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第九百三十六話 アリムvs.アリム

「そもそもボクに勝てるだなんて思ってることがおかしいんだ」



 偽物の俺は服を正しながらそう言った。それに、白黒だった体に色も付いてきている。髪の赤色や服の色はまだだから、顔だけ似てる別人みたい。いや、別人なんだけど。



「ボクが君に変化したのは別に可愛かったからだけじゃない。ボクはね、騙すのが好きなんだ」

「騙す?」

「ボクは身体をコピーした相手の記憶を全て知ることができる。……この記憶からコピー元の大切な人を巡って殺していくのが楽しいんだよ」



 うわ、なんて残酷なやつなんだ。それにさすがの俺も結構知られたくない記憶がたくさんあるからやめてほしいんだけど。冗談抜きで。



「それに君はとびきり可愛い。この可愛さがあるなら、たくさんの人間を騙し、不意打ちで殺すことができる……」

「ボクの可愛さを悪用するのはやめてね」

「いやだね。じゃあ早速、記憶を……」

「や、やめてね!」


 

 偽物の俺の頭が光りだす。これが記憶を見ているということかもしれない。しばらくして光はやんだ。

 なぜだか、偽物の俺はポカンとした顔をしているよ。俺の記憶にそんな変なものあったかな? あ、ミカの裸の記憶見て悩殺されたりした? あるいはみんなでお風呂はいった時……?



「き、君……」

「なんだよ」

「言いたいことは山ほどあるんだけど……まず、その……男……なの?」

「そだよ」



 まさかそれに一番驚いたのか。たしかに俺が男だって知ると絶望する人は多いけどさ、そんなまじめに殺そうとしてた相手が呆気に取られる程なのかな。



「男女変換……たしかにそういうスキルはある。でも男に戻ってもほとんどなにも変わらないってどういうことなんだ……」

「そういう人がいたっていいじゃない、別に」

「……は、そうだ。これに驚いてる場合じゃない」



 偽物の俺は焦ったように後ろへ思いっきりジャンプした。

 そして後ろを振り向いて走り始めた。



「なんなのさこのステータスは! 化け物! 本来ならSSSランクの魔物として、ボクは簡単にコピー元を殺せるんだ! スキルだってコピーできる! でも君はスキル抜きでもバカみたいな強さを……!? 魔神を全て封印しただって? ふざけるのも大概にしてよね!」

「ふざけてなんかないよ!」

「うわあああああああ!? 付いてこないでねっ!?」



 スキルをコピーされるのはアイテムマスターの都合上、世界を破滅しかねないほど恐ろしいけれど、ステータスがコピーできないなら話は別だよね。すでに身体自体は色もちゃんと付き終わって俺そものもなのに肝心なところがダメだったか。普通のアナズムの住民相手だったら十分だったのかもしれないけど。

 俺は偽物の俺に一瞬で追いつき手を掴んで動きを止めた。



「はなして!」

「いやだよ!」

「くっ……ボクよりステータスが高い存在なんて魔神くらいしかいないからって魔力を探るのを怠った結果がこれか、早く気づいて逃げればよかった」



 あ、俺相手に逃げないほど強いんじゃなくて魔力の感知をやめてたのか。やっぱり相手のことをよく知るっていうのは大事だよね。まあ、俺もアナズムじゃ初見の敵だろうが分析もせずに倒しちゃってるけど。



「……倒すよ!」

「……!」



 空いてる方の手で剣を振るったら、偽物の俺は盾を出してそれを防ごうとした。でもその盾はせいぜい伝説級。神具級の武器を防げるはずもなく、盾ごと一文字に切ることができた。



「か……はっ……!」



 偽物のアリムは腕から身体が真っ二つになって半分に分かれた。どうやら倒してもあのグネグネに戻るというわけじゃないみたいだ。本当に身体ごと変えたんだね。魔物なのに生殖機能とかもあったのかもしれない。

 ……それにしても、死んだ自分を見るというのもいい気分じゃないな。仮にも女の子を切ったってことになるから、なおさら。アイテムとして鑑定して名前を見てから、魔法で跡形もなく消しちゃおう。死体を残すわけにも……。



「んっ……!?」



 あれ、おかしいな。なんで俺の身体から血が溢れてるんだろ。

 腕から胸下にかけてが熱い。……どうやら偽物の俺に与えたダメージがそのまま跳ね返ってきたみたいだ。防御の高さのおかげで深めの傷ですんだみたい。そんな恐ろしい力も持ってたのか。俺じゃなかったら苦戦してたね。

 自分の身体は回復魔法で治すとして、こいつの身体を処分して大丈夫なものか心配になってきたぞ。

 とりあえず鑑定してみると、『ニャルラトホテイプ』という魔物だったことがわかった。性質上、どうやら前に戦ったガタノソーアなどと同じ系列の魔物らしい。

 恐怖心なんて抱かずに挑んでたら、もしかしたら俺にも勝てたのかもしれないね。石化させるなりなんなりしてさ。もしかしたら今までに人間に変身して記憶をたくさん手に入れて、人間の感情もモノにしちゃってたのかもしれない。

 ニャルラトホテイプの身体にちょっと傷をつけてみても俺に反映されなかったので、完全に倒したから大丈夫なんだと判断して雷魔法で消し去った。むむぅ……なかなかショッキングな映像をモニター先におくってしまったかもしれない。



#####


めっちゃ遅くなりました! すいません!

 

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