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ラーメン編『スープを作ろう! 畜生街道激闘伝』‐22




 馬車を降りて、暁之宮オーラを全開にすると、ようやく野次馬も僕の馬車を止めているという事実に気づいたらしく、道を開けてくれた。モーゼ並みである。

 そのまま歩いて正門前に向かうと、確かに見覚えのある男2人が向かい合っていた。

 もう決闘――否、『腕比べ』は始まっているのだろうか。


「……ちょっと、そこの貴女。あれはなんの騒ぎですの」


 と、適当にその辺の女子生徒を呼び止めて、事情を聴いてみる。


「暁之宮様っ!? え、ええと、よくわからないのですが、生徒会長が……ノークラン君と一昨日なにかあったとかで」

「……あー、なるほど、そういうことですのね」

「すいません、大したことを知らずに……どうか家族だけは……!」

「いえあの、わたくし事情を聴いただけですので、別に詳細を知らなかったからと言って貴女の家族に危害を加えたりはしませんのよ?」

「……では、あたし自身をどうにかする程度で済ませていただけると……?」


 どれだけあくどいと思われているんだ、暁之宮家は。


「そんなに怖がらなくてもいいんですのよ。暁之宮家は堅気には手を出しませんの」

「……本当ですか?」

「ええ。本当ですわよ」

「後ろのシャーマンに呪いをかけさせたりしませんか?」


 後ろを振り向くと、真顔で謎の草の束を振り回してジャングルに住む部族が踊りそうな舞を踊っている亜理紗がいた。


「なにやってるんですのよ、貴女……!?」

「いや、暇だったので、キミの振る舞いに信憑性を持たせようと思って」

「胡散臭さが増しただけですわよ!」


 言い訳しようと顔を戻すと、女子生徒はいなかった。逃げたようだ。

 はあ、とため息をついて、意識を切り替える。

 問題は、決闘をしようとしている2人だ。

 ――おそらく、一昨晩のことですわよね。見ているだけで助けようとしなかったことを、とがめましたの?

 2人は向かいあったまま一礼し、構えた。

 リュー・ノークランは天才的な魔術師で、後衛から範囲魔法を飛ばしたりするアタッカータイプの後衛だ。対して、エドガーは装備こそ刀ではあるものの、やはり回復魔法を基軸にするディフェンスタイプの後衛。

 属性はそれぞれ闇と水。相性的には五分五分ではあるけれど、しかし、優位なのは明確な勝ち筋として攻撃手段が豊富なリュー・ノークランのほうだろう。


「……とはいえ、2人のレベル差がどれほどあるかわかりませんし、予測はつきませんわね」

「そももそこれは現実だよ、リリィ君。ステータスなんてわかりやすいものが見えたところで、実際の戦闘では安易に逆転され得るだろう」

「それもそうですわね。では、亜理紗。貴女はどう見ますの? この『腕比べ』」

「そうだね……」


 亜理紗は顎に指を当てて少し考え――その思案姿がイケていたので、周囲の女子生徒達が少し色めいた――言った。


「ノークラン君のほうが優位だろう。けれど、先日のエドガー君は不利な相手であるフライングスネコスリに刀一振りで対抗できていた。止めを刺すよりも、多数を叩き落して無力化することを優先していたあたり、策を重視するタイプ。優位性をひっくり返す策があるなら、エドガー君だって十分勝機がある」

「ようするに?」

「ははは、全然わからない」

「役に立ちませんわね……」


 けれど、しかし。

 ――ちょうどいいかもしれませんわね。

 エドガー・鬼島とリュー・ノークラン。

 2人の実力を確かめることができれば、今後のイベントでも立ち回りやすくなる。


「お手並み拝見といきましょうか」


 決闘が始まった。





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