第九百二十二話 5体同時討伐
「わーふぅぅ……!? 5体、SSSランクの魔物が5体だって!?」
サポートしてもらうために呼んだリルちゃんのお父さんが、今日のことについて説明した後にそう叫んだ。純粋なアナズムの人間で、なおかつリルちゃんみたいに戦闘力的な意味の実力は全然ない彼だからこそだろう。つまり、これが一般的な反応なんだ。
「わふ……アナズムは終わるか?」
「わーふ! パパ、昨日は私たちで手分けして3匹やっつけたから、今日もなんとかなるよ」
「そ、それは聞いていたけど……。だからこそ、このまま……!」
リルちゃんのお父さんが言いたいことはつまり、5体現れたことのほかに、出現数が日に日に増え続けていることも含めてのことなんだろう。
「今日全員呼び出したのは明日以降も同じような数かそれ以上、SSSランクの魔物が出現するかもしれないからだね。たしかにここまでくると打ち合わせが大切だ」
「美花と桜も討伐に参加するんでしょ? 私達も行かなきゃ」
「誰が行くかどうかの指示は一番詳しい有夢君がしてくれるはずだよ」
美花のおじさんとおばさんの言う通り。今日は5体だからうまいこと分配しなければならない。どうしようかな……。
「一番怖いのは、にいちゃんと美花ネェが戦ったような奴が今日もいることだね。俺は瞬間移動っていう技を持ってる手前、短期決着しやすい。今日は司令塔じゃなくて一人でいかせてくれないかな。そしたら1匹倒しつつすぐに援護に行きやすいと思うんだ」
「わかった」
カナタがカナタじゃなくて普通の弟だったら、こんな提案オーケーなんてしなかっただろう。おそらくこの中でカナタは俺と同等かその次に強い。むっふん、自慢の弟だよ。
となると昨日、俺も一人の方が良かったと思う場面があったしそうした方がいいかもしれない。強い奴ほど守れないくらい広範囲に攻撃して来たりするから。
それを考慮し、俺と叶以外を2組にするとしたら……。
「よし、それじゃあ俺と叶は単独行動することにしましょう」
「えっ、あゆむ!?」
「その方がやりやすいと思ってね。そのかわりミカはサクラちゃんと組んで。あとはお父さんとお母さん、ショーとリルちゃんのコンビで行こう。後の人たちは今から設置するモニターを見ながら、5組の状況報告をお願いします」
「な、なるほど。わかったわ……」
これならしっかりと対応できるはずだ。なるべく俺が強そうなのを選んで他の組は普通の魔物が当たれば尚良し。
「モニター観察の責任は私が負おう。職業柄、慣れてるからな」
「親父!」
警察のお偉いさんであるショーのお父さんならたしかに司令塔に適任だ。よしよし、いい感じいい感じ。
「ありがとうございます。じゃあお言葉に甘えてそうしましょう。……それぞれどこに行くか選んでね。俺はここ」
映像だから魔物の姿だけなら見える。今回は騎士ともいうべき人型の魔物と、触手がうねうねついてるミカとサクラちゃんのコンビを絶対に行かせたくない卑猥な魔物、海の中のイカっぽい魔物、ドラゴン、ミノタウロスのような魔物だ。
ドラゴンは強そうだけど行動パターンが単純明快で倒しやすそうだから他の人に回すとして、俺は海の中っていうめんどくさい場所にいるイカっぽい魔物にした。
「わかった、じゃあ俺はこの触手のやつにしよう」
「あれかにゃた、そこでいいの? あんまりかっこよくないけど、その魔物……」
「今日はかっこよさは求めないことにするよ」
「そっか。お姉ちゃん、私達はどうする?」
「とりあえずドラゴンにしましょう」
「じゃ、俺とリルは牛頭だな」
「私にとって楽な人型を任せてくれるか、よし」
それぞれが行く場所を決めたみたいだね。カナタあたりがドラゴン選ぶと思ったけど触手選んじゃったんだ。まあ見た目的にリルちゃんやお母さんも近づけさせたくないしそれでいいかもね。
「じゃあそれぞれ送ろう。まずはお父さん達からでいいかな」
「準備はできてるよ」
カナタが順次、SSSランクの魔物がいる場所にみんなを送り始めた。
「じゃあつぎににいちゃん」
「ん、行ってくるよ」
俺はイカの魔物が現れた場所へと飛ばされた。海の上に出るけど、俺はべつに空を飛べるから問題ない。すぐにカナタもあの触手の塊を倒しに行ってるはすだ。
さて、俺の相手は今回は海中。どうやって倒してしまおうか。海の中に雷魔法ぶち込む訳にもいかないしなー。探知で見ている限りだと、イカの魔物は水中にいるみたいだしさっき姿を見れたのは運が良かったのかも。
となると簡単なのは念術で無理やり海上まで出してしまうことだよね。
<なっ……このアテシを持ち上げるですって!?>
念話で持ち上げたらちゃんと10本の足をうねうねさせながらイカが出てきた。………何かの素材に使えそうかと思ってたけど、予定変更。こいつは後で食べてみよう。




