閑話 甘え (桜)
「ねー、桜」
「どしたのお姉ちゃん」
お姉ちゃんが私に抱きつきながらなんか話しかけてきた。あゆにぃがゲームの動画を編集するのに忙しいからって私の方にやってきたの。まあ、ちょうど叶もお金稼ぎ中だしいいんだけど。
「桜ってさ、叶くんにすっごく甘えてるよね」
「あゆにぃに対するお姉ちゃんほどじゃないよ」
「そんなことないよ、私たちはただステージが進んでるだけ」
「……私達まだできないもんそれ。私はしてもいいんだけどさ、叶も周りも不純異性交遊だって言うから。特にお姉ちゃんが」
「そりゃね」
「お姉ちゃん達だって本当はダメでしょ?」
「……こほん。で、話戻すんだけど、叶くんから桜に甘えることってあるの?」
「かにゃたから私に? ……あ、あるよ! 比較的少ないけど」
正直もっと甘えてきてほしいな、なんて思ったりするけど、たまーにくるギャップも素敵だからなんのとも言えない。お姉ちゃんは目で、その詳細を話してほしいと訴えかけてきてる。実の妹である私から見てもドキッとする愛くるしい目。こういう目であゆにぃを誘惑してるんだろーなぁ……。
「ききたいの?」
「うん。ほら、あの兄弟って私達以外に夢中になってるものがあるっていう共通点あるでしょ? 有夢はそれが済んだ後に『みかー!』って言って抱きついてくるんだけど、叶くんはそういうイメージ全くないから。聞かせて?」
「仕方ないなぁ。でも叶はあゆにぃのような小さい女の子みたな甘え方してくるわけじゃないよ?」
「よりききたいな、それ」
「じゃあ、先週の話なんだけど……」
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「かにゃたー、今日もそれしてるのー?」
「うん、もうお金見るのが趣味みたいなところあるから……」
「自分で言うんだ」
叶はいつも通りパソコンとにらめっこしてなんかグラフだとか、金額だとかを弄り回していた。毎日毎日欠かさずやってるこれ、叶が今一体幾ら稼いでるのか、私にはわからない。たぶんこれのおかげでいつも行くデートが子供らしくないところになってるんだけど。
「よし、今日はこんなところでいいかな」
「やっと終わったのね。じゃあ……」
「あ、そうだ桜」
「ん、なに?」
「今日は甘えていい?」
「ふえっ?」
叶が珍しく少し頬を赤らめながらそう言った。とっても可愛かった。私はオーケーの返事を声に出さずとも、激しく頷いた。
「ありがとう。でもどうしようかな、あんまり甘えたことないからなぁ……」
「私の真似をすれば?」
「さくらっ!」
にゃんとかにゃたの方から私に抱きついてきた。ドキドキする。可愛い。いつも抱きついてくるときは紳士的なムードと対応でそっとしてくるのに。
「……俺のキャラじゃないよ」
「はぁ……はぁ……とっても……可愛かった……よ」
「む。なんかミカ姉みたいな顔になってるな」
こう言ってる間にもかにゃたは私のことを抱きしめたまま、次にやることを考えてる。でもそうか、叶が甘えたがってるから普段はやらないようなことやりまくるチャンス。私からこう甘えてきてほしいと提案すればかにゃたからそれを実行してくれるかもしれない。
「やっぱり甘えるって言ったら膝枕じゃない……?」
「桜がしてくれるの」
「私以外に誰がするのよ」
「兄ちゃん」
「やりそう……。とにかく、ほら、おいで!」
私は叶のベッドの上に座って膝をポンポンと叩いた。これから叶が私の太ももに頭を沈めるんだ。へへへへ、堪能しなきゃ。
ただ、なぜか叶は私の足を見ながら怪訝な表情を浮かべてる。おかしいな、私、結構綺麗な足してると思うんだけど。
「どうかしたの?」
「……なんで軽くスカートめくってるの?」
「え、ほら、生脚がいいよねって話、聞いたことあるから」
「一体なにを見たんだよもう……」
「で……こないの?」
「行くよ」
叶が私の脚に頭を乗せた。この肌に直接かにゃたの頭が! 最高にいい。もう、ここまできたら私、お姉ちゃんと似たような趣向だって認めちゃってもいいや。なんならこのままかにゃたに下を向いて呼吸してほしい。
「どう?」
「何回かしてもらってるけど、うん、確かにこれは甘えてる感じがする」
「顔、埋めてもいいんだよ?」
「いやぁ……そこまではできないよ」
「かにゃたはもう少し私に対して変態的になってもいいと思うな」
「これも何度も言ってるけど、だんだんミカ姉みたいになってくね」
「姉妹ですから。そうだ、このままお昼寝しちゃってもいいよ」
「……そうしようかな、なんだか安心できる……」
「そりゃ、夫婦だもんね!」
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「って感じかな?」
「いいねぇ。で、結局叶くんは桜の脚でハスハスしたの?」
「してない」
「有夢なら絶対するのになー」
「……お姉ちゃんがさせてるんじゃなくて?」
「そうとも言う。でもあれね、二人してなにかと私を引き合いに出すんだね?」
そりゃそうよ。私達からみて誰よりも一番性に乱れてるのはお姉ちゃんだもん。こんなこと、口が裂けても言えないけど。
「あれか、私が悪い模範みたいになってるからかな」
「……! ち、ちがうよー」
「へぇ……。ま、そこはなんでもいいけど。どっちみち桜だって絶対私みたいになるわけだし」
「なるの?」
「なるよ、姉妹だもん。似てるのは顔だけじゃないの」
「むぅ……」
「私だって、こうなる前はすっごくウブだったんだからね!」
「まあ、そうだけど、お姉ちゃんみたいにかぁ……」
怖いような、でも、かにゃたと気兼ねなくいちゃつきに行けるのはちょっといいような。なんか複雑な気分。とりあえず……私も今の時点で暴走することあるから、かにゃたには平静を保ってもらわなきゃ。いつ間違いをおかすことやら。
……また甘えてほしいな。
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たまにイラストレーターさんとかが描きたい絵の時は筆の進みが違うとか、ツイッターでおっしゃってるのをよく拝見するのですが、それは文章にも言えることです。
私はLevelmakerならこういう話を書いてる時が一番楽しい。筆の進みも普段の二倍近くなのです。




