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第千三十七話 全てを滅する魔法

「……この国丸一つの大きさはあるな」



 この声は国王様だろうか。とにかく誰かがそう言った。あんなものをぶっぱなされたら平気でいられないのは一目瞭然。でも不思議と恐ろしいという気持ちはない。あとカナタは自信ありげな表情のままだ。



「本当にどうにかなるの? 叶」

「だいじょーぶだよ桜。俺が大丈夫って言って大丈夫じゃなかったことってある?」

「ない」

「でしょ? あれも想定の範囲内だよ……まあ定期的にアムリタ飲まないとMP持ちきついけど」



 ステータスマックスでもMPが枯渇しそうなほどカナタは一体なにをしたんだろう。瞬間移動をフル活用した『スパーシオペラティオン』の最高の技だって言ってたけど。最強じゃないのがミソなんだって。



「なんだあれは!」



 兵士さんの一人がそう言って外を指差した。その方向に注目する。なんかよくわかんない……えーっと、初級魔法ボールの塊のようなエネルギー体が魔法陣の真ん中らへんにふわふわ浮いてる。一つだけわかるのは、あれが攻撃ではなく何かが姿を現しただけってこと。直感だけどね、周りのみんなもそんな気がしているようだ。



「まさかだと思うけど、あれが偽物のアナザレベル本人……?」

「カラフルででかいだけのボールでしょ、あんなの」

「ただ魔神レベルでやばいのは確かだな。油断はできない」



 そんな感想が聞こえてくる。どれも同意できるものだ。光ってるのに神々しさはないし、胡散臭い……いや、胡散臭いっていうか、あれかな、なんか嫌いな有名人にばったり出くわしたみたいなそんな感覚。嫌いな人ってあんまりいないから体験したことないけどその言葉がしっくりくる。



【……聞こえますか、アナズムに在する人間達よ】

「勝手にメッセージが!?」

「神の力だとでもいうのか!」



 なにも意識してないのに勝手にメッセージが浮かんでくる。やっぱりそういうことは当然のようにやってくるのか。



【あゆちゃん、臆さなくていい。この程度、魔神なら誰でもできる】

【つまり相手は魔神レベルってことでしょ、安心なことある?】

【……ま、あゆちゃんなら安心だろ】



 シヴァから励ましのメッセージが届いた。フォローしてるのかしてないのかよくわかんない情報だ。少なくとも魔神レベルの厄介な存在ってことだけは確認できたかな。多分アナザレベルであろう光の塊はメッセージを送り続けてきている。



【貴方達が選んだ道は、私と敵対すること。アリム・ナリウェイを差し出し、魔神も開放すればこのようなことにはならなかったのです。恨むのならば、この選択をした王や勇者達を恨むのです】



 ちなみに瓦版ではそのことも全部含めてちゃんと通達してある。こういうのは正直な方がいいからね。世間の評判はもっぱら「アナズムを何度も救った女の子一人を犠牲にはできない」といった感じだ。……まあアイテムでそう感じるように仕向けたのもあるけど。



【私は今から、全ての国の中心となる場所に向けて攻撃を放ちます。魔法陣が見えますね? そこから全てを滅ぼす光が放たれるのです。……アリム・ナリウェイが度重なる精神的負荷によって廃人となった今、貴方方人間が争うすべはありません。……さようなら、アナズムの子達よ。長き歴史に、この神、アナザレベル自から終止符を打ちましょう】



 もっと言うと、俺がピンピンしてることも通達済みだ。ぶっちゃけアリム・ナリウェイのファンは多いからね、近況報告も兼ねて瓦版に乗せておいた。相手の誰かに見られるといけないから色々カモフラージュしたけど、ファンでいてくれてる人には伝ったはずだ。



【……? 不安が感じられない……すでに諦めているのか? まあいい、それでは……人間たちよ、滅ぶがいい」 】



 あれ、今一瞬すごく人間味があったんだけど。まあ魔神たちも三柱とも情緒豊かだし、偽のアナザレベルがそうでも不思議じゃないか。

 光の塊が魔法陣の中にすーっと消えていく。それからすぐに地面が揺れだした。地震ではなく、魔力やMPの膨大な放出による震えだと思われる。たぶん。そしてすぐ太陽が落ちてきたかのように辺りが明るくなり始めた。

 ……くる、とてつもなく大きな一発が。おそらくショーが『炎神』のスキルの効果を用い、MPと魔力いっぱい使ってSSランクスキルの炎魔法を一点に凝縮して放つのと同じくらいのが。

 明らかにもう真昼間より明るく、あまりの眩しさにサングラスが欲しくなってくる。……本当にこれ、このまままってて大丈夫なんだよね? この感じだと今から撃たれるの、多分流石の俺たちでも当たったら即死なんだけど……。



「かにゃた、だ、大丈夫なのよねこれ……?」

「ぼ、ボクも心配だなぁ……」

「私はうまくいく気がするかなー」

「まあまあ、見ててよ」



 ついに一筋の光が魔法陣から現れた。一件はシンプルで代わり映えのないただの光線。それは確実にこのお城に向かってきている。近づくたびに地面が大きく揺れる。……俺たち以外、誰もが死を覚悟したその時、光は何かに阻まれたように動きを止めた。いや、動きを止めたんじゃなくて、そこから先に行けてない。……これがカナタが言ってた作戦なんだろうか。

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