第零章 結末
『誰か・・・ここから出して・・・お願い・・・』
牢屋に閉じ込められた豪華絢爛な着物をまとい、長い黒髪を後ろで一つに結い肌は粉雪のような世間では絶世の美女とうたわれる程の女性が、地獄のような業火に包まれながら声をあげ叫んでいる。
木の牢獄に次々と燃え移り、その煙を吸い込んでしまったその女性はその場で倒れてしまった。
意識が遠退いていくのを感じながら目線を部屋の扉に向ける。
すると扉が開きだし、多少ではあるが光が差し込み、人がこちらに歩みよってくる。
『あぁ・・、とうとう幻覚が・・・』
『姫、ご無事ですか?自分、四番隊副隊長、井原修平にございます』
姫の御前の為、片膝を付きこうべをたれながらそう言った男は、年の功まだ十四・五ぐらいの子供で羽織は破れ所々燃えており、煤で顔は汚れ、血をあちらこちらから流しながらそれと同時に涙も流している。
『井原様・・・ご苦労様です。他の者はどうしました?後からこちらに来るのですよね?務様は?』
修平に少しのためらいが見られたが、口を開く。
『申し上げます・・・。我が隊・他の隊は全滅もしくは負傷者続出・・・隊長方も例外ではなく・・・水鼠様も敵軍の最後の大将と激戦の末・・・』
『末・・?』
『相打ちになられました・・・』
姫の頬に一滴の涙がこぼれた。
次々と流れ出てくる涙を袖で拭う。
『・・・そうですか・・・』
『姫、皆の願いの為、この井原修平の命にかけてでも、一刻も早くここから無事に脱出し、住み慣れた家に戻りましょう』
『はい』
〜この戦いの始まりは一年も前にさかのぼり、今日ようやく終止符を打った。多くの血や涙を流したこの戦いを人は【十五志の戦い】と呼び、以後語り継がれる事となる〜