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第千四十三話 VS. 2

「あららぁ、どうしましょうか俺達は」

「……」



 ともかくこれで誰とも対峙してないのはあと光夫さんとヘレルさんとお侍さんの三人だけとなった。幻転丸とかいうお侍さんはともかく、光夫さんとヘレルさんは俺が相手するべきじゃないだろうか。二人ともも元に戻せるチャンスかもしれない。念には念を入れて、カナタやミカを連れて複数人で大人しくさせるのもいいかも。カオスブラックドラゴンがいなくなった今、人員的にはこちらの方が優れているからね。



「とりあえず煙をばらまいて窒息……なんてそんな簡単にはいきませんよね。幻転丸さん、俺たち三人だけ退散しますか」

「否、拙者は残るでござる」

「おや、事前に戦ってみたいと言っていた冒険者二人、ギルマーズさんとラストマンさんは既に相手が決まっているではありませんか。横槍でも入れますか?」

「まだ一人、この中に拙者が目をつけてる若い芽が居るのでござるよ」



 侍はそう言ってショーが居る方向を見ている。あ、二人とも目があった。ショーがあまり見せないような怖い顔で侍のこと見つめ返している。



「あのガッチリした少年ですか……仕方ないですね」

「……早い話、おそらく拙者達もアナザレベルにとって『こいつらで勝てればいいや』、程度の捨て駒にされているでござるよ。戦いを楽しまないと損でござる」

「おや、ではアナザレベル様はまだ何か策があると」

「そうでござる。ま、賢者兼導者としての勘でござるが、拙者の勘はそこそこ当たるでござる」



 あの侍、まるでこちらにも聞かせてくるように光夫さんと会話してる。光夫さんは光夫さんで元の仕事柄の癖なのかヒソヒソ話せばいいのに大声だしてるんだ。話をそのまま信じるのだとしたらアナザレベルはまだ何か用意してるんだよね、わざわざああ言うってことはコピーゾンビ軍団以外の何かを。



「じゃあ拙者は楽しんでくるでござるよっ……と!」



 侍は思い切りジャンプした。下駄なのによくあそこまで飛べる。そしてショーの元にやってくる。……あの人かなり強いけどショー大丈夫かな? 流石に加勢しに行った方がいいかな。



「久しぶりでござるな!」

「……ああ」

「ショー、まさか一対一でたたかうの? そんなことしなくていいよ、私も一緒に……」

「狼族の少女よ、お主も戦闘民族の端くれなら理解できるはず。強き者同士の戦いの間に女が余計な行動は不要なのでござるよ」

「わふ。おかしいな、なんでそんな強者ぶってるんだい? 前は殺す気で放った不意打ちを打ち損じたのに」

「お、おいリル……」

「これはイタイところ突かれたでござるなー」



 様子を見てるだけのこっちが青ざめてしまうような挑発をリルちゃんがしてる。たしかにカウンターのスキルでほぼ無敵状態とはいえ相手の詳しい能力もわからない相手によく。

 というかリルちゃんも普段からショーの実力を信じて、こういう場合は行ってこいと背中を押している印象だったんだけど……。



「リル、こいつは多分、魔法やスキル自体を斬ることができるスキルを所持してるんだ。この間作ったスキルはたしかにつえーが、こいつの相手はダメだ」

「そんなことわかってるよ。このお侍さんは私じゃ敵わないくらい強い。でも私はショーに加勢したいんだ。隙くるいなら作れるかもしれないし」



 あ、二人とも侍の能力は予想付いてたんだ。たしかにカナタの瞬間移動とか侍が行動してから無効になったりしたもんね。

 そしてリルちゃんはその発言からして自分が犠牲になって隙を作るつもりだったらしい。つまりは、リルちゃんが信用しきってるショーに、自己犠牲気味な加勢が必要だと本能で察するくらいにはあの侍は強いということになる。

 そういえば俺もショーの強さは知ってるのに、まず、加勢が必要だと思ってしまった。……本当に大丈夫かな。



「……ふうむ、仲良きことはいいことでござるが。仮にも戦闘中に仲睦まじい様子を見せられるのは変な気持ちになるでござるな」

「リル、やっぱ俺一人にこの人と戦わせてくれ。その方がやりやすい。……頼む」

「……ぅ……わかったよ」

「叶君、聞こえるか!」



 ショーがこちらに向かって叫んだ。ショーから感じられるあの雰囲気、ある件で俺やミカを守るために地元のヤンキー数十人を一人でのしてしまった時の……その戦闘前に似ている。本気を出す気だ。

 


「俺とこいつを別の場所に隔離してくれ」

「ほ、本当にやるんですか!?」

「拙者もその方が良いと思うでござるよ。何十人かは巻き込まれるでござるな」

「頼む」

「わ、わかりました。場所は……」

「じゃあボクが決めるよ。ヘルの森の真ん中辺りはどう」

「ふむ、そこでいいでござる」



 カナタはショーと侍を俺が言った通りヘルの森の真ん中に送ったようだ。あの二人の戦いは前にアナズム中に設置しておいた人工衛星を介して観察すればいいかな。

 ……ああ、でもやっぱり心配だよ、だけどこうなったら幸運を祈るしかない。そして、敵の残りはあと二人だけになったんだ。ヘレルさんはもうアムリタぶっかけなら治ったりしないかな?

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