表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1186/1307

第千五十六話 ラストマンとポイズンマン

「神の力の一端。まずは脱獄してから最初に作ったスキルから味あわせてやる。ポイズン・デイ」

「なにを……?」



 ヒュドルは自身の手を地面につけた。掌から地面に向けて紫色の液体が侵食していく。その侵食はやがてあたりの風景全てを毒に蝕まれた苦痛の色へと染め上げた。森も、山も、ヒュドルとラストマンの目に見える範囲全てが毒に侵されている。



「ちっ、つまんねぇな。この辺りは村もなにもないのか」

「……なにをしたんだ」

「ポイズン・デイに包まれたものはすべてオレ様が自由に操れる毒の塊となる。もちろん毒だから普通の生き物が触れりゃ即死だ。この一帯には何千体か魔物がいたみたいだが全部死んだ」

「まるで天変地異みたいだね……」

「そうさ、天変地異さ! 何せ神の力だからな。圧倒的物量に押しつぶされろ」



 ヒュドルが指を鳴らすと、毒に侵食された範囲、山数個分の毒となった物体がすべて動き出した。そしてヒュドルの頭上へ球体を形成するようにどんどんと集まっていく。



「みろ、ここらの土地がオレ様の頭の上に集まっていくんだ。あそこにあった山も、今じゃ地面がえぐれてなにもなくなってるだろ? ここに集まってるからな」

「何というデタラメなスキル、お前らしいよ」

「だろ? やっぱ戦いは派手にやらないとな」



 巨大な毒の塊が空中に出来上がった。ヒュドルは手を上から下へ振り下ろす。毒の塊の一部が触手状となりラストマンに向かって攻撃を加えてきた。



「くっ!」

「それそれ、もっと、もっとだ! ハハハハハ!」

「ぐあああ!」



 毒の塊は姿を変えながら次々とラストマンに襲いかかる。自身の能力で中和されているとはいえ、毒は動きを鈍らせ、ダメージを蓄積させ、攻撃の回避や技の発動を困難にさせていた。



「くっ……ヒーローズ・レイ!」

「んおっ!? 光属性のSSランクスキルか!」



 苦し紛れにラストマンは掌同士を合わせ、そこから光り輝く超威力の光線を放った。毒の塊の一部は盾に変化し、ヒュドルを守る。しかしその毒の盾は破壊され、光線はヒュドルの元まで届いた。



「いけぇえええええ!」

「まあ、無駄なことだわな。つい防いじまったが……必要ないんだった」


 

 破壊された盾は液状になり、ヒュドルの足元を覆う。そしてヒュドルはその液状の毒に溶け込むように自分の体を消し去ってしまった。



「なに!?」

〔ははは、さっき俺に拳が届かなかっただろ? それと同じ技を使った。これはポイズンリキッド……自分の身体を毒の液体にするスキルだ〕



 液体化したヒュドルの身体にむかって毒の塊は触手を伸ばす。そしてヒュドルがそれと接触するやいなや吸収されてしまった。ヒュドル自身が、毒の塊と融合してしまったのであった。



〔さぁ、これで完成だ。あたりの山々を吸収した毒の塊と融合したオレ様のな〕

「なんということだ……」

〔まだ面白いことは続くぜ? 絶望に打ちひしがれながら眺めてるがいい〕



 毒の塊から手が生えた。毒の塊から足が生えた。毒の塊の球体部分が人体を形取っていく。やがて頭まで生えてきた。数十秒かけて形成されたそれは、数百メートルの大きさがある巨人であった。



〔ハハハハハ! みろ! これがオレ様の新しい身体だ! オレ様はテメェを倒し、テメェの大事なものをすべて奪う! 故にちょっとテメェの真似をしてこの身体にはポイズンマン……いや、ポイズンマン・カラミティと名付けてやるよ!〕

「ポイズンマン・カラミティ……」

〔テメェにここまでの巨大化ができるか!? 守りたいもの全部守れるか? また昔みたいにオレ様からすべてを奪ってみろよ。やれるもんならなぁ!!〕



 超巨大な毒の拳がラストマンに向かって降り注ぐ。それは巨大な城一つが彼を襲っているのに等しかった。しかしラストマンはそこから立ち退こうとせず、ポイズンマンのその攻撃を眺めている。



〔諦めたか!? テメェが死んだら、ウサギ娘もその子供も死ぬと思え! ハハハハハ、ハハハハハハハハ!!〕

「諦めてなんていないさ。ちょっと魔力を集中してただけ……。いくよ」

〔あん!?〕



 ラストマンの身体が光り輝く。ヒュドルは目が眩み、一瞬だけ視界を閉ざす。すぐに目を開けたその時、目の前に立っていたのはそのままポイズンマン・カラミティと同じ大きさまで巨大化したラストマンであった。



〔なっ……〕

〔クリーチャーマスターは魔物のコピーとそれを組み合わせるだけじゃない。自分の体を好きな形に自由自在に変化させるスキルでもある〕

〔なるほどな、たしかに昔もいきなり腕を伸ばして攻撃してきたりしたもんなぁ……。いいぜ、巨人対決といこうじゃねぇか〕



 ヒュドルは拳を再び握り込み、ラストマンに殴りかかる。しかしラストマンはそれを躱し、ポイズンマン・カラミティの顎に向かって前蹴りを繰り出した。ポイズンマンは体勢を崩し、隙ができる。その間にラストマンはポイズンマンの胴体を持ち上げ、その場で数回回転し、人がいなさそうな場所に投げつけた。



〔ぬおっ!?〕

〔はぁ……はぁ……どうだ!〕

〔どうだと言われても、これはオレ様の本体じゃねぇからダメージ自体はねぇんだよな。それに対してテメェ……俺の毒にどれだけの面積で触れた?」

〔………!?〕

〔それに自分の体一つでその大きさを維持するのも大変だろ。もって三分といったところか。ハハハハハ、巨大化したところで形勢は変わらないんじゃないか、ハハハハハハハハハハ! 好きなだけオレ様を攻撃しろよ、追い詰められるのはテメェ自身だ〕




#####


シュワッチ!

ここだけの話、巨大化させたかったからクリーチャーマスターにしたのであります……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ