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第九百九十五話 騒ぎがあったので

「こちらは済みましたよ」

「流石は神が認めだだけのことはある。こちらも今終わったぞ」

「ちちち、ちちち、チカラがあふれるるるるるるる!」



 勇者を担いでいるメフィストファレスは血まみれの床に目をやった。白銀に光るドラゴンの体の一部と思われるものが辺りに散乱している。



「うわぁ……これはえぐいですね。あの驚異的な回復能力を上回るほどの攻撃を与えたのですか」

「けぺぺぺぺぺぺぺ! あふれる、チカラがあふれるよぅうううう!」

「……こいつをこんなにしたのはおそらくお前だろう?」

「ええ、ここまでになるとは思いませんでしたが」

「メフィフィフィ! いったい、わだわたわわたしになにををををを!」

「説明すれば簡単なことなのですが」



 メフィストファレスはヘレルとの契約内容を二人に話した。

 カオスブラックドラゴンは納得し、感心したように頷いた。



「なるほどな。まさか代償としての効果ですら反転できるとは。実質代償なし、それどころか仲間の強化を行った上で吾輩達は勇者を抱えることができたということだな」

「ええ。ガイルさんには申し訳ありませんが一か八かでしたけどもね。今後何か契約が必要だった時は同じような内容を代償とさせていただいてもよろしいでしょうかガイルさん」

「ああああああ、あ、いくらでもお好きにどうぞですすすすすす」



 その後、三人は城の周りにかけておいた幻術魔法を解いてから堂々と門を開け真正面から城を抜け出した。



____

__

_



「……な、なにこれ……」



 つい数分前まではなんの異常もなかったみたいなのに、お城の中は酷い有様だった。

 俺の屋敷が置いてあるのは、いわゆるお城のお隣さんに当たる場所だ。大きな音がすれば聞こえてくる。普段はお城の方から聞こえてこないような、何かを壊すような音が聞こえてきたと思ったら怪しげな魔力の感じが一気になだれ込んできたの。

 音よりその変な魔力の方に反応して、シヴァに注意されたけど結局やめられなかったベッド上でのいたし事を切り上げて俺たちはやってきたんだ。兵士さんすら誰も居なかったから勝手に入らせてもらった。

 入ったところで辺りは真っ暗だけれど、ところどころキラキラ光るものが散乱しているのがわかった。そしてなにより嫌な感じの魔力の残り香と、ぐちゃぐちゃとした血みどろな感覚が背筋をなぞって行く。とりあえずアイテムで明かりをつけてみた。



「ひっ!」

「うわぁ……」



 血みどろな感覚じゃなくて、実際に血みどろな状況であったらしい。なんかの生物の肉片が散らばっている。キラキラしたのはその一部だったようだ。人ではないことは明らかだったので、試しに一つ鑑定してみた。



「えっ」

「ど、どうしたの?」

「ファフニールロットの心臓って……」

「え、王様と契約した? どういうこと?」

「わ、わかんない……あ、あれは足であれは首……この散乱してるやつ、全部ファフニールの死骸だ」



 嘘だ、どういう状況なんだこれ。転生を繰り返した人間を除けば知り合いの中でもトップクラスの強さを持っていたあのファフニールがこんな酷い殺され方を……。

 


「国王様……は?」

「そ、そうよ国王様。ファフニールを呼び出したのは国王様しか居ないはずで、そのファフニールは……」

「い、嫌な予感する?」

「ううん、なんだか国王様達は大丈夫な気が……」



 ミカがそう言うと廊下側から大人数がこちらに走ってくる音が聞こえてきた。先頭を国王様達四人が、その後ろにルインさん達四人とカルアちゃん、ティールさんがいる。カルナ王妃も無事なようだ。なんだかとっても顔色が悪いけれど怪我をして様子は見られない。



「はぁ……はぁ……な、なんだこれは!」

「あっ、アリムちゃん! ミカちゃん!」

「みんな無事だったんですね! 良かったぁ……ごめんなさい、なにか異変があったようなので勝手に上がらせていただきました」

「あ、ああ……構わないが……あいつらはどこいった?」

「あいつら?」

「それとファフニールは……。そうかやはりファフニールは……」



 なんだかよくわかんないけど、誰かがきて何かをされたんだねやっぱり。国王様はショックを受けた様子で散乱しているファフニールの残骸まで近づいてきた。そして慌てたように俺が昔こっそり渡しておいたアムリタを取り出し、肉片の一つに一滴だけ振りかけたの。みるみるうちにファフニールは元に戻ってく。



「しかしここまでやられてしまうのは想像していなかったぞ……」

「国王様、なにがあったんですか?」



 そう聞こうとしたら国王様達の軍団の中から泣きじゃくったエルさんが出てきた。何を言ってるのかさっぱりわからない、冷静さを全く欠いていることがすぐにわかる。



「ヘレル……ヘレルがぁ……ヘレル……」

「ヘレルさんがどうかしたんですか?」

「ああ、どうやら誘拐されてしまったのだ」

「え、王妃様やお姫様であるカルアちゃん、エルさんなどではなく?」

〈ん……んんん……〉

「あ、ファフニール」



 ファフニールが目を覚ました。そしてあたりを回してからひどく悔しそうな表情を浮かべる。……なかなか質問しても答えてもらえないな、本人達も混乱の真っ只中のようだ。

今日はだいぶ遅くなってしまったでござるな……申し訳ないでござる!

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