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第千二十七話 抵抗不可

「偽の勇者に吾輩の力を使うのは初めてだったか?」



 カオスダークドラゴンであろう人物ががそう言った瞬間、俺は地面に膝と肘をついていた。全身の力が一気に抜けてもう立ち上がれない。もちろん、武器だって手から抜け落ちてしまっている。

 これが……みんなの言ってた超厄介な能力。実体験するまでなんとも言えなかったけど、ステータス関係なく無理やり人として脱力させられているこの感じ。全く抗えそうにない。



「おー、やっぱりアリムにも簡単に効くんだね、クロの能力!」

「ぐっ……お前いいけどよ、俺とチョンマゲにも効果あるんだからそこんとこ……考えろって」

「はははは! カタナが持てないでござる。おーおー、これはすごいでござるな」



 どうやら純粋な人間である敵の、ヒュドルと幻転丸にも効いてしまっているみたいだ。ほかにまど一人純粋な人間いるけどそれはスキルの都合でむしろ元気になるんだっけ。



「む、幻転丸が立ち上がれないのは痛いな。吾輩の力はステータスが下がるわけじゃないから耐久面はどうしようもないぞ」

「わたわた私が攻撃しても、むだむだむだ……」

「じゃあ私の出番だね」



 そう言ってニャルラトホテプが前に出た。俺の姿をベースに褐色の肌、水色の長髪に変えている。顔も身体の幼さもアリムそのままなのに、髪型と全体的な色を変えるだけでちゃんと別人に見える。コピーするのが主な力のくせにオリジナリティが欲しいみたいなこと初対面のまだグニョグニョ魔物だった頃に言ってたっけ。



「やあ、久しぶりだね! 弟君は元気?」

「むっ……」

「そんな恐い顔で睨んだら、可愛いお顔にシワがついちゃうよ。さて、情けないことに自滅して動ける人物の中で君に攻撃が通じるのが私だけになっちゃったわけだけど。どうしてほしい? 心臓そのまま取り出そうか。脳みそを切り分けて外に出すってのもありだよ。血を一滴残らず全身から噴きださせるのもいいかも」



 まあ苦痛を伴ったらその時点で死んだことにされてミカの元に飛ぶからどれでもいいんだけど。なんの抵抗もできないままやられるのが悔しい。せめて魔法くらい使えたなら……。

 ……あれ、ニャルラトホテプは俺に手をかざしたまま動こうとしない。あの表情は俺が何か考えてる時にする表情だ。どうしたんだろ。



「何があった」

「……やっぱ殺しても意味ないよ。この子、何回も生き返ってくるもん。どんな痛いことしても」

「ああ、前に話してたな。アムリタとかいうので簡単に」

「先にあのお手紙渡しちゃった方が早いと思うな」

「そうですねぇ、そうしますか」



 光夫さんが……いや、メフィストファレスが材質が良さそうな紙の束を持って俺に近づいてきた。四つん這いになってる俺の頭の下にそっとソレを置く。そして一言、俺にだけ聞こえるような声量で呟いた。



「前にも誰かにこうして手紙を渡したことがあるような気がするんですよね。妙に。貴女、なにか知りませんか?」

「いや、知らないもなにも……」

「メフィストファレス、もういい?」

「あ、はい」



 言う前に行ってしまった。やっぱり記憶が消えてるんだね。それも戦争する前か。そこにいる操られてる様子のヘレルさんとも、なにもわからずつるんでるんだろう。二人とも何回も呼び出されては何回も利用されて、かわいそうに……。



「それ、誰でもいいから偉い人に渡しておいてね! ……君たちが偽物だとかって宣ってる、アナザレベル様からのお便りだよ!」

「ん、これで吾輩達の要件は済んだな? 偽の勇者をおびき寄せる為にここに乗り込んだのだから……もう帰るか?」

「どうせならお姫様とか殺してから帰らない?」

「いえ、もう良いでしょう。十分やりました。俺たちは帰りましょう」

「そっか」



 みすみす取り逃がすってことになるけど、国王様とか生き返らせなきゃいけないし今は帰ってもらった方がいい。今回はこの手紙を渡す為に現れたとか言ってたっけ? どんな内容なんだろ。



「じゃあアリム、もう一度言うけどそれ、渡しておくんだよ? あと私ね、ニャルラトホテプからイルメって名前に改名したんだ。アリムからニホンゴで一文字ずつズラしただけなんだけど、可愛いでしょ? だから次会った時はその名前で呼んでね!」

「じゃあじゃあイルメメメメメ、よろよろ!」

「うんっ」



 ニャルラトホテプ……あるためイルメを始め、この城に乗り込んできたのであろう敵の大物達はカナタの瞬間移動を使って目の前から消え失せた。同時にやっと体の不自由な感覚が抜け、自由に立ち上がれるようになるのがわかる。

 ……さて、後片付けか。毒を消して、残りのみんなをゾンビから元に戻して、死んでる人を生き返らせて。それから国王様やラーマ国王の前でこの手紙を渡せばいいか。とりあえずこのお城を元には戻せる。ちょっと時間はかかるけど、みんなで手分けして頑張ろう。

 まずは国王様たちがいるであろう、奴らが出てきた、戸の隙間から血が流れてきている部屋へ入った。そこにあったのは、たくさんの肉塊、内臓、骨_______。

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