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第千百二十三話 避難部屋

「あがあああああ!」

「それ!」



 ほんのちょっと進んだところで襲いかかってきた兵士の格好をしてる人に素早くアムリタを振りかけてあげる。確かこの人は……うーんと、このお城の宝物庫に配属されてた人だった気がする。ゾンビみたいな状態で地下室から二階まで上がってきたのかな?

 兵士さんはアムリタを一滴かかるのと同時に一気に力が抜けたように地面に倒れこんだ。



「わ、ワタシもこんな感じだったのか……」

「うん、そですよ」



 さて、ここから目で見た限りじゃまだ先の方に十人くらいいる。そのうち何人かが他の国から来た人達みたいだ。やっぱりメフィラド城に元から住んでた人だけ狙われてるってわけではなかったか。

 さっと近づいて、さっとアムリタをふりかけて助けてあげる。若いメイドさんとかも顔を緑色にさせられててちょっとかわいそう。探知で魔力を探ってみるとまだまだまだまだ居るみたい。……こうなったら門番さんとミカにアムリタを預けて、俺はカルアちゃんの様子を見に行ったほうがよさそうかな。



「ね、ミカ。あと残りお願いできる? 予想以上にゾンビ化してる人が多くてね……全速力でも五分はかかりそうだから先にカルアちゃんの様子見たい」

「わかった、任せて!」

「ではワタシは倒れた人の介抱に努めます」

「はい、お願いします」



 付いてきてって言った手前、本当はもう少し奥までお伴してほしかったけど仕方ない。だって一人じゃこわいしこれ。ミカと門番さん、まだ気絶したままの十一人の人たちを置いてカルアちゃんの反応がある部屋へ一人で向かった。



「うわぁ……」



 目的地直前、そこらへんに皮膚が変色した結構な数の人達がまるで何かに乗っかられてるような体勢で地面突っ伏してるのを見つけた。うめき声はあげてることから殺してないみたい。んーと、これは大臣さんの重力の魔法だね。今ゾンビ化を解いたら押しつぶされて苦しいだけだろうし、この魔法を解いてもらってからこの場にいる二十人くらいを助けてあげよう。

 やっと俺はカルアちゃんがいるであろうお部屋の戸に手をかけた。……内側から鍵がかかっている。いや、鍵じゃなくてドアノブを抑えられてる感じか。ゾンビたちがやってきてしまうかもしれないけど、ここは俺が来たってことを伝えるしかない。戸を軽く叩きながら、声を抑えて叫んだ。



「ボクだよ、アリムだよ! 助けに来たよ!」

「む、アリムか……!」



 オルゴさんの声だ。中からオルゴさんの声がするってことは、この部屋の中は無事なんだね。よかった。



「オルゴさん! ミカと一緒に助けに来ました」

「なあアリム。一つ聞いてもいいか?」

「え、なにを?」

「……お前はどっちのアリムだ?」



 どっちって、俺は一人しか……。あっ、そういうことか。あいつか。そう疑ってくるってことはやっぱりあいつらが来たんだね。どうだろう、偽物の方ってメッセージ送れるのかな。オルゴさんに送ってみようか。



【なんて言うのが正解ですかね、本物の方です!】

【メッセージ……! そうか、おそらく俺がよく知る方だな。とりあえず早く中に入ってくれ】



 オルゴさんはドアを俺一人が通れる分くらいだけ開けてくれた。緊迫してるその表情は、明らかにこのお城で尋常じゃないことが起こったことを語っていた。



「アリム、ミカは?」

「ミカは今、ボクのアムリタを持たせて操られてるっぽい皆さんを元に戻してもらってます。ボクは悪魔神の件の時にカルアちゃんに渡した装飾品の反応を辿って助けに来ました」

「やはりあのポーションならみんなを元に戻せるんだな」

「何人が無事ですか?」

「……見た方が早いだろう」



 中に入れてもらうと、オルゴさんの他に、ルインさん、リロさんとミュリさん、カルアちゃん、他の国の王子様やお姫様複数人がいた。他にも何人かいるけど、基本的にどうやら貴族や王族の子供、あるいは戦えないけど高い地位にはついてる人物がこの部屋には集まってるみたいだ。カルナ王妃とかね。でもティールさんはいない。

 


「アリムちゃん……!」

「カルアちゃんっ!」



 カルアちゃんが飛びついてきた。どうやら傷一つないみたいだ、よかった。いや、ステータス的に傷をつけたくても本来ならつけられないだろうけど。



「なにがあったの? ここで」

「……また……」

「またあいつら?」



 カルアちゃんは頷く。



「そっか、じゃあとりあえずみんなお城から出て……」

「あ、あのアリムちゃん」

「ん?」

「まだ、敵はお城に居ます……」

「え」



 なんだって。まだお城にいるだって? 全くもって探知できなかったぞ。……そうだ、探知できないといえばここにきてからゾンビ化した人と助け終えた人、それとミカ以外の魔力が全然感じられなかった。カルアちゃんだってペンダントを頼りに助けに来たわけだし。どうなってるんだ。まだ能力を把握しきれてない敵幹部がいたのか。

 それにまずいぞ、ミカに護衛をつけるの忘れた。もしカオスブラックドラゴンみたいなのが現れたミカだって簡単に無力化させられてしまうかもしれない。こうなったら……。



「それならわかった。なぜか探知できないけど、ボクがこのお城中全部回って探し出して、敵全員やっつけてくるよ」

「……そ、それはさすがにダメですよ! アリムちゃんは強くなった私達よりさらに強いですが、それでも……」



 あれ、というかなんでこのお部屋、戦えるはずのルインさんやオルゴさんも避難してるんだろう。カオスブラックドラゴンが今回もいたということだろうか。それならもっと大人数避難しててもいい気がするけど……。

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