ピグダット陛下を一気に追い詰める証拠
(計画通り釣り出し成功。まぁ出てこない訳にはいきませんよね。
さぁ追い詰めましょうか。マルージム近衛公安騎士隊長様と全てのお貴族様を味方に付けて)
「イルリット
「座ったままでもいいですか?」
「まだ痛むのか?」
「ええ。痛いですよ。痺れてもいます」
「まぁ良い。でだ
「聞いていらっしゃいましたよね。
例え陛下であってもその先を仰れば貴族が反乱を起こしますよ。国軍。近衛兵も黙ってはいないでしょう」
「うっ」
「申し訳ございませんがお引き取り下さい」
「どうすればいいのだ」
「何も」
「息子二人の首元に刃を向けたままか」
「陛下。小さくお声を押し殺してもここの声は会場に届いていますよ」
「うぅぅ」
「因みにわたくしは十歳以降ずっと兄二人に拳と蹴りを向けられていましたよ。ご覧になったような事を学校の生徒からも。
今更のご心配は無用です。
それとこちらをお渡ししましょう。本当はもう少し後と思いましたが。
わたくしの母の日記のコピーです。
ここにはこう記されています。母が亡くなる寸前ですね。
『イルリット。毒を盛られたようです。もう長くは無いでしょう。明確な証拠としてイジルバーバラの直筆のサインが載った命令書を此処に沿えます。
ですが。わたくしが死んだ後のあなたの処遇が気になります。
恐らく、十八歳の誕生日に不貞の子して廃嫡されるでしょう。
命の危険に晒されると思います。逃げなさい。逃げて逃げて逃げ延びて王家の手の届かない場所に辿り着いたら。
その時は自由を謳歌しなさい』
今はお見せ出来ませんが、母を毒殺した言い逃れの出来ない確固たる物的証拠の存在も記載されています。
母に従順な侍女だったライニー侍従長が大切に保管していて下さって、誕生日前の本日渡して頂きました。
勿論、ライニー侍従長は内容をご存じありません」
「誠か」
「コピーですからどうぞ」
「ぐっ」
「間違いないですよ。母独特の文字で誰も真似は出来ません。
イジルバーバラ妃様のサインは嫌と言う程見て来ましたから。
両方共、原本の妖精の波長をキャラカン教授に辿って頂くのも良いでしょうね。
陛下。
どうなさるおつもりで?」
「か 考えさせてくれ」
「殺人ですよ。それも一国の妖精協会が認めた正妃の。ふざけていらっしゃるのですか?
お貴族様ぁぁ。人を殺してもお咎めは
「待てっ。
精査する」
「まぁそうですね。
捕縛まではいかずとも・・・どうなんですか陛下」
「うぐぅ・・・マルージム近衛公安騎士隊長。指示を出せ」
「イジルバーバラ妃の周辺を固めよ。捕縛は待て。逆らった場合のケガはやむなし」
「了解。念話を入れます」
「イジルバーバラ妃様お聞きでしょうか。
よくも素敵な私の母を殺してくれましたね。
絶対に許しませんよ。そして今までの私への所業。徹底的に追い詰めますよ。
それと王城、王宮のゴミ箱からイジルバーバラ妃様から兄二人に宛てた書簡も見付けました。八年間王城全てのゴミ捨て当番でしたからね。
ここに八年前からの物が沢山あります。
掻い摘んで申せば。わたくしを痛めつけて自殺させるか事故に見せかけ殺せです。このゴミの書簡で全ての危険を回避できました。
他の貴族のご子息の分も在りますよ。
ああ。ご令嬢を手に掛ける文書なんかは他よりたくさんありましたねぇ。全ての証拠はわたくしが持っていますよ。
えぇぇっと。侯爵閣下のご令嬢。伯爵閣下のご令嬢も多いですねぇ。これが公開されたらお嫁に行けるのでしょうかぁ?
わざわざ命令を文書にしたためなくても良かったのに。
ねぇイジルバーバラお妃様と兄上たち」
「あがっ」
「おいっ」
「ああ、なるほどぉぉふむふむ。お茶会と称してお気に召さない貴族のご令嬢をアジレッタちゃんが誘い出していらっしゃっとぉぉ」
「「やめろぉぉぉ」」
「おやおや。完璧にお認めですか。実行してないと仰れば宜しかったのに」
「「あ”ぁぁぁぁ」」
「陛下。もう一つ。
不貞の輩は兄二人と妹ちゃんですよ。
どこかの宰相様の子供様です」
「なんじゃとぉぉぉ」
「「「あ”ぁぁぁぁ」」」
「ダーレス。貴様まさかぁ」
「宰相様は一旦、三人共嫡子として認めてしまっているんです。
お妃様となってからも床を共にしていた。
何故証拠を残したんでしょうかぁ。まぁ玉座はじきに自分の物と思っていらっしゃったのでしょうねぇ。
慌てて書類を偽造しているのですよ。国王になるシュミレーションはこれです」
「きさまぁぁぁ
「わた わたくしはな なにも
「貴様の文字とイジルバーバラの文字ではないかぁぁぁ」
「あぁぁぁ
「医務室の何とか医務室長様も妖精の鑑定が鈍っていたのでしょうか。わたくしまでも実子と見抜けないほど」
「あ奴も仲間かぁ
「ネジレッタ医務室長を逃がすな」
「はっ。今、念話連絡を入れました」
「陛下いいんですか?」
「何がだ」
「実子であるわたくしを不貞の子と宣言なさいました。
つまり陛下と母。マーリレスの実子であると認めた妖精教会を愚弄した事になりますよ」
「それは・・・
「メドーダス殿下とイグアス殿下。アジレッタちゃん
「そうだ。その三人をどう説明する」
「不思議なんですよねぇ。お三方ともイジルバーバラお妃様の身を案じてお妃様の寝室で妖精の確認を行った。
勿論、陛下もお立会いになっていらっしゃいます。
そして派遣されたのは宰相様のご親類の見習い神官。王家相手なのに不思議ですよねぇ。
もう、お辞めなって随分経つようですが。こちら、当時の資料です。どうぞ」
「なんじゃこれわぁぁ貴様ぁぁぁ」
「ひぃぃぃ」
「この一件で教会も不手際が露見し、王家を含め徹底的に調査されるでしょうね。全世界規模で。
陛下は妖精教会の信用すら貶めた。教会神聖軍が動くかも?大変ですねぇ」
「ど どうしたらいいのだ」
「わたくしは既に王家とは関りを持たない者。不貞の子供ですから」
「イルリット。すまなかった。わしの元に
「陛下。これから妖精教会はどのような対応をなさるのかわたくしにも解りません。何せ一度も妖精教会へ出向くことを許可頂けませんでしたから」
「それはお主が妖精の力を持っておらぬから
「他の貴族で妖精の力を持たぬ当主やそのご子息は通っていらっしゃいましたよ。母もそう進言していますよね。だから何も知りません。
それと、もう戻れませんよ。
わたくしの廃嫡の件は兄二人が各国へ送信済みです。では、引っ越しの支度が有りますので失礼いたします。
椅子をありがとうございました。バケツの
「わたくしの方で処理しておきます」
「いえ。金貨一枚で購入します。どうぞ」
「そ
「わたくしの血ですから、全てがお見通しになってしまいます」
「そうでした。どうぞ」
「ああ。わたくしを殺しても今会場に居る貴族が許しませんよ。
そのような素振りを見せたらイジルバーバラ妃と兄上達の所業を公開しますから。それと妖精教会から逃れる事も。
わたくしは十三か国の教会大司祭様と母の時代からお食事を共にする仲。対等な地位を保証されていますよ。
お気を付けて」
「待て。待ってくれ」
「待てよぉ」
「何処へ行く気だぁ」
「ああ。兄様ぁ。最低でも十三か国語と気候風土文化。宗教観や風習を覚えてくださいね。騙されますよ。
わたくしは外交官だった母から色々教わって十二歳から大使をやっていましたから。
もっとも兄お二人が今の地位を維持できればですが。
騎士爵は外交官には成れませんので悪しからず。
ああ、忘れていました。ゴミ箱に在ったこれ。
実子三人から懇願され通常のお小遣いとは別に貴族手当の減俸やら軍備と国境補修費等から捻出していますよ。
およそ五年分。三人で金貨一万枚。お妃様はお一人で金貨五千枚。
これはれっきとした大規模横領。
本来であれば各貴族様に行き渡るお金だったのですがねぇ。宰相様。
そう言えばわたくしはこの八年間小銅貨一枚のお小遣いを頂いた事が有りません。
資料では年間金貨百枚が分配されているんですがね。一度も受領のサインをした事が有りません。
それと大使の任務で頂けるはずの一か月金貨十枚も移動旅費も頂いていませんよ。聞いていますか?財務部さん達。
陛下はご存じ無いかもしれませんが、雇用されている三十代の男性一か月の給与が金貨一枚程度。計算できました?
マルージム近衛公安騎士隊長にコピーをお渡ししておきます。加筆や訂正は出来ませんからね」
「お預かりいたします」
「陛下。外は寒いのでお体に障りますよ」
「待てぇぇ
「何でしょうか陛下」
「金貨百枚では足らぬと申すか?」
「計算できませんか?ですが、全く必要としません。
この服も、学校の教材も、ここの食材から家具。皆さんの給与も全て八年前からわたくし個人で支払っていますよ。
支給されるお金はいったい何処に消えたのでしょうか?
母がナメナット女王国のギルドに偽名で銀行に預け入れが有ったので誰かからの強奪に遭わずに済みました。
十歳からの二年はその蓄財を切り崩して何とか凌いでいましたよ。
はい。マルージム近衛公安騎士隊長。財務部のゴミ箱に在った資料です」
「はぁぁ。お預かりいたします」
「ですから、ご心配は無用ですよ。陛下」
「父とは呼んでくれぬのか」




