第千五話 久しぶりの間の悪さ
俺がみんなに色んな隠してたことを告白し、その上で今迫っている脅威へ対抗するための協力を呼びかけてから三日が経った。一応偽物ってことになった俺を狙ってるアナザレベルって神様は特にここ数日で何か仕掛けてきた様子はない。
あれから国王様は、俺が情報を出した相手と実際に城へ攻めてきた相手の対策を考えつつ、各国に一丸となって共に戦うよう要請しているみたい。俺の名前を存分に使っていいって言ってあるからかなんなのかはわからないけど、俺の勇者宣言に参加した国からは結構すんなり協力するって返事をもらってるみたいだ。
俺は武器や兵器を作ってる。悪魔の時みたいに大量の魔物を引き連れてくるとかってのもあり得るし。それを見学しつつお手伝いしてくれてたミカが俺のほっぺたを突いてきた。
「ねーねー、有夢」
「なぁに?」
「なんでロボットとかミサイルとかは凝った感じで作ってるのに、個人用の武器は全部同じような効果で見た目もシンプルなの?」
「アナズムの経済が破綻するからだよ。鍛冶屋さんとかが潰れちゃう」
「そういえば悪魔との戦争の時もそうしてたわね」
「うん。新しい争いのもと産んだら元も子もないからね」
俺のスキルの能力なんて、地球で言えば金とダイヤモンドとプラチナを自由自在に生み出す能力といっても過言じゃないほどお金の流れを変えちゃうものだから、例えこういう危機的な状況であっても今後のことを考えて慎重にしていかないと。
「それにしてもたくさん作ったわね……もういらないんじゃない? 軽く国五つくらい一日で制圧できそう」
「念には念をいれなきゃ。それに在庫整理も兼ねてるしね」
「まだ続いてたんだ、在庫整理。でもそろそろ休まない?」
「ん、そうだね」
確かにもう5時間ぶっ通しで作業してたし、そろそろ休んでもいいかも。戦いに備えて身体は大事にしなきゃいけないよね。明日は用事なかったら丸っと休もうかしらん。
「おやつ時だしパンケーキでも作ろうか、生クリームと果物たくさん乗っけてさ」
「私はおやつより有夢を食べたい」
「何言ってるの」
「もー、わかるくせに」
どうやら今日はそういう気分みたいだ。俺の作業を見学してたのも、作業が見たかったんじゃなくていつ誘おうか狙いを定めていたみたい。ふむぅ……満更ではないからなぁ……どうしようね。
「じゃあ久しぶりに温泉の部屋までいって、露天風呂モドキにでも入ろうか、二人で」
「男女別じゃなく?」
「混浴で、二人きりで」
「ふふん、いいよ!」
これなら一応休むことにもなるでしょう。ミカの欲求もだいたい満たせるからなかなか名案だと思うよ。
二人で温泉の部屋まで移動して、脱衣所で服を脱いで浴場へ入った。温泉も久しぶりだ、最近はお部屋のお風呂だけで済ませてたからね。といっても二日に一回は一緒に入ってる上に、二人で並んで横になっても余るくらいの浴槽の広さなんだけど。
「ふっふっふ……まずは身体を洗ってあげようじゃないの。そのあとは私もね」
「うん、そうしようね」
というわけでそれぞれ桶と椅子をもって室内浴場に備え付けられてるシャワーの前に立った時、メッセージが来た。
俺とミカが裸の付き合いしようとしたときに限ってやってくるメッセージ……もうだいたい誰か決まってる。国王様から知らせを受けてやってきただなんて簡単に想像つくし。……とりあえず出てみた。
【アリムちゃん! ミカちゃん! ふふふ、余だ。誰かわかるな?】
【ラーマ国王様ですね】
【その通りだ! メフィラド国王から聞いたぞ、大変な目にあっていると! アリムちゃんとミカちゃんを大変な目に合わせるとは許せん。……冗談抜きに話しても、単純にその偽の神とやらの存在は驚異。故に全面協力する】
【ありがとうございます】
【それでな、今すぐ会えないか? 実は余はメフィラド王国に今居るのだ。ブフーラ現国王として破魔神シヴァとは話しておきたくてな】
おお、本当に国王様からお話をしっかり聞いてるみたいだね。うん、ラーマ国王ならシヴァと合わせてもいいかな。ブフーラ王国でシヴァが暴れたのは何百年も前の話だし、お互いすんなり会話が進むかもしれない。
でも、今じゃないよ。今はダメなんだ。
【すいません、今すぐはちょっと……。今はゆっくり身体を休めてるので明日の午前中じゃダメですか?】
【まあ余は何日も滞在するつもりで居るからな、構わんぞ。今すぐ会いたいってのも余個人の欲望だしな】
【すいません、ありがとうございます。では明日】
【ああ、また会えることをひじょーーにたのしみにしているぞ!】
メッセージのやり取りは切れた。この人悪い人じゃないんだけど、なんで毎回俺とミカが裸になってイチャラブしようとした瞬間にメッセージかけてくるんだろう。ミカでも勘でタイミング探ることできないし。わざとではないと思うんだけどな……そういう間が悪い偶然が重なる人ってたまにいるよね。
「良かったの? 前はイチャイチャ切り上げてすぐ向かったじゃない」
「ここまできてその気になってるからね、こっち優先させたかったの。欲求不満で活動が滞ったら意味ないしさ」
「へー、その気になってるんだ! じゃあたっぷり甘えちゃおうかな!」
「うん、おいでおいでっ」




