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第千四十二話 VS. 1

「はあああああ、いいパンチですですねねねね!」

「さて、どうやってテメェをしばけばいいか……」

「さく、さく、さくさく策もなしに来たのですか!! このハゲは!」

「ハゲじゃねぇ! スキンヘッドだ!」



 ラハンドさんが、それこそ、自分の親友が行動を起こすことがわかってたようにガバイナさんの元にベストなタイミングで駆けつけた。そしてあの殺人鬼を頭のてっぺんから殴りつけた。殴られた本人は笑ってるけど、膝小僧まで床に埋まっている。

 しかしなんだあのラハンドさんの姿。皮膚が全体的に赤黒くなって、腕が六本になってる。



「おいガバイナ! あと数十秒で切れる。さっさと行け!」

「ああ、そうさせてもらう」

「クロちゃんをどこにやろうっていうの、させないよ!」

「オレもダチの邪魔はさせねぇんだわ」



 動き出したイルメに対して、ラハンドさんはすかさず殺人鬼の首根っこを掴んで引っこ抜き、投げつけた。たぶん緊急事態になるとうまく頭が働かないというカナタの弱点も少しはコピーしちゃってたんだろう、瞬間移動を使えば打破できそうな状況だけどイルメはそれを使わない。普通に殺人鬼をかわした。ほかの敵もその投げつけが仇となり行動を邪魔される。

 その間にガバイナさんは容れ物から俺が作ってカナタが届けたマジックルームを仰向けになるように出現させ、足で戸をひらいた。



「これは俺の一族の因縁の対決とも言える」

「くそっ……くそっ……!」



 ガバイナさんはカオスブラックドラゴンのお腹を突き刺したままマジックルームのなかに放り込み、自分も中に入って扉をしめた。その瞬間、俺たちの身体が自由に動くようになる。それは敵の人間組も一緒みたいだけど……。



「はぁ……畜生、なにヘマしてんだあの馬鹿野郎!」

「な、なんで私、スキル使わなかったの……? ま、まさか弟くんの……?」

「ほほぉ、かなりやるでござるな」

「ですねぇ……どうします? 残りの人たちは」

「俺だ! 俺に任せろ! こんな奴ら毒で即死だ! ああそうさ、もともと弱らせるなんて奥手なことしなくても良かったんだ! まずは……」



 ヒュドルって人はラハンドさんのことを睨んだ。ラハンドさんはいつのまにか六本あった腕が普通に戻ってる。肌の色は赤黒いままだけど。ダメージは負ってないのにだいぶ疲れてるように見える。さっきみたいに複数人一度に相手するのはもう無理だろう。



「俺はお前を覚えている。ラストマンの仲間だな? 魔族のガキどもを単独で大量に開放したからっていい気になりやがって……。俺のもつ一番の猛毒で苦むよう殺してやる!」



 ヒュドルはラハンドさんに向けて圧縮して作成した毒が含まれてるボール……いや、ボールの形状のSSランクとみられる毒の魔法を大量に配置した。その瞬間、こちら側で誰かが猛スピードで動いた。

 



「はっ、オレのこと覚えてやがったのかよ。ちょっと手伝ってるだけのこんな小兵、忘れてれかと思ったぜ」

「オレはあああ、恨みがあるやつはあああ、全員忘れないんだぜぇ……おら、死ねば記憶から消せるんだあああああ!」

「……ナラバ、オレ ノ コトモ オボエテイルナ?」



 ガバイナさんに向けて毒が放たれたその瞬間、白い服をきたヒーローが彼の目の前に現れた。体を紫色に変色させ、背中から触手のようなものを生やし、全ての毒のボールを包み込む。そして吸収してしまった。



「やっぱ……やっぱりいたか、ラストマンンンンンンンンン!!」

「モチロンダ。……もう捕縛なんて生ぬるい事はしないさ、ここでやる。それしかない」

「やってみろ、神の力が加わった俺をどうにかできるならなぁ!」



 そうだ、ウルトさんたちとヒュドルって人にはかなり深い因縁があるんだ。ヒュドルは復讐したい対象が目の前にいるのが嬉しいのか、自分の攻撃が防がれた状況だっていうのに破顔している。ふつーの人間があんな表情できるものなんだ……。



「……あぁ! ヒュドル、単独行動しないでよ! ……いいよ、全員私が心臓を抉りだして一瞬で終わらせてあげる。やっと魔法を使えなかった理由も理解したしね」



 イルメが瞬間移動を使おうとしている。やっぱりこの流れならカナタの出番かな? リベンジしたい時なんじゃないかしらん。いや、俺としては一度殺された相手に立ち向かって欲しくはないんだけど……。



「カナタ、行く?」

「当たり前だよ、やられっぱなしで……ん?」

「あれ、いつの間に」



 カナタがイルメの目の前に飛ぼうとした瞬間、イルメの腕を掴んで瞬間移動の使用を阻害した人物がいた。ギルマーズさんだ。ウルトさんのように、超素早く移動したからその場にいるというわけではないみたい。このゴタゴタの間に少しずつ人混みをかき分けて移動したのかも。……まさか、あの人がイルメの相手をするというのだろうか。



「よっ、久しぶりだな」

「ぎ、ギルマーズ……!」

「あの時逃したからよ、今度はそうはいかないぜ?」

「むぅ、私だって今度こそあなたを殺してやる!」



 イルメはおそらく瞬間移動を使ってギルマーズさんの内臓を取ろうとした。しかし、なぜかイルメはそうしなかった。何か理由があって止めた、というわけではないらしい。一方でギルマーズさんはほんの数センチしか体を動かしてないけど……彼が何かをしたの? カナタが口をあんぐりと開けた状態で固まっている。



「え、なに、なにが起きたのカナタ」

「あ、あの人、ギルマーズだっけ? ……瞬間移動をかわした」

「あれって回避不可能じゃなかったの?」

「や……普通は不可能ってだけで理論上は可能だよ。そしてあの人はたしかにかわした。もしかしたらあの魔物はあの人に任せたほうがいいかも」



 カナタをもってしてそう言わせるなんて。あの人の本当の強さを知らないけど、相当強いってことだけは漠然と知っていた。カナタが良いのならあのままあの人にイルメを対処させよう。俺とカナタ、二人の力を持ったあの魔物にどうやって勝つんだろう……。

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