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第九百九十八話 寄り添い (美花)

「有夢がスッゲーパタパタ動き回ってるな」

「うん、本気出すらしいよ」



 あれから有夢が騒がしくし始めたので、翔が心配して私たちの様子を見に来た。有夢が本気を出すって決めた瞬間は数時間前の会話のうちでいつだったかはわからないけど、ともかく今まで積み上がってきた怒りとストレスが爆発したって感じになってる。誰が見てもわかる。



「あんな高速で動き回って疲れねーのか? 有夢だし大丈夫か」

「私もちょっと心配だけど、有夢はとにかく疲れ知らずだからね……」



 有夢の中でこれからどう神様と戦っていくか段取りが決まっているのでしょう、私も手伝うと言ったら手出し無用だと言われた。手伝って欲しい時になったら言うらしい。有夢が本気を出すとすごいからちょっと期待してる。



「美花も有夢が今何やってるかわかんねーのか?」

「神様と対峙するために、国王様とかにとりあえず今までのことを話したりするって言ってたからそこら辺の準備をしてるんだと思う」

「そうか。……おーい、有夢」



 翔が大きな声でそう声をかけると、嵐のように走り回っていた有夢が翔と私の前でピタリと動きを止めた。



「なぁに?」

「マジでなにも手伝わなくていいのか? なんでも言えよ」

「ミカにも言ったけど、今はまだいいよ。一人で考えた方がやりやすいんだ」

「まあ、そういうこともあるわな。ただ俺としては何もできないのは歯痒いんだが」

「じゃあ一年以内にあのサムライとかと戦うかもしれないって覚悟しておいてよ」

「ああ、わかった」



 翔が頷くと、有夢はまた動き始める。超本気を出して頑張ってる姿も可愛い。戦うことになったら私ももちろん参加するつもりでいる。どんな強敵でも最近手に入れた力を使えば無力化できちゃうはずだし。



「で、美花はどうするんだ? このまま有夢が本気モードで爆走するのを眺めてるのか?」

「うん、要所で休憩取るように促すけどね。確かに有夢は持続力とか耐久力とか……アナズムに来る前から化け物じみてたけど、疲れを感じないわけじゃないし」

「そうか。じゃあ俺やリルの方でも出来る限りのことを考えておくぜ」



 そう言って翔は部屋から去っていった。有夢はまた一瞬だけ足を止めて見送ってから再びせわしなく動き出す。

 ……何もかも正直に話して協力するようにお願いする。これだけを聞けばそう難しいように聞こえないけれど、有夢にとってはとんでもないこと。

 まず、魔神三柱を全員家に置いていることを言わなきゃいけない。今まで国王様達には堅く封印してあるって言ってるから、喋れるようにしてたなんてわかったらどんな反応をされるか。いや、それだけじゃなくて光夫さんの件もそう。実はこっそり生き返らせて元の世界に返していたなんてバレたら……。

 そして敵がこの世界全体でずーーっと崇められている神様であるが一番の問題。信仰心っていうのは覆せるわけない。なんせリルちゃんですらこの状況なのに僅かながらまだ神様のことを信じている。たとえアナズムの人々から信頼度が最高潮に達してる有夢であっても、魔神を匿っているという話をした後に神様が敵だなんて言ったらどうなるか。想像をするのは難しくないわ。有夢の可憐さと可愛さでも押し通すのは困難を極めると思うの。

 ……いままで、それがわかってたからうち誰も攻める方向に動こうとはしなかった。全部受け身だった。ただもう……それも無理なのね。我慢強い有夢が我慢できなくなるくらい。

 目の前に隕石と雷落とされて、毎日化け物を出現させられて、叶君を殺されて、翔を傷つけられて、和解した同郷の人をわざわざ呼び出して使役させられて、友達の家を襲われて。誰だって怒るわよ。私だってずっと悔しかったけど、有夢とイチャイチャする事で紛らわしてた。

 ……もしかしたら今回動き出したのも、次は私に魔の手が伸びてくるんじゃないかって考えたからかもしれない。そうだとちょっと嬉しい、かな? 

 有夢が休みなし、ぶっ通しで作業し始めてもうそろそろ七時間は経つ。七時間くらい有夢にとっては楽なものだけど、高速で動き続けているから実質数百時間は働いてることになる。

 私は、私はそろそろ有夢に休んでもらおうと思う。旦那の体調管理も妻にとっては大事なのよ。



「有夢、休憩しよ!」

「……ふーっ。え、今何時?」

「有夢が本気出すって決意してから七時間よ。夕方の六時。夕飯時だよ、そろそろ」

「そ、そっかぁ……」

「……おいで」



 有夢は私の元まで歩み、寄りかかるように抱きついてきた。私はそれをしっかりと受け止める。しかし有夢は私が用意した状況に少し赤面しながら慌てて離れてしまう。



「……い、いつものことだけどなにやってるのさ」

「ビキニよ、ビキニ着てるだけ。ほらほら、好きなだけ見ていいし好きなだけ触っていいよ、落ち着くよ」

「……ん」



 有夢は私の狙い通りのことをし始めた。有夢にとってゲームが一番癒しになるんだろうけれど、それは精神面であって肉体面ではない。むしろそっちは蝕まれてしまう。

 だから……本当にそうかはわからないけど、有夢にとって二番目に心の支えになる私が文字通りひとはだ脱げば。少しでも楽になってくれるかもしれない。まあ本当は私がどんな状況でもイチャつきたいだけなんだけれど。

 


「なんかごめんね。いきなりやる気出したりして」



 私の胸元に顔を埋めながら有夢はそう言った。私は有夢の頭を撫でながら答える。



「逃げようって言ったのにそうしなかったんでしょ? 私は有夢がやりたいって思った方について行くだけ。いつでもこうしてあげるから、休みたくなったり疲れたりしたら抱きついてきて」

「うん、えへへ」



 あぁ、すっごく可愛い有夢。




#####


前回は頭痛でおやすみもらいました><

申し訳ないです!

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