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第九百十四話 ピピーの村再び

「ここがピピーの村」

「特に変哲はないのね」

「まあね。名産品の野菜があるくらいで、なんの特徴もないすごーく普通の村だよ」



 特に何もないけど里帰りした気分になれるような場所。そもそも俺はまだ地球では実家暮らしだから、里帰りの気分とかどんなものかわからないけれど。

 最後に訪れたのは……というか、城下町に行ってから一回もこの村に来てないけど、数ヶ月前と何も変わらない。どうやら色神犬の被害を受けたわけでもないみたいだ。よかったよかった。



「ん? なんだ君たち……あっ、あっあっああああ!?」



 村の前に立っていた見張りの人に気がつかれた。俺の顔を見るなり手をプルプル震わせ、後退りする。



「あり、ありありアリムちゃん!?!?」

「はい、そうですよ」

「久しぶり! えっ、えーっと、とにかく、村長に知らせなくては!」



 見張りの人は急いで村長のお家に走っていった。俺の名前を叫びながら。むむむ、ちょっと恥ずかしい。



「こんな田舎でも名前伝わってるのよね、相変わらず」

「この村は俺に思い入れあるだろうし、尚更だよ」



 しばらくして見張りの人が村長であるジーゼフさんと、村長の奥さんであるガーベラさんを連れてきた。案外名前を覚えてるものだ。そりゃそうか、あれだけお世話になったんだし。二人たも相変わらず元気そうだ。……その三人の後ろからついてきた、この村の住人ほぼ全員も。



「アリムか……!」

「はいっ!」

「お、おお……アリムかぁ……大きくなったのぉ……」

 


 そうそう、俺はこっちの世界では13歳の育ち盛りで、さらにこの村に居た時はまだ12歳だったんだ。身長がそこそこ高くなったり胸が膨らんできたりと色々変わってる。



「じゃあそこにいるのはあのコンビ組んでるっていうミカちゃん? きゃーかわいい!」

「無論じゃがこの村ではずっと、アリム、お前さんの話題で持ちきりなんじゃよ」

「えへへ、照れます」



 なんとなく予想通りだ。よく見たら家々に俺のポスターが何かしら貼ってあるのが見えるし。この村の入り口にもたくさん貼ってあることに今気がついた。これじゃあアリム村じゃないか。



「かわいいなぁ……」

「村を出る前より可愛さが増したよね?」

「増した増した」



 そういえば美人系の印が『女神』まで進化したのは大会に出たあとだった。あれの効果って人に美人だと思わせる感覚が増すんだよね? だったら納得だ。



「今日はこの村に何か御用事なの?」

「いいえ、ガーベラさん。この近くで強大な魔物の反応があったので、討伐がてら立ち寄ったんです。もう魔物は討伐済みですから安心してくださいね」

「そ、そうだ! 俺、俺パレード見に行ったよ! 勇者だもんなぁ……すごいよなぁ……」

「勇者をしながらモデルの仕事。鍛冶屋や祭りの準備まで行なっており、国王様のお気に入りと言うじゃないか」



 どうやら情報はかなり積極的に入れてるみたいだ。よく見たら先週発売された俺のことだけが特集された雑誌を何人かが持ってたり、半年前のを握っていたりしてる人もいるし。

 田舎の村にしては新しいグッズを持ってる人が多い。あの商人組会が俺の雑誌がこの村で売れるとわかって、積極的に回してるのかもしれない。



「ってことはSSSランカーなの? アリムお姉ちゃん」

「そうよ。ここに書いてるわよ」

「すっごーい!」

「ほんと、もう雲より上の存在だよなぁ」

「でも可愛すぎるんだよ……はは」



 村で俺のことを気にしていた感じの男の子たちはそう呟いた。さすがは成長期、彼らもかなり身長が伸びている。



「どうする? 村に入ってく? お茶くらいなら出すけど……」



 ガーベラさんにそう言われた。俺とミカは顔を合わせ、頷く。つまりミカがオーケを出してくれたからお言葉に甘えることにするってことだ。



「ぜひそうさせてもらいます」

「記憶がなかった貴女が、どうしてるか雑誌じゃない、貴女の口から知りたいわ」

「と言うわけじゃ。皆、道を退いてくれ」



 村長がそう言うと、村人たちはまるで国王様でも通るかのように道を譲ってくれた。そんなに俺が側を通ることが嬉しいのが、キャッキャキャッキャと騒いでいる。



「いつもなら私セットで騒がれるのに……今回はアリムが主役ね」

「ふふん。まあ仕方ないさ」



 そのまま村長に連れられ、俺はミカを連れたまま村長のお家へ。中に入ると今までの俺とミカが写ってるポスターがびっしりと貼られており、瓦版の切り抜きもいくつかあった。



「すまない、びっくりしたか?」

「でもどこの家でもこんな感じなのよ、ふふふ」

「そ、そうなんですか……」


 

 言うなればアリムのファンガチ勢の村と言うべきか。俺のアンチは一人もいないみたいだったし、すごいところだ。ここに国中の俺とミカのファンを集めたらすごいことになるに違いない。



「それじゃあ、なにから話しましょうか」

「この村に出てからのことを順番に話してほしいわ。……きっと、そのミカちゃんもただのパートナーじゃなくて特別な人なんでしょ?」

「はい、その通りです。じゃあまずは、この村を出てから……」

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