使ってたけど、その次の50回は闇属性の魔法になった。で、そこからいろんな属性の魔法をごちゃ混ぜにするようになっている。

 お、用意されてた魔法陣が全部尽きた。次はどう遊ぼうか考えているのか、魔物は腕を組んで考え始める。このすきに俺は美花の側に寄って様子を見てみた。

 美花は五体満足、呼吸、脈拍良好の状態で生き返っているにもかかわらず、何も言わないし、動こうともしない。いつからこの状態になったんだろう。とりあえず抱き起こして見ると、目を開けて俺の方に視線を向けた。



「あ……ゆ……」

「頑張って美花、俺、なんとかしようとしてるから」

「……あゆ……」

「もう少し……いや、少しじゃないけど、あと数時間頑張ったらきっと」

「あ……ゆ……ぁ……」



 励ましたものの、俺自身どうなるかわかっていない。ていうか希望なんてほとんどない。打つ手がほんとに限られてるから。

 美花はもうまともに喋れてすらいないみたいだ。小さく俺の名前を繰り返し呟いてるだけ。試しに抱きしめて見ると、美花はゆっくりと抱きしめ返してきた。

 


「ギグバ!」

「……」



 何をするか悩んでいた魔物が声を上げると、俺たちの目の前まで一瞬で移動してきた。移動の風圧だけで髪の毛や服が暴れる。

 そしてその人型にしては大きな両手で抱き合ってる俺と美花を包み込むと……。



「ヴァ……っぇ……!?」

「ギッ……ガ……ぁ……」

「ガバババババ!」



 思い切り、握りつぶしてきた。体のそこから大量の血と内臓がこみ上げてくるのがわかる。……分かるだけ。普通人を握りつぶそうとしたらもうちょっと苦しみとかがあるものだけど、やはり勢いが強すぎて痛みを感じる前に意識がなくなった。魔物の手の中ではどうなったんだろう、俺と美花がごちゃ混ぜになったのかしらん。

 とりあえずまた俺たちは復活する。魔物は右手で俺を、左手で美花を掴むと再び握りつぶしてきた。この込み上げてくる感覚が本当に気持ち悪い。吐いてしまいそうだ。実際、嫌でも全部吐かせられるんだけど。

 魔法による連続攻撃より一回一回の死亡にかかる時間が長いおかげで、さっきより多く考え事ができる。そのくらいしか魔法に飽きてくれた利点がない。

 魔物は明らかに楽しんでおり、それから2時間くらいは握りつぶし、殴り、蹴り、押しつぶしなどなど物理攻撃主体で俺たちを殺していった。度々目に入ってしまうあの綺麗な美花のなんとも言えない惨状が、心が壊されそうなほど苦しい。

 やがてまたバリエーションが増えていき、俺と美花を空中へ放り投げることで落下死させたり、脚から紙のように裂いたり、ねじられたり、遠くへ投げ飛ばされたり、頭だけ指でプチプチと潰されたりした。

 そして……朝になった。5時間は殺され続けただろうか。死んだ回数は俺と美花で平均して1000回は超えてると思う。

 太陽で照らされて、ようやく俺たちを殺しまくってくれた魔物の顔を拝めることができた。ゴブリンだった。ゴブリンの超進化形態、あるいは最終形態がこの黒と金色を基調にした3メートルの人型の魔物なんだろう。

 そんなゴブリンも辺りが明るくなったお陰で俺たちの顔がよく見えるようになったみたい。SSSランクの魔物なのに夜目は効かないんだね。俺と美花をまた握りつぶそうとしていたはずなのに、手を止めたんだ。

 ゴブリンは俺と美花を両方の顔をまじまじと眺めると、口を大きく開けてヨダレを垂らした。そして人間がよくやる、どっちが欲しいか迷った時に指差しで決めるあの動作を始めた。そしてその指差しが美花の方で止まると、ゴブリンは美花を大事そうに持ち上げた。

 そして、空いた方の手で美花の着ていた制服、下着、その他諸々を全部剥いてしまい、丸裸にした。

 ゴブリンはオスだった。

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