表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1193/1307

第千六十一話 武と魔

 俺は自分で掴んだチャンスを逃さぬよう、幻転丸を投げとばそうとした。しかし奴はまだ余裕たっぷりな表情を浮かべている。



「では拙者も一つ」

「なんだ!?」



 俺が掴んだ手は刀を握っている方の手。幻転丸はその手からスナップを利かせ刀を投げ、左手へ持ち替えた。左手は俺も掴んではいない。次に斬りかかってくることは明白だったため俺は即座にその場を離れた。投げようとした瞬間にあんなこと即座にやるなんてな、流石だ。



「惜しかったでござるな〜。しかしお主と戦うのは見込んだ通り面白い。まだだ踊れるでござるな?」

「……ああ」

「じゃ、そろそろ戦い方を変えるでござる。……魔法とスキルに」



 第二ラウンドってやつか。……幻転丸は確実にスキルも強い。俺危険信号がビンビンなってやがる。逆に炎の魔法程度で敵うかどうかが問題だな。



「そうだ、先に言っておくでござる。拙者は『すらっしゅますたぁ』。ま、早い話、斬ることに特化した『ますたぁ』系スキルでござるよ。ははは、異国の言葉はいかんせんわからぬでござる」

「そ、そうか……」

「勝負ゆえ、効果までは教えないでござるが。……あ、ちなみに拙者、お主のステータスは見えてるでござる。スキルなどを詳しく見ることはできぬ故、どんな強さかまではわからぬが」



 マジかよ、ステータス見れていたのか。ステータス見れる人って相当特殊だよな。……たしか知り合いの中じゃ有夢がお世話になったウルト・ラストマンっていうコスプレしたがる人だけじゃなかったか。あの人はもともと魔物の姿をコピーして戦うマスタースキルだからステータスが見れてもおかしくないが……幻転丸はなんだ。スラッシュマスターじゃステータスを見るイメージがねーぞ。

 まあいい。俺のスキルは全体的にわかりやすいんだ。見られたってどうってことねーわな。



「じゃ、再開するとするでござるか。……それっ」

「………!? うおおおおっ!!」


 

 俺はしゃがんだ。幻転丸は刀を振る。俺の後方にあった木が数本倒れた音がした。漫画とかでよくある風の刃とか……そういうもんじゃねー。感じた音は確かに直接刃物でぶった斬ったようなものだった。俺は勘で回避したが……今のは……。



「よく今のを回避できたでござるな。足だけ持っていって仕合終いとなるのが普通でござる」

「……たんなる勘だ……」

「それでよし。そうでなくては」



 ……試してみるか。幻転丸はニコニコしながら再び刀を振った。振り下ろされる前に、俺は奴の視界から外れるよう回避する。剣が振り終わったと同時にまるで直接斬られたかのように、また、後ろの木が倒れる音がした。ここまでに木以外に斬られた形跡はどこにもない。なにか飛ばす技の形跡がないんだ。つまり、これは、遠距離から直接木を切っていることになる。幻転丸はさっきからその場を動こうとしないしな。決まりだろ。



「まさか……見ている場所を刀を振った通りに斬れるのか?」

「そう、その通りでござるよ! これがスラッシュマスターの特性の一つでござる」

「見えてる場所全てが射程距離かよ……」



 自分の技量にあったスキルを持ってるな。羨ましい。やっぱり俺もスロウマスターとか欲しくなってきた。……まあいい、俺は俺でリルと出会えたきっかけの一つのスキルがあるんだ。それを信じて……ぶっ放してやるだけだ。



「ファイヤーマーチレスッッッ」

「単なる最上級魔法……じゃ、ないでござるよねぇ……やっぱり」



 こんなの人に向けて撃つのは初めてだが……ここまでやらなきゃいけねー相手だと思う。魔力の限りを尽くしたランクAの火属性の魔法。『炎神』を持つ俺が撃てば並みのSSランクのスキルすら跳ね除けちまう。……ずっとボールくらいしか使ってこなかったから実際はどうかわからねーけど。

 ファイヤーマーチレスは撃つ前にその形をイメージしなきゃならねー。俺がイメージしたのは、単なる巨大な火柱だ。横向きのな。そして出てきたのは国一つは飲み込みそうな炎。比喩じゃない、実際に城下町一つくらい消し飛んじまうだろう。



「くっ……しかしこれほどとは流石に予想外! 仕方ないでござる……明鏡止水……!」



 幻転丸がそう叫んだ瞬間、巨大な炎は賽の目切りにされバラバラになった。炎なのにまるで野菜のように斬られたんだ。スキルや魔法を斬ることができるのはわかってたが、こんな一瞬でやっちまうなんて……。



「ぜぇ……ぜぇ……死ぬかと思ったでござる……」

「今のは一体……」

「ふんっ!」

「うおっ!」



 酷く疲れた様子から、幻転丸は刀を振るう。俺は振り始めから逃れ、なんとか遠くからの剣戟を回避。……なんで疲れてるんだ。明鏡止水って技が影響してんのか。もう一度あれ、出させてみるか。

 てなわけで、ちょっとばかり親友の真似をしてみるか。話を聞いた限りじゃ、こうしたんだよな……。



「ボール!」

「ボール……! 一体いくつ……」

「ざっと1万だ」



 炎神によって超強化されたSランクスキルには匹敵するだろうファイヤーボール一万個。あれ、あいつがダンジョンで使ったのは数百個だったか? まあいい。とりあえず俺はそれを全部幻転丸に向けて放った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ