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 マダココのスチルゴーレム

 ギルド長室で詳細を詰めて。


 「で、一人でいいんだな」


 「はい。キビアラギルド長」


 ルクイッドギルド長の後ろで壁にもたれかかって腕組みをしているメルナさんが。


 「リット君。一人は止めておきな。死人が居る。怪我人が居る。何か取られた。こいつが殺して奪って回ったと触れ回られたら目も当てらないよ。

 お勧めはギルドの受付嬢のあたしだ」


 メルナさんの横で可愛く立っているクルミクさんが自分を指さしながら前屈みになって。


 「そして私、クルミク」


 「そうですね。ルクイッドギルド長。キビアラギルド長。お二人をお借りしても良いでしょうか」


 「メルナいいのか」


 「いいから来てるの」


 「クルミクもか」


 「当然」


 キビアラギルド長が頭をわしゃわしゃ掻きながら。


 「判った。だが二人の報酬が無い。

 リット。考えてくれ」


 「リット君。あたしは添い寝でいいよ」


 「私は一緒に湯浴みぃぃ」


 「おいおい、いきなり過激な事言ってんな」


 「あなたも添い寝で済まさないでしょ」


 「あははは。お二人共ぉ」


 「何言ってやがんだかあいつらは」


 「ルクイッド。おめぇも大変だな」


 「「お互い苦労が


 「「うるさい」」


 「報酬は後程考えます。先ずは生存者救出に行きましょう。

 お二人共、手を・・・だきちゅくんれすか」


 「ほっぺがやわらかぁぁい」

 「プニプニだねぇ。いい香りぃぃ」


 「転移」


 「あの状態でここから転移とはすっげなぁ」


 「ルクイッド。いい加減リットを寄こせ」


 「やなこったぁぁ。リットはオウダーギルド登録者だぁぁ」


 「本人の自由のはずだが」


 「束縛しようとしてるじゃねぇか。服を掴むんじゃねぇ」


 「だったらリットを手放し、おめぇも手を離しやがれ」


 「おめぇが先に掴んだんだろうが」


 「うるせぇ。寄こせったら寄こせ」

 「黙れぇ。嫌だと言ってるだろうが」

 「いい加減に諦めて寄こせ」

 「いい加減に諦めろ」

 「オーク顔を近づけんな」

 「ミノタウロスが言うな」

 「るっせい、寄こせ」

 「嫌だ黙れ」


 「お二人とも何をなさっているのですかぁ?」


 「「パルナップ様。何時の間に?」」


 「ソファに座ったまま取っ組み合いなど。子供の喧嘩ですか。

 これはわたくしの仲裁が必要でしょうかぁぁ」


 「「だってぇこいつがぁ」」


 「はぁぁん?」


 「「ひぃぃ。すみません。必要はありません。パルナップ様」」

 「「上からの目線がこえぇぇ」」


 「何かぁ?」


 「「いえ」」


 「それで、モニターはテーブルの上でいいですか」


 「「はい。お願いします」」


 「撮影機の水晶はクルミクが肩に付けています。モニターに映します。既に現着ですね。さすがはわたくしのリット様」


 「「えっ?」」




 馬車四両が見える崖の上に転移で来て、三人で腹ばいになって見下ろした。

 クルミクさんはカメラを外して撮影をしている。

 切り立った荒涼とした渓谷。

 谷底は平坦な地面が幅百メートル程。両脇の崖の高さは百メートル程。大昔は川だったと想像できる。


 四両の馬車の内三両は潰されていた。その周りに死体が在る。

 五メートル級のスチルゴーレムが三体。その足元をゴブリン達が走り回り、その外をオーガ達が成り行きを見ているようだ。

 残っている一両は無傷のようだが。


 「メルナさん。クルミクさん。もしかしたらあのゴーレム達はゴブリンやオーガ達からあの馬車を守っているのかもしれません」


 「何でさ」


 「あの馬車鉄で出来ています」


 「装甲馬車ってやつか」


 「はい」


 「でも、どうして守る必要が有るの?」


 「スチルゴーレムは大まかに言えば鉄製なんです。色々な金属が混じってはいますが。

 恐らくですが同族が倒れた。助けなきゃ。そんな風に守っていると思います」


 「思考が在るって事か?」


 「言ってみれば魔物。ゴブリンやオーガ。ミノタウロスのような感じです」


 「なるほどねぇ」


 「本能のようなもので、あの馬車に近寄って来る動いている物は全て敵。人も魔物も同じ認識です。

 フルプレートアーマーで行ったらどうなるんでしょうかねぇ」


 「抱き着かれて死ぬ・・それでやられたかぁ」

 「抱き着かれ死にます・・それでやられちゃったのねぇ」


 「スチルゴーレム相手だからと盾役は鉄の重厚な盾とフルプレート。

 前衛は動きやすくするために胸当てだけでも。

 後衛達はその方たちの敵認定。

 前衛は護りに入って、スチルゴーレムに守られて掴まれて・・・」


 「「はぁぁぁ。ご愁傷様」」


 「ギルドの方に今後の対応の為の注意喚起しておきましょう」


 「おっさん聞いたか」

 「キビアラギルド長お聞きになりましたか」


 「おっさんが後で詳しくだと」


 「こちらもです。マニュアル作成をお願いいたします。

 報酬は全ギルドの運営資金でお支払いします」


 「判りました。それは後日。

 それで、ゴブリンやオーガが周りの死体に目もくれず執拗にあの馬車を狙っていると言う事は


 「「生きている女性が居る」」


 「はい」


 「まだ、丸一日です。生存の可能性は十分ありますよ」


 「はい。生きていらっしゃいます。五人居ますね」


 「報告は三人だったが」


 「恐らく怪我人が乗り込んだのでしょうね。周囲は残念のようです」


 「で、どう助ける」


 「ゴブリンの総数が凡そ百五十。オーガが七十。何れも通常種。

 私がゴーレム三体討伐と馬車を救助。

 私はゴーレム三体を頂ければ金貨十枚の報酬と素材はギルドにお渡しします。

 魔物の氾濫時の為の実地訓練で共闘作戦。シーランクまでの若手冒険者の底上げに良いイベントになりませんか?」


 「いいねぇ」

 「賛成」


 「作戦は?」


 「先ず、私が両端に五メートルほどの土壁を設けます。

 キタココ側にギルド長が転移紋を設置。希望の冒険者を送り込みます。

 整列待機。

 私が馬車を転移でここへ。

 その後、ゴーレム三体を倒して収納。

 キタココ側の土壁に階段を設置。土壁上で状況確認。後はギルド長隊長にお任せします」


 「おっさん聞いたかい。ああ、そうだ


 「キビアラギルド長。そうです。緊急クエストでいいです。はい。はい




 「冒険者チーム十三チーム。凡そ六十名。ギルド裏手の闘技場に待機完了」


 「了解です。お二人はどうなさいますか?」


 「ひっさしぶりに暴れたいな」


 「私もうっぷん晴らしに動きますよ」


 「判りました。では作戦開始です」


 「キビアラギルド長。作戦開始。了解って」


 「はい」


 四両の馬車から三百メートルづつ離して気付かれないようにゆっくりと土壁を地中から競り上がらせた。

 魔物達は全く気付いていない。


 「キビアラギルド長が転移紋設置。間もなく整列待機完了」


 「では行ってきますね」


 先ずは馬車の上に転移。


 (怪我の程度は・・短距離なら大丈夫そうですね)


 そして今度は馬車事元の場所へ転移。


 「お二人で中の確認を」


 「「了解」」


 メルナさんが馬車の扉を開けて。


 「おい大丈夫か。オウダーギルドの受付嬢のメルナだ」

 「大丈夫ですか。キタココギルドの受付嬢のクルミクよ」


 中から震えるような女性の声がして。


 「た 助かったのですか」


 「ああ。もう心配はいらん」

 「周りにゴブリン達はいませんよ。この中は五人ですか」


 「は はい。重傷ですが生きています」


 「キビアラギルド長。はいそうです。救護班を要請します。お願いします」


 クルミクさんが念話通信の間に、私は崖の縁から下を見た。


 「鉄の馬車に釣られてこちらに来ましたね。石を投げられる前に。

 転移。頭上で空中浮遊。雷撃。魔石の導線が焼き切れましたね。収納。次。雷撃。収納。次。雷撃。収納。終わり。

 ただいまぁぁ」


 「もう終わったのかいリット君」


 「はい。三体収納完了です。

 ここは、私が見ておきます。お二人は思う存分暴れて来てください」


 「「了解」」


 「救護班のお方達ですか」


 「はい」


 「茶髪のリットです。この馬車の中です。周囲警戒は私がします」


 「了解。担架を持って来てぇぇ」


 「はいっ」


 「テント設営」


 「はい」


 「医療班準備」


 「はい」




 土壁の上にギルド長二人。


 「キタココのキビアラギルド長だ。

 俺達が立っているこの土壁の向こう側に凡そ二百二十体の魔物が居る。それを駆逐するのが今回の討伐だ。

 各チームの連携が重要となる。

 先程の作戦要綱に従い動いてもらう。いつもと勝手が違うが、魔物の氾濫時がこの中の状況だ。その経験をしてもらう。

 怪我への対応であの崖の上に救護班が準備完了だ。

 報酬は先ほど言った通りだ。

 いいな」


 「「「了解」」」


 「では、三か所の階段を使ってここへ上がって来い」


 「うわぁぁいますねぇぇ「うじゃうじゃ居るじゃねぁか「きしょくわるぅぅ」


 「全員上がったな。目の前に階段が出来たら出撃だ」


 (全員が準備出来たようですね。階段を設置)


 「総員。出撃」


 「「「おぉぉ」」」


 「始まりましたね。ギルド長二人も戦闘に参加ですか。

 あれ?メルナさんとクルミクさんはどちらに?ああ、反対側からお二人で挟撃ですかぁお二人共お強いですねぇバタバタ倒していきます。

 おお。ギルド側の子が火魔法をぶっぱなしましたがお二人も避けながら倒していますねぇ。凄い」


 「茶髪のリット様。救護班班長ナレナと申します。先程は失礼いたしました」


 「ご苦労様です」


 「転移に耐えられるだけの処置は施しました。テントの外のベッドです」


 「判りました。ギルド裏の闘技場でいいですか?」


 「はい。闘技場中心を確保しています。

 あちらの医療隊の準備も完了です。処置内容も伝えています。わたくし達はここで救護活動に入ります」


 「判りました。では行ってきます」


 「お願いいたします。はぁぁ。馬車迄一緒とは凄すぎますね。

 周囲警戒。怪我人を発見したらここへ搬送」


 「了解」




 私も戻り、不明者捜索に当たりつつ、亡骸を回収したが生存者はいなかった。

 開始から一時間ほどで十数名の負傷者は出たが死者は無しで殲滅は完了した。

 メルナさんとクルミクさんは無傷だった。


 「リット君」


 「メルナさん。ご苦労様でした」


 「リット君もね。で、巣は在った?」


 「はい在りました。これが地図です」


 「一人で行ったの?」


 「いえいえ、疑われたくは有りませんから数匹のゴブリンの魔石の波長で検索掛けて所在地が解りました」


 「「良かったぁぁ」」


 「ご心配かけました」


 「おっさん。有ったって」


 「どれぐらいだ」


 「探索だけなので詳細は判りませんが、金属反応で金貨で百枚ぐらいでしょうか」


 「一財産じゃねぇか。いいのか?」


 「はい。私はゴーレムで満足ですよ」


 「キビアラ。おらっ」


 「いいのか」


 「お前の縄張りだ。あいつ等に分けるんだろ」


 「リット。ありがとう」

 「リット君ありがとう」


 「どういたしまして」




 潰れた馬車三両を回収しメルナさんとクルミクさんを伴って闘技場へ転移した。戻る時は抱き着かず、手を握るだけだった。


 ご遺体を引き渡し、後の事は任せて。


 「クルミクさん。ご協力ありがとうございました。報酬に関しては後日改めてお伺いします」


 「リット君。今はゴブリン臭いので抱き着けないけど、今度は私の指名依頼受けてね」


 「考えておきますよ」


 メルナさんは私の右手を取って。


 「リット君は考えなくてもいいから。帰るよ」


 「考えてくれるって言ったわよ」


 (あぁぁクルミクさぁぁん。左手を引っ張らないでぇ)


 「クルミク手を離せ。社交辞令だ。それぐらい解かるだろうが」


 「嫌ですぅ。メルナが離しなさいよぉ。それにリット君は本気でしたっ」


 「解ってねぇなぁ」


 「十分ぐらい分かってますぅぅ」


 「あのなぁ


 (あはははぁ。お二人共ぉ)


 「おいっリット。二人を何とかしろや」


 「では、ルクイッドギルド長このまま自宅に帰ってもいいですか?」


 「いい訳ねぇだろうが。オウダーのギルドに戻って処理してからだ」


 「はい」


 「クルミク。生存者の聴衆に行くぞ」


 「あぁぁもぉぉリットくぅぅん。また会いに来てねぇぇ


 クルミクさんはキビアラギルド長に手を引かれて行った。


 「はい。また今度」


 「メルナぁぁリット君からぁぁはぁぁなぁぁれぇぇろぉぉ


 私の右腕を抱えるように抱き着くメルナさんが。


 「嫌だねぇぇ。

 リット君。あたし達も行くよ」


 「リット。ここから転移で行けるか」


 「はい。大丈夫です。オウダーのギルドの転移紋に行きます」


 「頼む」


 「転移」

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