茶髪のリットへ指名依頼
ギルド長室のソファに向かい合わせで座り、メルナさんがお茶を淹れてくれた。
「ありがとうございます。美味しいですメルナさん」
「あんがと」
「メルナ。リットの横に座らずに、下に戻っていいぞ」
「何言ってんのさ、おっさん。あたし が 可愛いリット君の担当受付だよ。
頭角を現すまでほったらかしで見向きもしなかったくせに何を言っているのさ。
おっさんが庇わないからあたしが匿っていたんだろうが
「すまなかったと言っているだろう」
「謝ったら過去は戻ってくれるのかい」
「判った。そこに居ろ」
「おっさんが理不尽な事を言わないように見張ってなきゃ。
リット君は優し過ぎるからね。どんな無理難題を言われても返事しちまうからさ。監視役」
「おっさん。おっさんって。
判ったよ。
でだ、リット。卒業できるの?」
「はい。卒業式に出ていいって先程許可を頂きました」
「何でぶっ飛ばしてやんないの。やらっれぱなしであたしもいい加減イライラしてるんだよ」
「ありがとうございますメルナさん。いいんです。事を荒立てると問題が起きますから」
「こうしてこうしてこうしてやればいいんだよ」
(ああメルナさぁぁん。ソファのクッションに罪は有りませんよぉぉ。あははは)
「事を荒立てるとねぇ。で、報告は受けた。さっきの荒療治は」
「ニナルッス連合国のビーランクの三人ですね。
ああやってギルドで騒ぎを起こして止めに入った女性達を食い物にしていたようです。
各ギルドに証拠は有るはずですから冒険者と人生は終わりですね。それに、へし折った右手はもう治りません」
「はぁぁ。何で今まで捕まらなかった」
「恐らくギルドカードが二枚以上有るんでしょうね。そして同じ場所に一日以上滞在しない。
裸同然の装いときちんと服を着た状態で欺いてきたんでしょうね。
例えば一のカードで入国。二のカードで出国。出入国や町への出入り。
冒険者への審査は案外緩いですから簡単です。
それで潜り込んで悪事。
捜索の方はまだ国内や町のどこかに居る。時間だけ浪費」
「なるほどねぇ。殺しか」
「だと思いますよ」
「エスのドガイボウの件も含めて、ありがとうございます。イルリット王子殿下」
「おっさん」
「あっ。おっと。リット」
「他で言って無いだろうねぇ」
「言ってぇぇ・・無い」
「怪しいねぇ。寝言は」
「それわぁぁ
「大丈夫ですよ。それでお仕事の話しですか?」
「ああ。そのニナルッス連合国のマダココ渓谷にきのうの朝、五メートルのスチルゴーレムが三体出た。それと、ゴブリンとオーガが同時出現。珍しい事だ。
四つの商隊が被害に合い、死者十五名。負傷者多数。行方不明が三人だ。
重傷者と行方不明者救出にエーランク三チームとビーランク二チームが向かったが死者が出て、重傷者と行方不明者は諦めたらしい。
で、指名依頼だ。ゴーレム三体の討伐とゴブリン。オーガの数減らし。遺体の回収は可能であれば。だ。
報酬は金貨十枚とゴーレム三体。オーガの魔石と魔石に変わらなかった死体の引き取りと素材の買取。ゴブリンの巣が在れば全てリットの物だ。少々安いな。
現在マダココ渓谷は封鎖中。行方不明者はいるがキタココのギルドは諦めた。時間的余裕はある。どうだ」
「ちょいと待ちな、おっさん。
スチルゴーレムと言やぁドラゴンとワイバーンに並ぶ最強種だよ。
あのドラゴンでさえご自慢の投石で撃ち落とすぐらいだよ。知ってる?」
「そんなこたぁ百も承知だ」
「それだけの死者を出したスチルゴーレムにリット君一人で行かせる気じゃないだろうね」
「リットは仲間に出来る奴は居るのか?って、聞かなきゃならなくなるだろうが」
「エスランクのおっさんやエスランクのブレンドル夫婦が居るだろう
「メルナさん。大丈夫ですよ」
「リット君行くのかい?」
「ええ。今から行こうと思います。明日は卒業式ですから」
「五分待ってるんだよ」
「五分ですか」
「いいから待ってて」
「はい」
「依頼書類か何か取りに行ったんだろう。
で、詳細はマダココ渓谷の入り口。キタココのギルドで聞いてもらう。俺もギルドの転移紋で行く。
リットはどうする」
「マダココに直接行って
「ギルドに寄れ」
「キタココの北門から正規に行きます。ミウラール王国の出国手続きはお願いします」
「緊急事態だ。手続きはしておく。
必要は無いだろうが一応確認しておく。必要な武器や機材はあるか?」
「無いですね。
ただ、行方不明者が発見できた時の為に救護体制は整えて頂きたいと思います」
「傷の程度はどの程度と思っている」
「最悪の瀕死でお願いいたします」
「解った。
これがキタココのギルドから来た、詳細内容だ。目を通してくれ」
「はい」
「内容は理解しました。お返しします」
「では、キタココのギルドで落ち合おう。
それで・・・・何でメルナ受付嬢は冒険者の装いに着替えているのかな?」
「どうせキタココのギルドで打ち合わせなんだろう」
「そうだが」
「あそこのギルドにはやばい奴が居るからね」
「はぁぁクルミクか」
「あいつはやばい。絶対にリット君に付いて行って既成事実を作りやがる」
「えぇぇ?」
「可能性は否定しない。リットも身に覚えがあるだろう」
「どうなんでしょうか。思い当たりませんが」
「やっぱり危険認定。あたしも付いて行くよ」
「なぜ危険認定なのでしょうか?」
「リット君の唇でも奪われたら」
「キタココのギルド長キビアラが被害者面して黙っちゃいねぇ。脅すようにお前をキタココギルドの専属にしやがる。
その時、素性を明かせるならいいが、それを聞いたクルミクはなおの事お前を離さない」
「お妃様になっちゃうよ」
「えぇぇぇぇ?」
「クルミクの事が好きで、結婚する気が有るならいいさ。そん時はあたしも候補に入れておくれよ」
「いえっそのっえぇぇっとぉぉ
「顔を真っ赤にしてもう、ほんとぉぉに可愛いね。だから初心なリット君は危険認定」
「と言う事だ。しゃぁねぇな。下は」
「問題無し」
キタココの北門の守衛。
「こんにちは。タブル隊長」
「おお。茶髪のリット様。ご無沙汰しております」
「お久しぶりですね」
「今日は・・もしかしてゴーレムの件」
「はい。呼ばれました」
「どうぞお通り下さい。気を付けて下さいよ」
「ありがとうございます」
ミウラール王国の南の国で、周りを八千メートル級の山に囲まれた盆地。
母が点在していた村落や小さな町を集め一つの国として力を持たせた。いわゆる市町村合併の様な感じ。
四つの大きな町を統治してた長四人が現在も平等な地位でニナルッス連合国を統治している。
母に付いて来ていたので四人とは仲良し。今でもイルリット第三王子大使として受け入れてもらっている。
茶髪のリットとしては会ったことは無い。必ずバレる。
(茶髪の。が、名字のようになっているのですよねぇ)
キタココのギルド。受付の。
「リットくぅぅん」
「あのクルミクさん。抱き着かれますと周りの目が
「いいのいいのかぼちゃが転がっているだけよ」
「クルミクぅぅ。そりゃ酷いだろう。リット様がお困りだ」
「かぼちゃは黙ってて。今日は何?どうしたの?私に会いに来てくれたの。嬉しぃぃ」
「はいあのっ。キビアラギルド長に用がありましてぇ来ました」
「あっ。ゴーレムの件ね。リット君受けるの」
「そのつもりです」
「判ったわ。上で待ってて」
「はぁ」
「あなた達。私ギルド長とお仕事。後はお願い」
「「「はいっ」」」
「リット、すまんな力不足で」
「ありがとうございます。ブレンドル様」




