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第九百九十一話 もう一人の大悪魔

〈くっ……!〉



 ファフニールは光を纏った尻尾による攻撃をするが、メフィストファレスには煙化によって回避され、ガイルには当ててもむしろ回復されるだけであった。

 唯一まともに攻撃が通じるのはカオスブラックドラゴンのみであり、そちらを狙うとガイルが庇い、メフィストファレスはファフニールの後ろにいる国王達を狙って攻撃しようとしてくるという連携を見せてきていた。



「もういくらやっても無駄なのでは?」

「たくさん攻撃できて嬉しいですねぇぇぇぇ」

「しかしそう簡単に向こうも終わらせてくれないようだな」



 ファフニールもSSSランク亜種としての実力を小型化されているとはいえ存分に発揮していた。しかしそれはこの状況で出し得るほとんど全力を出しきっているといえ、圧倒的不利な状況には変わりなかった。



「いっそ、あのドラゴンを持って帰るというのはダメなのでしょうかね?」

「魔物はイルメと吾輩だけで十分だ……おっと、ガイル」

「ぐふううううう! へはははははは!」

〈……〉



 殴りかかってきたファフニールの攻撃を、カオスブラックドラゴンはガイルの頭を鷲掴みにして盾にする。その間にできた隙をついて圧縮した闇魔法を腹部にはなった。それはファフニールに確実に当たるも、傷は一瞬でふさがる。



「しかし拉致があかないのも本当だ。本気を出すか?」

「かかかかか、関係ない人間は神の命により生かしておくんじゃなかったのですすすかかかか?」

「最初に無差別に殺人しようとしていたお前がそれを言うか。……なに、味方がピンチになれば吾輩達の目的も必ずやってくるであろう。勇者だしな」

〈勇者が目的……? まさか美少女かヘレルのことか……!〉

「ええ、ルシフェル……もといヘレルさんの方ですよ」



 自分の友人にも近い存在が目的だと聞いた瞬間、ファフニールの鱗は金色に輝き、光でできた羽根も出現した。

 まばゆい光を放ちながら、拳を握り、それを三人に向かって突き立てる。



「おや、姿が変わりましたねぇ」

〈ヘレルのなにが目的かは知らぬが、それは是非止めさせてもらおう。魔力は温存したかったが……カオスブラックドラゴン、貴様さえ屠れば国王らも動けるというもの! 刺し違えても貴様を滅し野望を阻止してやる!〉

「そう上手くいくわけが……おっと、目当ての方に動きがあったみたいだな」

「これは予想通りですねぇ……」

〈なに?〉



 カオスブラックドラゴンとメフィストファレスが何かを感知した様子を見せた。ファフニールも警戒しながら魔力の流れを感じ取る。前三人と自分以外はカオスブラックドラゴンの力により弱っているはずであるのに、もう一人分追加された魔力があることに気がついた。

 後方からその魔力が迫ってくる。やがて姿を現したのは神秘的ではあるが黒い翼が生え邪悪なものを含んだヘレルであった。片手には細長い剣を握っている。



〈……!? ヘレル、どういうことだ!〉

「ファフニール、悪かった一人に負担かけさせて。今気がついたんだ、この力の中で俺も動けることに」

「そ……その姿は……へ、ヘレルどういうことだ! ギルマーズに敗北して、アリムの手によって生き返って……悪魔の力がなくなったのではないのか!?」



 上手く話せない状態であるはずの国王も驚きのあまりそう言い放つ。それに答えたのは勇者ではなく、メフィストファレスだった。



「メフィラド国王! 実はですねぇ悪魔になるのって、称号の効果によるものなんですよねぇ。ステータスから称号や印は無くなりますか? 無くなりませんね? 俺や彼のように元は人間だった悪魔は、人間になるのも悪魔になるのも自由自在なのですよ」

「そして悪魔になることにより吾輩の力を無効化し、我々の前に現れた。計画通りだな」

「ほ、本当かヘレル……!」



 国王達がゆっくりとヘレルの方を振り返る中、本人は深く頷いた。しばらく敵以外全員唖然としていたが、やがて我に返ったファフニールがヘレルに向かって口を開く。



〈な、なんにせよ来るなヘレル! どうやらお前がコイツらの目的らしい! 最終的な理由はわからないが……ここは余一匹で十分だ!〉

「だがそいつらは……」

〈黙れ! 援護しに来たというのなら、動けない人間どもを城の奥の方へ避難させろ!〉

「せっかく悪魔にもなって戦いに来たと言うのに、それだけじゃあつまらないではありませんか。ねぇ、ルシフェルさん」

「ファフニールがそう言うならわかった、ここは任せる」

「無視ですか……」



 悪魔化したヘレルは念術を使ったようで周りに倒れ込んでいた者たちは宙に浮き、ヘレルの元に集まる。

 斬れる対象が減るからとガイルが攻撃を試みたが、金色化したファフニールによってそれは阻まれ、やがてこの場にいる全員を避難させる準備が整った。



〈いけ!〉

「ああ!」

「ま、まてまでててててててて! ……って、なんでお二人ともさっきから傍観しているだねなんですかねねねねねね」

「いえ、別に。この状況でも問題ないからですよ」

「むしろ派手に暴れられるというものだ」

「なんなんですかねぇええええ……」



 ヘレルは城の奥へと消える。ファフニールは三人の方を振り向いた。



〈さて、待たせたな〉

「ああ非常に待った」

「これからが本番ですよ」



 そう言うと、それぞれの魔力に変化が現れた。

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