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第千四十六話 ドラゴンスレイヤー

「ぐおっ……」

「ふんっ!」



 ガバイナはカオスブラックドラゴンから槍を乱暴に抜き取った。人間大のカオスブラックドラゴンはその衝撃でこのマジックルームの地面に転がる。その隙にガバイナはマジックルームの扉を閉めた。



「グランドヒールッ! ……がはっ……はぁはぁ……よくもやってくれたな貴様……ッ!」



 カオスブラックドラゴンは回復魔法で自身の傷を癒し、すぐに立ち上がる。その表情は激しい怒りに満ちていた。ラハンドは槍と盾を構え直した。



「これで向こうにいるギルマーズさんやウルト、アリム達が残りの幹部達をどうにかしてくれるだろう。こちら側は皆、どうやらお前に一番苦戦していたようだからな」

「まさかこんな時代まで残っていたとはな、ドラゴンスレイヤーの血が」

「……俺だってお前と一度対峙したそのあとまで訳がわからなかった。特殊な一族だということと、『ドラゴンスレイヤーの一族』という称号が何故かあることしか知らなかった」

「ふん、つまり貴様はヒヨッ子ドラゴンスレイヤーというわけか。ふはははははは!」



 ステータス差、自分にとって不利な称号、この二つの悪条件が揃っているのにもかかわらずカオスブラックドラゴンは勝利を確信し微笑んだ。



「何がおかしい?」

「いや、いくらこの吾輩を封印した一族の末裔だったとしても、そのことについ最近気がついた程度ならば恐るるに足らんと思ってな。転生者でも関係ない。どうやら吾輩の相方のような強力なスキルを所持しているというわけでもなさそうだしな」

「俺にはそんなものは必要ない。……この槍と盾さえあればお前を倒せる」

「甘いな」



 カオスブラックドラゴンはガバイナに手のひらを向けた。ガバイナは攻撃が来ることに備え、守りを固めるように構え直す。その瞬間、槍と盾が異常なほど重くなり持ち上げることができないほどになってしまった。手から離れた装備品二つがアイテムマスターが作ったマジックルームの、強固であるはずの地面にめり込む。



「吾輩はあの劣等化魔法のみが得意なわけではない。この国の大臣も重力魔法は得意分野だったか? ……どうでもいいか」

「炎神竜の魔槍!」

「当然、武器召喚のスキルは所持しているか。次はその赤い鎧を重くしてやる」



 再びガバイナに向かって手を向けるカオスブラックドラゴン。宣言通りガバイナの装備していたほぼ全ての防具が凄まじい重量となった。それこそステータスが高いため押しつぶされはしないが、身動きが取れなくなるには十分であった。



「形勢逆転というやつだ。……都合がいい、貴様に好意を抱いてる女は存在しせど、現段階では貴様が末代のようだ。ここでドラゴンスレイヤーの血を途絶えさせよう」

「くっ……」

「闇の世界に引き摺り込んでやる。ダークオブアビスッ……!」

「おおおおおお!」



 ガバイナの足元にドス黒く禍々しい魔力の渦が形勢された。ゆっくりと体がそれに沈んでいく。ガバイナは作ったばかりの魔法の槍を一旦そこらに突き立て、拳を握り、振るうことで素手で自分の防具を全て叩き割った。すぐさま槍を掴み直し、渦から逃れる。



「これで動ける」

「意外。鑑定していなかったが、偽の勇者の知人、そして転生者であるが故に装備品は全て伝説級だと思いこんでいた。……まさか安物だったとは」

「や、安物というわけではない。宝物級はある」

「どちらにせよ装備品の貧弱さが命を救う結果になるとは予想していなかった」



 自分の技を抜けられてしまったのにも関わらずカオスブラックドラゴンは愉快そうに笑った。ガバイナはその隙に仕返しとばかりに槍を振るい波動のようなものを相手に向かって打ち込むんだ。しかしそれは簡単に回避されてしまう。



「ふん。やはり槍の技が主体か? それだけで吾輩がどうにかなると思っているのか」

「ああ、思っている」

「劣等種族が、笑わせてくれ……ごおお!?」



 突如、回避したはずの波動が身を翻し、カオスブラックドラゴンの元まで再び突撃をしてきた。その先端は竜の顔のようになっている。竜の顔はカオスブラックドラゴンの腹部に噛みつき、全身を燃え上がらせ、マジックルームの入り口とは反対方向の壁まで引きずっていった。壁にブラックカオスドラゴンごと衝突すると同時に巨大な火柱が上がる。



「……炎竜の槍砲」

「小癪なあああああああ!」

「倒せると思ったんだが、ピンピンしているな」



 カオスブラックドラゴンが炎をかき分け出現する。火傷あとこそあちこちに残っているものの大ダメージを与えられたわけではなさそうであった。



「……吾輩の様子見は終わりだ、今度はこちらの番にしてもらうぞドラゴンスレイヤー」



 そう言ったカオスブラックドラゴンは拳を握りこみ、ガバイナの元まで飛んできた。槍を振るおうとしたガバイナの手元を抑え、闇の魔法で包んだ拳で腹部を強打する。



「ガハッ!」

「こんなものでは終わらないぞ」

「ぐ、がっ!?」



 ドラゴンスレイヤーという存在と、今まで食らったダメージに対する怒りを全てぶつけるようにカオスブラックドラゴンはガバイナを殴りつける。ガバイナも槍で対応し続け、確かなダメージは与えているもののカオスブラックドラゴンは止まる様子はない。



「吾輩と対峙したことを後悔するがいい! ダークオブアビス!」

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