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第九百七十六話 黒づくめ 2

「……我に何の用だ?」

「少々気になってな」



 黒づくめの男は素顔を晒そうとしない。ローズはすでに転生までしているSSSランクの冒険者だが、この男から漂う形容し難い嫌な感覚に警戒心を最大まで高めていた。そんな中、ガバイナは話を進めるべく口を開いた。



「まさかナンパか?」

「何を言っているガバイナ。今はお前がいるんだぞ、他の男が寄ってくるはずないではないか」

「……違う」



 黒づくめの男は首を振る。ガバイナは今の質問の間にローズをいつでも庇えるような体勢をとっていた。すでに事が進めば応戦する気持ちでいる。



「ではなんなのだ、言ってみろ。こんな午後に人が気持ちよく好きな……じゃなくて、友人と話をしていたところへ到達に割り込んできて、礼儀を知らないのか?」



 ローズは少しイラ付いたようにそう言った。黒づくめの男は鼻で笑ったような仕草をしてから、再び首を振った。



「人? 人……な。 化け物が人を称するとは」

「……ほう。すまないが、我はこれでも容姿にそこそこ自信があるのだ。そんな我をつかまえて化け物などとはいい度胸ではないか」

「そうだ、ローズは化け物などではない。たしかに強さはとんでもないが、本質は可愛いらしい少女だ」

「はうぅ……!」

「容姿などどうでもいい。お前は吾輩と同じだ、そうだろ?」



 黒づくめの男はそう言うとフードを脱ぎ素顔をあらわにした。それは不健康的で不気味な色の肌で、それ以外は全てが黒色で染められていた竜族特有のヒレを耳に生やした姿をしていた。



「竜族がなぜ化け物ということになるんだ? たしかに珍しい上に他の種族より様々な面で優れてはいるが、今でも普通にどこかで暮らしている人間だろ?」

「……ふん。部外者にはわかるまい。お前ならわかるよな。竜族の少女だなんて偽って、人に紛れて……」

「わ、我は人間だ! だが……その……」

「……どうしたんだローズ」

「が、ガバイナ、すまないが席を外してくれないか」



 悲しそうな表情をしてお願いをしてくるローズにガバイナは思わずその頼みごとを承諾してしまった。おそらく初対面の男にしかわからない深いわけがあるのだと考え、ローズにメッセージで『近くに居るから危なくなったら駆けつける』と伝え椅子から退いてその場を去る。



「……お前も……ま、魔物から人間になったのか?」

「そうだ。吾輩は自分自身でスキルカードを使ったが、お前もそうか?」

「……あ、ああ。そうだ」



 ローズは自分と境遇が同じだと判明したが今だに謎が残る男に、少しでもアリム達と関わった片鱗を見せてはいけないと考えて嘘をついた。男はローズの言ったことが嘘か真かを確認せず話を続ける。



「俺と同じドラゴンだろう。なぜ人間に紛れている」

「に、人間になったからだ。私は人間が好きなんだ。そんなのはそれぞれの勝手だろう?」

「解せぬな」



 男はローズにまた一歩近づいた。椅子に座っていふ状態で後退りすることはできないため、ローズは自分の身体をすこし仰け反らせなるべく男と距離を保とうとした。



「お前はなんだ? 何という魔物なんだ? ドラゴンなのは確実だろう」

「こ、答えなければいけない義理なんてないだろう。……やはり人だとか竜だとか関係ない。初対面の男になぜ我のことを教えなければならぬのだ。それに我はもう人なんだ!」

「吾輩はカオスブラックドラゴン。ブラックドラゴンの亜種、SSSランクだ。冒険者なら聞いたことくらいあるんじゃないか?」



 たしかにローズはアリム達に人間にされてから今までの間にカオスブラックドラゴンという伝説の魔物の名前を聞いたことがあった。その強さは魔神に匹敵するのではないかと思えるほどであり、数百年前に封印されるまではいくつもの村、いくつもの街、いくつもの国を滅ぼし多くの命を奪った災厄と呼ぶにふさわしかったと。

 だがその存在は魔神同様におとぎ話程度の曖昧さで残っており、詳細までは知らなかったが、ローズは確信した。目の前にいるのは本人……否、本竜であると。



「そんな……ドラゴンが我に何の用だ……」

「簡単に聞こう。吾輩と共にある御方の僕として活動しないか? 同じ魔物として。お前も元は高ランクの魔物だったのだろう? ……そもそもお前はさっきから自分が人間になったと主張しているが、半分だよな。今すぐでもステータスから元の竜の姿に戻れるはずだ」



 そのことは事実であった。今まで誰にも言わなかったが、ローズはいつでもドラゴンに戻れたのである。しかしそうしなかったのは人間になれたこと自体が喜びであり、人と触れ合うことも喜びであるからだった。ローズは激しく首を横に振った。



「そんなのは知らない! 我はもう人として生きていくと決めたんだ! 魔物にだって戻らない。このまま一生を終える」



 ローズのその言葉を聞き、男は初めて笑った。しかしそれはローズを嘲笑するような笑いであり、決して彼女の決意への微笑みなどではなかった。



「あの男に惚れているようであったし、そう言うと思った。仲間にならないならそれで構わない。人の味方をするドラゴンなぞやがて我々と敵対するに決まっている。……やはり、今のうちに消しておくのが良いだろうな?」

「我とやろうと言うのか?」

「そちらこそ。この吾輩の正体は教えたはずだが……敵うとでも思っているのか?」

「まあな」



 ローズは杖を素早く取り出し、椅子から勢いよく立った。カオスブラックドラゴンと自称する男は手に闇魔法の魔力をため始める……。



#####



敵幹部!敵幹部!(今までの)登場キャラvs敵幹部!イェーイ!

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