表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1158/1307

第千三十四話 使い

 ここからお城まですぐに着く。でも俺は狙われてる身、念には念を重ねてカナタに城まで瞬間移動させてくれるように頼んだ。俺のことが心配だから一緒についてきてくれるそうだ。というわけで俺とミカとカナタでお城まで向かった。サクラちゃんはミカとカナタの二人が止めたからお留守番。

 カナタにはカルアちゃんの隣に出てくるように頼んだため、お願い通りの場所に出てくる。どうやらまたお城のロビーみたい。たくさんの人が集まってる。



「カルアちゃん、来たよ」

「何があったの?」

「あ、あの……」



 カルアちゃんが指をさした方にはどこかで見たことある禍々しい何かと、泣き崩れてるノアさんがいた。普段ヘレルさんと引きこもって滅多に顔を出してこないノアさん。ヘレルさんがアナザレベル達に誘拐されてからはそれが顕著になったのに外に出ているということは、あの禍々しい何かは……。



「あれ、悪魔化した……えっと、ルシフェルとかいう状態のヘレルさんだよね?」

「そう、そうです! この間敵が城に攻めてきた時もメフィストファレスや指名手配犯のヒュドルなどといっしょに私達を……」

「どうみたって操られてるよね」



 だからみんな、このお城に住んでいるか泊まってる武闘派の人達がヘレルさんを囲んでいる。最大限警戒しなきゃいけないものね。でもな、俺っていままでに何度かこのお城の防衛システム強化してきたはずなんだけど、どうしてこうも侵入されるんだろう。……あ、ニャルラトホテプ改めイルメのせいかな? 瞬間移動には流石に敵わないし。

 泣きじゃくってヘレルさんに抱きつこうとしてるエルさんをみんなが必死に止めてる。一方でヘレルさんは全く動こうとしない。敵意がないというより、ロボットが電源切られてるのに近い。



「他に敵はいないかな?」

「探知してみた限りではいないけど、この間は敵も味方も誰一人探せない状況にさせられたから断言はできないよ」

「……味方とあの人は探知できるね。にい……ねぇちゃん、ちょっと俺が行ってみるよ」

「え、大丈夫?」

「まかせて、まかせて」



 この膠着状態に嫌気がさしたんだろう、カナタが動き出した。瞬間移動で国王様の元にいって何かを囁いてる。国王様は頷き、それからみんなにメッセージでエルさんをヘレルさんから遠ざけ、また周りにいる人たちもなるべく遠くへ行くように伝えてきた。

 ヘレルさんの周りに広めの空間ができる。彼の周りを薄緑のような、水色のようなよくわからない膜が覆う。きっとカナタの魔法だ。



「皆さん! 僕は賢者です。この、敵に操られているヘレルという勇者を僕の空間を司る魔法で捉えました。絶対に出ることは出来ず、破ることも不可能なので安心してください!」

「おあ、カナタか!」

「なるほど、どうやらあの膜に内側から触れた瞬間、そのまままた内側に戻されるようじゃの」



 そっか、それなら安心かな。何もできないだろうし。こんなこともできたんだね。やっぱりカナタが本気を出せば大体の敵の幹部も倒せちゃいそうだな……あの気分が悪くなるカオスブラックドラゴンの力の範囲外から攻撃して心臓だけくり抜くとか。できないかな?



「ひとまずヘレル様はこのままここに居てもらった方が良いのでしょうか」

「まだ操られてるところを見ると、ただ送り返してきたわけじゃないよね。……何か目的があるんだと思う。カナタはそれがわかったから実質的にほぼ全部の行動を無効化したんだ」



 ただ俺たちが来てもう十分は経った。なのに何かが動く気配はない。みんな黙って警戒してヘレルさんの方を見ているだけ。

 


「ん、もうこんな時間か」



 近くにいた他の国からきた使者さんの一人が懐中時計を見ながらそう言った。そういえばもうそろそろ正午だ。俺もこの場所にある大きな時計をみる。あと数十秒で時計の針が全部上を向く。お腹減ったなぁ……と考えてあっという間に時は過ぎ、時計から大きな音が流れた。



「お、おい、動き出したぞ!」

「うわあああああ!」



 誰かが叫んだ、動き出したとは多分ヘレルさんのことだろう。俺たちはみんなそっちを振り向く。そこには鞘から剣を抜き、何かをしようとしてるヘレルさんが。



「何をするつもりだ?」

「攻撃かしら?」

「それなら賢者殿が防いでいるので心配ないでしょう」

「……いや、違うみたいだぞ」



 ヘレルさんはその抜いた剣を持ち、光らせ、空気中に何かを書き始めた。文字だ、アナズムの文字。やっぱりただ単にヘレルさんを返してくれるわけじゃなかったみたい。

 あ……みんな背伸びしたりして見てるから俺たちは何が書かれてるかよく見えなくなっちゃった。アリムの時は身長150センチ前後だし、周りは大人だらけだから見えなくても仕方ないね。



「……うそ……だろ!?」

「いやあ、いやあああああ!」

「……やはりそうなるか!」

「くそったれ!!」



 大人たちが何か妙に悔しがってる。ヘレルさんは何かを書き続けてるしその内容がショッキングだったんだろう。うー、見えない。今だけ身長戻したいけどそういうわけにもいかないし。あとで一番前で見てるであろうカナタに聞こう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ