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第千二話 手伝って!

「ふぇ……ぐすっ……」

「な、なぜ泣かれるのですか?」

「御礼言われるなんてっ……思ってなかったからっ……」



 覚悟していたものが、むしろその逆で返ってきて不意を食らった。どういう状況になっても冷静に対処するつもりだったのにこれは予想外だった。ミカが俺の背中を撫でながら耳打ちしてくる。



「私はこうなることわかってたよ」

「……そうなの?」

「うん、有夢って優しさの塊みたいなものだから、昔から。みんなもそれをわかってくれてるんじゃないかって。推測に過ぎないから断言はしなかったけどね」



 昔からだなんてよくわかんないよ。でも、ミカがそう言ってくれるならそんな気がしてくるんだ。

 しばらくしてから国王様が手を挙げた。



「それでアリムよ。自身のことを公にしたのは何か目的があってのことだろう? ああ、もちろん答えるのは呼吸を整えてからでいいぞ」

「すーっ……はーっ……。はい、国王様……。えっと、ボクが皆さんに頼みたいのはその……アナザレベルと戦うことに協力して欲しいってことなんです。もう、ボク達だけじゃ対処できないから」

「なあ、アリムよ。何かおかしいと思わないか」

「え?」



 なにがおかしいんだろう。国王様は呆れたと言わんばかりの表情を浮かべながら笑っている。というかほとんどみんなそうだ。もしかして神様と戦う提案なんておかしい、協力できないってことだろうか。

 国王様が答えの続きを言う。



「逆なのだよ、アリム。本来ならば私達がアリムに協力を頼まなければならない。なぜならアナズムでの出来事なのだから。むしろ、今までほとんどアリムしか対応していなかったこと、もはや丸投げだったことを深く深く謝るべきなのだ」

「で、でも狙われてるのはボクで……。ボクがいなきゃこんなことには……」

「どちらにせよそのような凶悪な存在がいたのなら、我々に牙を向けてくるのは時間の問題だっただろう」



 たしかにそうかもしれないけど。

 俺はなにも答えなかったが、国王様は話を続けた。



「しかし我々の神がアリムを狙うとは……大司教よ、どう思う?」



 ミュリさんのお父さんである大司教さんが立ち上がった。この会見をやるに俺が警戒していた人物の一人だ。なにせ大司教だからね、神様を信じるのがお仕事だから。



「アリムの話が嘘だとは思えないし、かと言って神がいたいけな少女を殺すつもりでいるとは思えない。例えばその敵の仲間の一員となっているであろうヒュドルが脱獄した際、神に選ばれたと言っていた。魔神達自身も神が敵だと言ったんだろう? ……つまり、アナザレベル様と同等の力を持つ何かがいる……という考え方ができる」

「おおおおおお!」

「たしかにそうですな!」

「麗しの勇者アリムを神が裁こうとするはずがありませんもの!」



 大司教さんの言葉は拍手を呼んだ。要するに、俺を殺そうとしていて、大犯罪者を贔屓する神は神なんかじゃなく、それを語っていて同等の力をもっているまた別の何かだろうって言っただけなんだけど。でも、それが理想だよね。本当にそうなら誰も気持ち的には傷つかないよ。



「というわけだ、アリム。いくらでも協力……いや、これからも協力してくれるな?」

「はい!」

「よし。では作戦会議をする前に……魔神と話せる状態であると言ったか。我々も会話することができるのか?」

「え、ええできます。そう言うと思って封印してる媒体を持ってきてますよ」

「そうなのか。では出してみてくれ」



 俺はステージの上に、サマイエイルが入ったコケシ、スルトルが入ったコケシ、シヴァが入った犬型ロボットを置いた。まって、これ全部地球にしかないものじゃん、本来なら。意図せず大衆の前に新しい文化を持ち込んでしまったことになるね……。



「なんだそれは?」

「あー、えっと、この二つの木彫りの置物がコケシっていうものです。ボクの住んでる国の工芸品ですね。こっちは犬型ロボットっていう……まあ魔法やアイテムを使わずに作った人工ゴーレムみたいなものです」

「アナズムと全く別の世界のものを見ることができるとは!」

「得しましたな」



 貴族さん達のウケがいい。まあ俺も最初はアナズムのいろんなものに興奮してたし気持ちはわかるよ。



「で、なぜ工芸品と人工ゴーレムに魔神を入れているんだ?」

「理由は全くないです、趣味ですね」

「そうか」

「封印は過去のどのアイテムよりも強力にしてあるので安心してくださいね! それで、誰からお話しします?」

「ふむ、ここは散々我々を苦しめた悪魔神サマイエイルからと言いたいが、やけに待遇がいいシヴァという魔神からにするか」

「ボクもそれがいいと思います」



 そういえばリルちゃん以外のアナズムの人にシヴァと会話させるの初めてか。



「なぜシヴァが一番待遇がいいんだ?」

「この魔神だけボク達と敵対したわけじゃないし、むしろ何回か今まで協力してもらったりもしてるので。……っと、シヴァ、出番だよ」

「やっとか」



 さて、どうなるんだろう。メフィラド王国は特にシヴァに困らせられたことは歴史的になかったと思うから、会話はスムーズに進むと思うけど。




#####



今のところまだアンケートが十人件に至っていないでござる!

まだまだ時間があるでござるよ! みたい話を見るチャンスでござる故、ぜひアンケートに回答をお願いするでござる!


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