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 天空に突き出るようにそびえるその国には、大きなお城が高貴なバラのごとく美しく建っていた。

 選ばれたものしか住めない特別な国。

 しかし、今日は盛大にお祝いしようと各地から人が詰め掛けている。

 その中でも特に、念入りに着飾って、沢山のプレゼントを抱えた男達が目立っていた。

 ある者は馬車一杯に野菜や果物を入れて運び、ある者は羊や牛などの動物を引き連れて、ある者は花、家具、その他、自分が用意できるありったけのものをこの王国に持ち運んできているものも居た。

 ひっきりなしにやってくる訪問客の対応に、城の中の者達は大わらわ。

 なぜなら、この日、ジュネッタージュ王女の16歳の誕生日を迎え、盛大なパーティが催されるからである。

 王女が16歳を迎える誕生日パーティは、その地位の高さもあるが、そんじょそこらのただのパーティで済まされない。

 王女にとっては一生を左右する一大事な出来事だった。

 全国から集まって来る沢山の金持ちで身分が高い男達。はたまた、身分に関係なく容姿に自信のある美しい男達。そしてとにかく自分に何も自慢できるものがなくても、男という理由から夢だけを抱えて参加する男達。

 我こそはジュネッタージュ王女に相応しいと、自分をアピールできる日であり、そして王女はこの中から将来の相手を決めなければならなかった。

 誰もが王女をしとめたいとあの手、この手を使って、アプローチに必死だった。

 それは一攫千金を手に入れるように、小さなチャンスでも無駄にしたくないと熱く夢を見る。

 もしかしたら──。ひょっとして──。

 とにかくそこに行かなければ得られないのなら参加すべし。

 そんな男達がわんさかとやってきていた。

 この天空の王国は、この世界を支配する力を持つ絶対的な存在。

 常に平和で、全てに恵まれ、そこは神々が住む国と言われるほどに崇められた場所だった。

 この国では、代々この世を平和に導く特別な力を宿すものが生まれ、ジュネッタージュ王女もその能力を持つ一人だった。

 その力とは、この空を支配するドラゴンと唯一心を通わせることができ、ドラゴンを意のままに操る力の事。

 知能が高く、体も大きく、そして何より空を飛べる巨大な生物、ドラゴンは、この世では驚異的で、人間が最も恐れる存在である。

 そのドラゴンを支配できるのが、この天空の王国の者達だけとなると、人々は平伏し、崇めるしかない。

 嫌われでもしたら、ドラゴンを送り込まれ滅ぼされる事にもなりかねなかった。

 しかし、その心配は全くなく、天空の王国はその頂点に立つものがとても平和的で慈愛を持って接するだけに、人々は神のように崇拝している。

 だからこそ特別で、誰もが憧れる国であった。まさに天空の王国は楽園と謳われる。

 そんな憧れの場所に住むことを、誰もが許されるわけではなかった。

 また、絶対的な国に入りこむという事は、世界を君臨するのと同等でもある。その力が欲しいと、男達は王女を手に入れることを夢見て、ロマンを抱くのだった。

 王女は次の跡取りのために、早くから結婚させられるのがこの国のしきたりであり、16歳となるこの日に目ぼしい人を見つけ、気に入れば即結婚しなければならない。

 沢山の男達が集まれば、誰かは王女の好みに叶うものもいることだろう。眉目秀麗な男もかなりその中に混じっては、選り取り見取りの集まり具合だった。

 その中で一際目立っている男がいた。

 背が高く、顔も申し分ないほどに、その中で一番美しくもありかっこいい。しかも長髪で、それが輝くほどの金髪ときて、颯爽と豪快に駆けるサラブレッドのように威厳と気高い気品を添えていた。

 ただどこか目元がクールできつい感じもするが、そこか強さと男らしさが強調されて、少なくとも城で働く女達は目が合うとぽっと頬を染めていた。

 好奇心から一人の女がすれ違いざまに名前を尋ねれば、キリリとした笑みで「セイボル」と答えが返ってきた。

 できることなら王女がこの人を選んで欲しいと「頑張って下さい」と応援するものまでいた。

「王女様は、結構面食いだから、きっとセイボル様をお選びになると思うわ」

「そうだったらいいのに。あんなにハンサムな方がこのお城に来て下さったら、私たちもお世話のし甲斐があるものだわ」

 すでに城に仕える女性達にはえこ贔屓され、その対応が面白いとセイボルは一方の口角を上げて笑っていた。

 セイボルは周りの男達を見回し、そこに自分以上の容姿を持ったものが居ないか見ていた。

 そこそこ整った顔のものはいるが、容姿では自分が一番と、うぬぼれを抜きにしても、そう思えていた。

 しかし、容姿が一番であっても気は抜けない。

 なんとしてでもジュネッタージュ王女を手に入れなければならないと、セイボルは気を引き締め、襟元を正していた。


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