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第千六十三話 侍の告白

「じゃあ、アナザレベルの正体から」

「承知した」



 しかし、こんなすんなり教えてくれるのか、こいつらのボスの正体。ぶっちゃけ勝ったという感覚がない。持ってた力でゴリ押しだだけだからな。

 幻転丸はその場にあぐらをかいて座り込み、話し始めた。



「まあ、薄々感じていると思うでござるが……今のアナザレベルは本物のアナザレベルじゃないでござる。いや、正確にはアナザレベルと同じ力を持った別の存在でござるな」



 やっぱりそうなのか。アナザレベルを神として崇めてる、リル含めたアナズムの住人達は口々にこれは偽物の仕業だと言っていたが、まさにその通りだったわけだ。これを教えてやったらリルは喜ぶだろうか。微妙だな。



「ただ、勘違いしないで欲しいのは……その二代目アナザレベルはだいぶ昔から今の地位に落ち着いているということでござるよ」

「だいぶ昔……それってどのくらいなんだ」

「拙者が始めてアナズムにやってきた頃にはすでにアナザレベルは二代目だったと思うでござる。これは推測に過ぎないでござるが」



 たしか地球にある幻転地蔵が、年老いた幻転丸の手によって置かれたのは安土桃山時代だったはず。つまりすでに四百年以上前からアナザレベルは二代目になっていたということか。

 ……まてよ、でもたしかメフィストファレスになっちまった光夫さんはアナズムに百年居たって言っていたか。どうにも時間がおかしいな。光夫さんは確か俺たちの父親ぐらいの人だ。つまり現代人。どうなってやがる。いままで深く考えてこなかったがてんで時間がバラバラじゃねーか。



「おっと、その困った顔。だいたいわかるでござるよ。時間がおかしいと言いたいのでござるな」

「ああ。その通りだ」

「ま、そのことを話すと非常に長くなるが故、まずは二代目の正体から教えるでござる。二代目は……」



 そこまで言いかけると、幻転丸は急に口を閉じ、辺りを見渡し始めた。まるで別の何かに聞かれたら大変なことにでもなるかのように。そんな秘密な話なら、こうして話し合ってる時点でメッセージはお互い送りあえるようになっているはずだし、それで話をすればいいんじゃねーだろーか。



「なぁ、何に聞かれたらまずいかわかんねーけど、それならメッセージで話をしたらどうだ?」

「それは意味ないでござるよ。メッセージはアナザレベルに筒抜けでござる」

「マジかよ」

「マジでござる。……この世界に最初に来た時、何者かからか説明されなかったでござるか? あれが二代目でござる。つまり二代目は、いや、アナザレベルはステータスを自由自在に操れるのでござる」



 ステータスを自由自在に操れる奴が敵だと? そんなの、アイテムマスターやほかのスキルの何よりも強大じゃねーか。まあだから神なんだろうが。

 んで、何者かからの説明……ああ、たしかにアナズムの神だと名乗ってステータスの説明をしてくれた。有夢の話では自分を神ではなく幻転地蔵だと名乗ったらしいが。てか幻転地蔵って今俺の目の前にいる幻転丸のことだろーが。もともとあの地蔵はこいつの霊を鎮めるために置いたものだったはずだ。そしてその地蔵を置いたのは、中に封印されていたシヴァによればこいつ自信……。



「……まて、まってくれ、やっぱり先に幻転丸、あんたの正体から教えてかんねーか?」

「え、拙者の? どう来て急に」

「いや……俺たち、今までそのアナザレベルのことを要所で聞いた覚えがあるんだが、その都度出てくるのは『幻転』っていう単語なんだよ」

「なるほど、拙者の名前をアナズムでも地球でもあちこちで耳にするということでござるか」

「そう、その通りだ。だからまずあんたが何者かから教えてほしい。ただの侍じゃねーんだろ?」


 

 幻転丸は静かに頷いた。俺らの冒険の、いや、冒険っていうほど冒険したような気はしねーけど、とにかく今までのキーマンなんだ。



「ではどこから話そうか……拙者はまず、武家の子息でござった」

「そこは俺たちの時代にも語り継がれてるぜ。その先はある日いきなり行方不明になったくらいしか伝えられていないがな」

「そうでござったか。……あの日、拙者はゼンマイやフキなどを取りに出かけていたのでござる。そこで、光る何かを見つけた」

「光る何か?」

「……今ならわかるでござるよ、魔法陣でござる」



 地球での話だよな、なぜ魔法陣が? 当時、もうすでにアナズムへ行って地球に戻ってきた奴が居たってことだろうか。いや、幻転丸の言い方からして、魔法陣がそこらへんに転がっていたような感じだろうか。



「なぜそんな場所に魔法陣が……」

「とにかくあったのでござる。そして拙者はそれに触れてしまった。それが全ての始まりだったでござるよ。……あ、ちなみにその魔法陣を見つけた場所に地蔵を設置したでござる」

「……そうか」



 じゃあ、幻転地蔵の周囲で怪異が起こるっていう昔からの噂の原因は、幻転地蔵が起こしているものではなく、幻転地蔵が置いてある場所だったってことか。……メモ帳かなんかで今までの話メモったほうがいいな。それとも叶君連れてくるか……。とりあえず俺一人で聞いていい話ではなさそうだ。

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