1. 僕と生徒会長
今は7月。僕はこの私立聖城学園に転入してきた
急な父の転勤で変な時期に引っ越すことになったのだ
そして今、学園内を探検、もとい、見学していたのだが…
「…迷った」
無駄に広い学園内を見て廻っているのだが、完全に迷ってしまった
周りには特に誰もいないし、近くの教室には『生徒会室』と書いてあるだけで、他に何も無い
とりあえず、階段を下れば誰かいるだろうと思い、階段の方へ向かおうとした
そのとき、後ろから声をかけられた
「そこの後輩!」
振り返ると、そこには生徒会室の前に女子生徒が立っていた
似ている、”あの人”に…
けれど、もう”あの人”はいないんだ。いるわけがない
「迷子か!迷子だな!」
「え…あ、はい」
僕はぎこちない返事をした
「よし!この私が学園内を案内してやろう!」
「えぇと…あなたは」
どこの誰かも知らない人に、急に学園案内をしてやると言われてもな…
「私か?私は、工藤 桃香だ。よろしくな!日野 恭也くん」
え…初対面だよな?どうして僕の名前を知っているんだ…?
「…どうして僕の名前を?」
「ふっふっふっ…それは、何を隠そう、私が生徒会長だからだ!」
何も隠してないと思うけど
「あ、なるほど」
「え?それだけ?」
「?何がですか?」
「あ、いや…もうちょっと、『おぉ!』みたいなのを期待していたんだけどなぁ…ま、いいか。で、この私がこの学園内を案内してやろう!」
それ、さっきも聞きました
とりあえず、このまま迷うよりは案内してもらった方がいいかな
「あ、じゃあ、お願いします」
僕は生徒会長らしき人に学園内を案内してもらうことになった