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第千百二十九話 滅亡か処刑か

「お父様、どういうことですか! アリムちゃんは全然回復していません! 薬を飲めば治るような箇所が傷ついたわけじゃないんですよ? こんなの酷いです、助けてもらっておきながら!」

「ああ、わかっているカルア。アリムには本当に済まないと思っている……」



 俺達は医務室から玉座の間へ移動した。各国の代表さんやラーマ国王などの別段偉くて俺より精神面もタフそうな人達が沈黙し、酷く悩んでいるようだ。チラチラと俺のことを見てくるのも気になる。

 それにしてもカルアちゃんが本気で怒ってるの初めて見た。それも国王様に。すごい剣幕だ。国王様も怒られてる内容を全く否定しない。……呼び出されるくらいならまだ大丈夫だってフォローした方がいいかな?



「それで国王様、アリムを呼ばなきゃいけないほどの内容って一体なんだったのですか? 早く話を進めなきゃ、休ませてあげることすらできません」

「うむ。……実際読んでもらった方が早いだろう」



 国王様は俺の元に来て手紙を手渡してきた。目立つように『神からアナズムの全ての住人の皆様へ』なんて書かれている。……アナズム中の国の代表が集まった場所を襲撃してこれを置いていったんだ。アナザレベルの対策や俺の事情を聞くために人が集まること自体奴らの計画のうちだったんだろう。あの惨劇はもしかして俺のせいなのかな……。



「だいじょうぶ……?」

「ご無理をなさらないで下さいね」

「う、うん……」



 なんにせよ読まないという選択肢はない。頑張って読んでしまおう。字体はステータスを表記しているものと全く同じ。まるで機械で打ち込んだような文字。なんか自分がステータスという概念を作りあげた張本人だと必死で主張したいように感じる。

 内容も最初らへんは、偽物の神という認識は間違いであり、自分は本物のアナザレベルだと主張するようなものだった。いつも信仰してくれてありがとうだとか、一部の人にはステータスから語りかけたこともありましたね、なんて。そこまで言うなら本物だって信じてあげてもいいんだけど、でもやっぱりどうしても胡散臭さが漂うのはなんでだろう。全体の三分の一を過ぎたあたりから今のアナザレベル自身の目的について語り始めた。そしてその部分で、普段無理強いはさせない国王様が今俺を呼び出したかを理解した。そしてなんでみんな沈黙しているかも。

 正直読むのをやめたかったけど、なにか、なんかの突破口となり得る情報がないかと思って最後まで頑張って読んだ。読めば読むほど、絶望しかなく、相手が本気であり逃げ場がないことを実感させられた。

 


「………」

「なに……これ……?」



 言葉が出てこない。周りの目が恐ろしく感じてきた。事実、恐ろしいことを考えているんだろう。

 一連の流れ、そしてこの手紙。この俺が精神的に追い詰められる……? そうだよ、思えばおかしい。現実に起こったグロテスクな状況に耐性がないなんて自分でも気がついてなかった弱点を突かれて、脆くさせられて、弱らせられて……ゲームで培った折れたことのないメンタルが崩れていく音が聞こえる。



「こ……こくおうさまぁ……」

「……アリム」

「ボク、どうすれば……」

「……」



 無言だ、答えが出きっていないんだ。まだこの件について相談すらしてない、情報だけがみんなの頭の中にある状態なんだろう。普通ならこんな馬鹿げた内容を信じない。でも、いままで敵に実力を見せつけられた、みんな可能だって思ってるんだ……! アナザレベルがアナズムを滅ぼすことが。俺も今は……。



「……おかしいよこんなの」

「み、ミカちゃんの言う通りです! お父様、いいえ、皆様も変なこと考えていませんよね!? アナザレベルの要求通り、アリムちゃんを生贄にするなんて、考えてませんよね!?」



 誰もなにも返事をしない。あまりの内容に頭が追いつかず絶句してるのか、なんて答えたらいいかわからないかの二つだろう。なんで世界を滅ぼすことと俺の命が天秤にかけられるんだ。

 手紙には『今週末までにアリムを想像し得る限り最も残虐な方法で公開処刑をし、二度と復活できないよう封印。そして三魔神も全て手放し捧げること。そうしなければ人族、獣人、魔族といった人間のみを全滅させる』なんて書かれてたんだから。俺が、本当に……なにをしたって言うんだ。



「はぁ……はぁ……やだ、いやだ……」

「あゆむ……」



 またこちらの考えを見越したように『もし今から一度でも地球に逃げた場合、以前に現地で見せた災害といった方法で干渉し、地球を滅ぼす。そして交渉決裂としてアナズムも滅ぼす。逃げ場などないと思え』とも書かれていた。

 内容通りならやっぱりあれはアナザレベルのせいであり……目的は分からなかったけど、要するにここまでの布石であった可能性が高い。ずっと長い間に俺を追い詰めるつもりでいたんだ。



「……お父様、絶対にアリムちゃんを処刑なんてさせませんからね。絶対ですから」

 


 沈黙が続く。いや、処刑は絶対にされることはないんだ、今回みたいに相性の悪い相手が束になっててかかってこない限り、今アナズムで人間として一番強いのは俺のはずだから。

 でも皆から狙われるような状況、いまの脆い精神の俺に、耐えられるのだろうか。

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