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第九百八十八話 再来する道化の悪魔

 国王達は大広間にたどり着いた。他の箇所よりかなり濃く煙が充満し、満足に前を見ることができない。周りに潜んで様子を見ている兵士達も何をどうしたら良いかわからない状態のようであった。

 また、侵入者三体の反応は依然としてその場から動こうとしない。



「この煙、風魔法で晴らせませんかね、お父様」

「いや、この濃さの煙を晴らすのに必要な風量となると周りにいる兵達にも被害が及ぶ。もう少し様子見を……ぬ?」



 国王の元にメッセージが送られてきた。そのメッセージは先に様子見として送り出した、召喚した二匹からであった。



【に、逃げて……こいつら強すぎるよ……】

【敵わないわ……もう……今日は活動できない……ごめんね……】

【そうか、ご苦労であった】



 そして二匹の反応が消えた。国王は敵がこの広間で大きな音を立てることもなくSSランクの魔物を倒せるだけの実力があると理解した。メッセージでそのことを他の者達に伝える。



「様子見のためにあえて召喚専門補助魔法をかけなかったとはいえ……あの二匹を同時に相手して倒すとは」

「SSランカーどころじゃないな」

「やっぱり私達のみで行った方が良さそうですな」



 お互いの姿は見えないが九人はそのままメッセージで作戦を短時間で立て、それを実行することにした。

 九人は三人の侵入者に近づくために前へと歩き出す。その途端、いままで一言も発さなかった三人のうちの一人が大声で叫び始めた。



「んあああああああ、もう我慢我慢我慢我慢ガマンならないですヨゥ……! あんな子象と魚じゃあ物たりナッシング!! 人を、嗚呼嗚呼、早く人を切り刻みたいのです!!」



 それをなだめるように、別の声が聞こえてきた。



「落ち着け」

「だってだってだってだって! こんなたくさたくさたくさんの人間がいるのに、一人もキリキリキリキリできないだなんてぇぇええ!」

「仕方ないだろう、神の指示だ。今に九人ほどくるから我慢しろ」

「きりきりきりッ! ころころころッ!」



 あまりの狂気の声に、SSSランクの実力があるはずのルインやカルアを始めとした若い世代の歩みが遅くなる。怯んでいた。

 そのことがわかった国王ら四人はそれぞれ自分の子供をなだめ、さらに前へ進むよう促した。そうこうしてようやくこの大広間のおよそ真ん中に来た時、この中の複数人にとって聞き覚えのある声が聞こえてきた。



「国王や王子様、そしてお姫様方が自らお出迎えに来て下さるなんて、何という高待遇。こんなに煙を充満させておくのも失礼に値しますかねぇ」

「自分でやっておいて何を」

「演出ですよ、演出!」

「……うそ、そんなまさか……!」



 カルアがそう呟くと同時にあたりに充満していた濃い煙は入り口近くにいる三人のうち真ん中の一人にすごい勢いで吸い込まれ、消えていく。

 そこに姿を現したのは、口元がニヤついている仮面の男、全身クロずくめの男、茶色いスーツとようなものを着た角刈りの男であった。この三人全員に、その場にいる皆が見覚えがあった。



「えっ……えっ……?」

「どこから突っ込んだらいいのかわからない……」

「おんやぁ、突然皆さんだんまりになっちゃいましたよぉ? いきなり煙を晴らすのはやはりウケが悪かったのでしょうかね?」

「ひと、ひとひとひとひとひとひとぉぉおおおおぉぉ!」

「まだだ、まて」



 驚きのあまり言葉が出ずルインらは数秒の沈黙を続けたが、ゴクリと唾の呑んでから国王がゆっくりと口を開いた。



「この間指名手配したばかりの男に……アナズム中でSSSランクモンスター並の危険人物と認定されている大量殺人鬼……そして、なにより処刑したはずの……」

「処刑? 俺、処刑なんてされましたかねぇ?」

「神により取り除かれた記憶の話しだ」

「ああ、そうなんですね。……どうもお久しぶりですメフィラド王家の皆々様ァ……!」



 道化の格好をした男はさらに口角を釣り上げ、怪しく笑う。そして深くお辞儀をした。



「どうも、メフィストファレスです……よ!」

「なぜ……なぜだ、なぜお前が……!」

「となると魔神はどうなったのですかな!? まさかアリム殿達がやられ……」

「ははははははははは! 今の俺と魔神は無関係なので、そこは安心してくださぁい!」

「……一旦下がっていろ。いくぞ」



 メフィストファレスが高笑いしている間に国王はそうぼそりと呟き、それに対して大臣、大司教、騎士団長の三人は頷いて子供達より前に飛び出した。



「はぁ……色々もお話ししたかったのですが、そんなムードではありませんね?」

「どうせこちらとて話をする気もなかった。手早く目的を済ませて終いにする」

「ころし、ころころころ、ざくざくざしゅざしゅ?」

「ええ、まあ……敵対するらしいですし構わないでしょう」

「神曰く、殺しても無意味らしいしな」

「どういうことでしょうね?」

「さぁな」



 四人はそれぞれ得意な武器を構えた。それに答えるように、道化の男を中心とした三人も戦う姿勢を構える。

 その空気は明らかに只事ではなく、これから一つの大きな戦いが繰り広げられることは、戦闘経験が全くないカルナ王妃にすらすぐに感づくことができた。



「た、戦うの?」

「仕方あるまい。ここで問答するより捉えたほうが早いからな」

「大丈夫です王妃様、そして息子達よ。今の我々が負けるはずもない」



  その言葉を聞いて黒ずくめの男は声をあげた。



「自信があるのはいい、この殺気立った魔力を感知するにやはり偽の勇者に導かれた転生を行なっているのだろうが……そううまくいくと思うなよ?」

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