茶髪のリットの恩師、ブレンドル夫妻
「まだ言ってのかぁ。俺はエス。お前は・・あなた様はエスエス。様は止めろって」
「いえいえ。あぁぁそうですねぇ師匠」
「ばぁぁかぁぁ。それも止めろぉぉ」
「あなた、無理ですよ。お久しぶりねリット君」
「お久しぶりです。ラーライナ様」
「うぅぅん。リット君成分が足らなかったから痺れちゃう」
「ブレンドル様に叱られますよ」
「いいの。こう言う時は旦那は放っておいて」
「おいおい」
「で、ブレンドル様達はどうしてキタココに?東のチャウモンゴ王国にいらしたはずですが」
「たまたまな」
「照れちゃってぇ。リット君の十八歳のお誕生日を祝うつもりでここまで来たの。明日にはオウダーに行く予定だったの」
「そうだったんですか。わざわざすみません」
「何言ってるのよ水臭いわね。ちゃんと祝ってあげるからね」
「なんか申し訳ございません」
「で、リットは何故ここに」
「指名依頼を受けましたので来ました」
「例のスチルゴーレムか」
「はい」
「まぁお前なら問題は無いだろうな。だが、絶対に相手を見くびるな。自分を過信するな。いいな」
「はい。師匠」
「だから止めろってぇ
「いいじゃないの。ねぇ」
「はい。ご恩は必ず
「もう返してもらっているよ。こうして美人の嫁さんがもらえたからな」
「もう」
「はい」
「誕生日祝いだがいつ会える」
「そうですねぇ。ここの所立て込んでいますので、一週間ぐらい後でしょうか」
「そうか。じゃぁオウダーのカガミザキホテルで滞在している。
時間が出来たら受付嬢に伝言を頼む」
「判りました。そうだ。これをどうぞ」
「お前これ
「リット君これ、カガミザキホテルの招待券と割引券じゃないの。どうしたのこれ。貴族でも手に入らないわよ」
「えぇぇまぁ。招待券は六泊七日朝食と夕食はどれだけ食べても無料。お酒は別です。
割引券は宿泊代と夕食と朝食が日数分半額です。
どちらも一部屋でお二人まで。おそらくお部屋は最上階七階のスイートルームになると思います」
「スイートルームってあのスイートルーム?」
「詳しくはありませんが、スイートルームです」
「オウダーの南をゆっくりと流れる大きく美しい川。オウダーリバーを見渡せる最上階の部屋。
全ての階層へはウインドウエレベーターと言う天に上る箱。
部屋の外にはバルコニーとか言うものが在って、お空の下。そこにはプールと言う池も在って、とっても気持ちいいらしいの。
陶器や調度品は超一級品。ガラスも贅沢にあしらわれている。
寝具は羽毛とか言う鳥の羽を贅沢に使って軽くて暖かい。
男女の従者が一人づつ付いて、お部屋でお食事。バルコニーでも構わない。夜景が夢の世界へと誘う。
一部屋一泊金貨五枚よ。貴族からの予約が殺到して取れないって噂よ」
「おいおいいきなり金の話しかよ。夢のような情景は何処に行った」
「世の中お金よ」
「まぁな。散々贅沢三昧の貴族連中でも満足する贅沢ってどん何なんだよ」
「貴族の奥様方のお茶会で、各国の国王が泊まる部屋に自分達が泊まると言う優越感?よく解かんないけどそんな事を言っていたわ。
何よりミウラール王国のピグダット・ファム・ミウラール国王陛下ご一家も泊まった事の無いホテル。いえ、メドーダス殿下とイグアス殿下の素行の悪さで拒まれた。
イジルバーバラ第二王妃が食い下がり、メドーダス殿下とイグアス殿下がホールで怒鳴り散らして暴れ出し、駆け付けた公安に営業妨害で強制連行された。
ピグダット陛下がさすがに十三カ国の国王が敵対すると宥めて引き下がったらしいわ。
そしてピグダット・ファム・ミウラール国王陛下ご一家は一生涯の出禁処置。玄関を潜る事すら許されず、強行すれば公安の捕縛対象。
十三カ国から与えられた処罰内容は陛下も含めて全裸で顔以外の全身鞭打ち五百。
ミウラール王国も各国に同じような刑罰を科しているので文句の言いようがない
「そんなに恐ろしいホテルなの?」
「素行に問題が無く、気品に満ちた所作言動をしていれば夢のような時間が過ごせるらしいわよ。
そりゃそうよ。各国の国王陛下が従者を連れて泊まりに来るホテルですもの。
国王ですら満足するその奥義。それは『おもてなし』とか言うサービスらしいわよ。
一度味わったらもう離れられなくなるらしいわ。
そんなピグダット・ファム・ミウラール国王陛下ご一家が出禁になった曰く付きのホテル。
貴族から一般までも厳しく選別されているようで、宿泊の許可が出れば自慢のネタには事欠かないわ。
実際、その時に居た二人の奥様が天気が良かった悪かった。雲の量がどれだけとか、何にいくら使ったかを競い合っていたわよ」
「くだらねぇな」
「ミウラール王国の極貧時代を生きて来て、質素倹約、物欲皆無のあなたや私では一生掛かっても理解できないでしょうねぇ」
「だろうな。
で、一体いくらの価値が有ると思っているんだ」
「私からのお礼ですが気に入りませんか」
「ったくぅ。で。この券は売ってはいない。誰から貰った」
「悪い事はしていないと思うけど、お姉さんに正直に仰い」
「はい。
カガミザキ商会の社長様。ユーナリ・カガミザキ様です。
護衛の仕事の時にお金ではなくこちらをお願いしました。
後三枚づつあります」
「お前友達って言ってたな」
「はい」
「十三か国の各陛下が指定ホテルとして登録。
先程の話しも含めて、そんなホテルに私達は資質と品格に見合うの」
「私の推薦者であれば無条件で受け入れて下さるそうです」
「わぁぁったよ」
「大盤振る舞いね」
「そのミカガミザキ商会はご存じですよね」
「知っているわよ。知らないのは赤ちゃんぐらいよ」
「ミウラール王国のカガミザキ商会入り口の左手に社員用受付が有ります。そこにアルレシア受付嬢と言うお方がいらっしゃるそうです。
その方にこの券を見せてお名前を告げてリットからキタココのギルドで貰った。と、言って頂ければいいようです。私のサインも書いてあります。
馬車を用意していただけるそうですよ」
「ちょぉぉっと待って。もしかしてピグダット陛下やイジルバーバラ妃。メドーダス殿下とイグアス殿下。貴族でも乗れない。
いえ、拒まれて暴れて公安が出てきたって言う、 曰く付きの白馬二頭引きの純白リムジン馬車」
「あぁあれかぁ。王家の馬車の三倍程の長さでも四輪。侍従たちも乗り込んでお茶が頂けるってやつか。
てか、そこでもやらかしてるのかよ」
「どうしようもない第二王妃とその子供達よ。
それで、製作者はユーナリ・カガミザキ社長。お一人で製作。
構造の全ては謎。王家御用達の馬車製造屋でも作ることが不可能な構造。
出来ても人が乗った瞬間に真ん中から折れてしまう。
乗れても重すぎて馬が動けない。八頭引きにしてようやく。でも、砂利に足と車輪が取られて崩壊。そもそもあの純白が作れない」
「多分それが来ると思いますよ」
「「ひゃぁぁぁ」」
「嫌でしたか」
「いや。驚いただけだ。構わんさ。ご厚意は受け取る」
「でも、行って直ぐに泊まれるの?」
「今週は空いているそうです。王立学校が卒業式らしいので」
「あなた」
「そうだな。リット。少しの間遮音」
「先程から掛けてます」
「そうなの?まぁいい。あのなぁリット。もう言いな」
「聞いちゃった」
「何をでしょうか?」
「エルフの国。ナメナット女王国」
「勿論知っていますが?」
「おちょこちょいなところは治らないわね」
「何のことでしょうか?」
「ああもう。じれったいわね。イルリット第三王子大使様」
「えぇぇ?」
「そこは否定しとけよ全くぅぅ」
「あっ」
「可愛いわねぇもう。
クールシャインナ・フラーナス女王陛下に謁見した後のお茶会で陛下が仰っていらしたわよ。
茶髪のリットで大使として来て解かったって。
同じ顔で行っちゃダメよぉぉ」
「やらかしていましたね。もう皆さんに?」
「あなたを見守って欲しいって、三人の内緒よ」
「学校で色々有るらしいな」
「そこまでぇ」
「今の話しで家族からもなんでしょ」
「えぇぇまぁ」
「水臭ぇぞ。隠し事しやがって」
(あぁぁ頭をぐしゃぐしゃにしないでください)
「申し訳ございませんでした」
「元々ぐしゃぐしゃじゃねぇか。こうしてやるぅぅ」
「あぁぁぁ声に出てましたぁぁ?」
「丸聞こえだぁ」
「あれぇぇ?」
「あなたぁ」
「まぁいい。後日、たぁぁぷりっと聞くからな。覚悟しておけ」
「はい」
「ただ一人の王位継承権保持者なんでしょ」
「そうなっていますね」
「なんでやり返さない」
「師匠に言われました。強い力は真っ当に生きる弱者救済の為に使えと」
「まぁな。だが、奴らは真っ当じゃねぞ」
「まだ学生で分別が付いていない。更生する可能性も有るでしょうから」
「もうリット君は優しいんだから」
「困ったことが有ったら言え。
これはありがたく貰っておく。気を付けて行けよ。特にクルミクにな」
「えぇぇっとぉぉ。はい?」
「もう、初心なんだからぁ」
「はぁ」
「とんでもない事に成ったらお妃様になっちゃうわよ」
「あははは」
「クルミクが着替えて帯剣までして二階で待ってんぞ。ほれ」
「あれぇ?」
「じゃぁな」
「お気を付けて」
「またねぇ」
「あぁぁ。少しだけお待ちいただけますか」
「いいぞ。どうした」
「実はオウダーギルドのルクイッドギルド長とメルナさんは・・・
「そうだったのね」
「そう言う事ならしゃぁねぇ。ハブられたかと思ったぜ」
「報告が遅れて申し訳ございません」
「まぁいい。祝いの席でとことん追求していやるからな」
「あなたぁ」
「お手柔らかにお願いいたします」
「じゃぁな。気を付けて行けよ」
「はい。ありがとうございます」
「またねぇ」
「クルミク待てが出来るようになったのね」
「ワンコでも出来るぐらいだから、少しは見習ったんじゃねぇの。知らんけど」
(あははは。師匠ワンコって。
行きましょうか)




