イルリットとファーナの願いと使命
王城の北西少しの場所に建立者不明。ようはどの時代の王が建立したのかも記録が残っていない、かなり前から放置状態にあったアクアスカイ教会。王城に在る分規模は大きい。
この世界は妖精を崇拝する立派な教会が存在し王家に匹敵する程、権威も権力も大きいが悪い事は妖精の力との誓いで一切できない。全くの正統派。
生まれた子はその妖精の教会で天啓を受け妖精を身に宿す。
土。水。火。風の四種類が一般的。他に光も居るが確率は非常に低いらしい。その他発見に至っていない妖精もいるらしい。
校長も言っていたが、宿していても発現しない妖精も居るようだ。ファーナが教えてくれた。
その理由までは教会もファーナも解からないそうだ。
(そう言えばファーナは何属性なんだろう。後で聞いてみよう)
このアクアスカイ女神様の教会入り口の三角屋根の上には両手を広げ天を仰ぐ女神様が模られている。
私はその中に入り、両脇の長椅子の間の一直線でステンドグラスの前の祭壇に続く通路を歩いた。
「ボロボロでこの辺りも草だらけだったけどここまでよく修復したと自分でも感心しますね」
祭壇の前でやった事が無かった祈りの姿勢を真似て。
(あっ。二礼二拍手は必要なのでしょうか?生まれて初めて。いえ、二周目の人生で初めてこの姿勢になりましたね。
よく解かりませんが跪いた状態で二礼。二拍手。一礼。祝詞とか言うものも必要でしょうか。えぇぇっとぉぉ。知らないや)
「創世のアクアスカイ女神様。
わたくしはこの地を去る事となりました。新たな地でわたくしなりの教会を早急に建立いたしたいと考えております。
つきましてはお願いがございます。
困った時の神頼みで申し訳ございませんが、親友で最愛の妖精ファーナをわたくしの地に一緒に連れて行くことは出来ないでしょうか。何卒、お願いいたします」
(二礼二拍手一礼)
ステンドグラスが眩く光り、間違いなくその場から透き通る女性の声が・・・。
「十八年振りですね。加神崎勇也さん」
(頭に直接響いた?)
「アクアスカイ女神様?」
「あなたは記憶に無いかもしれませんが、日本国で亡くなったあなたを此処へ連れて来た女神。アクアスカイと皆は呼びますね」
「初めまして。で、いいでしょうか」
「はい。それで先程の祈りの作法は少々違うのですが」
「やはりでしたか。生まれて祝福を受けて以来、妖精の教会に執務以外で行ったことが無いのですよ。妖精が宿っていませんので。
ああ。各国の大司祭様とはお友達のようなものですが、作法は聞いていません。
ですが、この世界のお方はアクアスカイ女神様自体の信仰が無いようなのですが」
「そうよねぇ。少々よその星に
「遊びに行っていらっしゃった。とか?」
「Long Vacationに少々」
「流暢な英語なのか解りませんが長期のお休みを取っていらっしゃったと」
「そうです。戻って超びっくりです。
それでもう一度わたくしへの信仰を
「難しいのではないでしょうか。既に全世界規模で妖精が神格化されて久しく、信仰の対象ですよ」
「そこをなんとかするのがあなたのお仕事ですよ」
「まさかですが、使途となってアクアスカイ女神様の信徒を増やしなさいと?」
「よく理解しているではありませんか。良い子を連れてきました。さすがわたくし」
「あのぉぉ。これってぇ完全に尻拭いですよね」
「そのような下品な言葉をわたくしに向けるとは・・育て方を間違えたのでしょうか。およよよ」
「今日初めてお会いいたしましたが?」
「わたくしは女神。およよよ」
「申し訳ございませんでした」
「既にそれに見合うだけの能力を与えています」
「先払いしているから有無を言うなと」
「およよよ」
「申し訳ございません。
ですが全て初級以下でしたよ。レベル到達点が整数の無限の中で、初期仕様は零点一の
「つ 使えないよりは
「付与する力の量をお間違えになった」
「そ そうです。判っているではありませんか」
「粘土で精巧な形状作ることができる土魔法しか有りませんでした。それも数分で壊れてしまうような」
「あら?そうでしたか?」
「はぁぁ。それで先払いと申されましても」
「今は全ての属性が最上級で使えて、魔力もほぼ無限でしょ」
「こう言っては何ですが、全てわたくし自身の死にそうな努力とファーナが教師となって色々協力してくれたからこそですよ。
全ての魔法が行使できるようになったのはファーナとの出会いでファーナのお陰と言っても過言ではないですよ。
ファーナが全てで、そこにアクアスカイ女神様の
「うおっふぉん。
それで妖精のファーナを伴ってウォーガット領に向かいたいと?」
「あ あれ?」
「何ですか?」
「いえ。既にご存じでしたか」
「大方は。
今、彼女も必死にわたくしに願いを掛けています。とても可愛く愛くるしいですよ。
このようにわたくしに届くような願いは今までにありませんでした。とても嬉しく思います。
お互いに必死なのでしょうね。
これもわたくしが授けた魔力によるものなのでしょうか。さすがわたくし、グッ
「仰らない方が清楚で気品に満ち溢れたアクアスカイ女神様のままで居られますよ」
「やはりそうですね。少々友人がアレなので」
「アレとは?」
「日本国から来たあなたに判りやすく言えばプールや海岸で半裸状態でどんちゃん騒ぎをすことが好き」
「大方解りました。
一つ伺いますが、アクアスカイ女神様はそれがお好きなのですか?」
「何です。その棒読みは。もしかしてわたくしを幻滅しているとか?」
「そのようなことはありませんよ。今後の対応を考えていただけです」
「正直に仰い」
「きちんと仕事が出来ているお方。一区切りつけてご休憩のお方なら何も思いません。必要な事とも思います。
ですがこの星の創世の女神様であらせられるアクアスカイ様は恐らく理想の半分にも達していないはず。
ほっぽり出して遊びに行く余裕はないのではないかと思う次第でございます」
「はぁぁ。解りましたよ。わたくしからのお願いです」
「はぁ。わたくしで出来る事なら」
「相談に乗ってくださる?」
「先程も進言いたしましたが、ウォーガット領のお城に教会を建立いたします。そちらでどうでしょうか」
「呼んだら直ぐに来てくださる」
「時と場合によりますが、ファーナと共に可能な範囲でお相手致します」
「嘘偽りはないか?」
「わたくしとファーナの可能な範囲ですよ」
「で、噓偽り
「ございません」
「お供えは?」
「何がお好きですか?」
「甘い物とお・さ・け。アタリメやイカの燻製も好きよ。ホッケやトロ鯵の開きも。ケーキは各種どれでも。お饅頭もいいですね。それにぃぃ」
「どちらの国のご出身なのでしょうか。
今日の所はこちらのイチゴのケーキとアップルパイでご容赦ください」
「ワインやブランデーは?」
「持っていません。ワインはこの世界にも有るようですがウイスキーもブランデーも有りません。そもそもあっちでもこっちでも未成年です」
「そんなに怒らなくてもぉ。およよよよ
「申し訳ございませんでした。買えるようになりましたら次回にお供えします」
「カガミザキホテルとカガミザキ商会で提供しているでは有りませんか」
「ワインやミード。エールなどです。
いくら創設者と言えど十八歳のわたしには仕入れの権利が有りません。飲むことは十五歳からできますが。
それで持ち歩きも禁止事項です。
今は従業員の名前を借りて仕入れています。
仕方ないですねぇ。
暫くしたら従業員の方にお願いしてお供えするように致します」
「請求したようで申し訳ないですね。
それで一つづつ?」
「何人いらっしゃるのですか?」
「わたくしを含め三人よ」
「そちらのお方とご相談を
「それはそれ。これはこれ」
「お一人様に二種類三個づつ。紅茶もお付けしました。どちらに置けば良いでしょうか」
「祭壇へ」
「今行きますね」
「どうぞ」
「傅いたら取れるの」
「どうぞお持ち帰りください」
「一点確認です。わたくしを恨んではいないの?」
「そうですねぇ・・色々と思うところは有ります。
ですが、ファーナに出会えたことをとても嬉しく思っています」
「ファーナに出会えなかったら?」
「早々に死んでいましたね」
「はぁ。そうですか。お供えは頂いて行きます。
致し方ありません。願いを聞き入れましょう。いらっしゃい」
「あら?教会?リットの肩の上?なのです?」
「いらっしゃいファーナ。
正面のステンドグラスを見てごらん。人型に光っていないかい?」
「もしかしてアクアスカイ女神様?」
「ファーナ。初めまして。創世のアクアスカイ女神ですよ」
「直接頭の中に話し掛けていらっしゃるですか?
ああ、ここに座っていてはダメなのですぅぅ」
「そこに居なさい」
「は はい。なのです」
間違い無く私の右肩で正座をしている。
「ファーナ。今のその姿で、この先わたくしの許可有る限りイルリットに付いて行くことを望み誓いますか」
「良いのでしょうか?」
「良いから誓いを聞いているのですよ」
「望みます。誓います。アクアスカイ女神様に誓いますです」
「わたくしも創世のアクアスカイ女神様に誓ってファーナを離さない事を誓います」
「婚儀を結ぶのではありませんが・・・まぁいいでしょう」
「「ありがとうございます」です」
「これであなた。イルリットはこの世界最強の人種となりました」
「どうしてでしょうか?」
「自身で鍛え抜いた剣技と体術、柔術は既にこの国に敵無し。
そして、わたくしの魔力を使った魔法の独学の最高位熟練度。それとファーナの魔法。この二つを所持する者はこの世界にあなた以外には居りません。
その力を以てこの世界の何処からか侵入した魔物達を駆逐して貰いたいの。それがあなたのもう一つの使命」
「そうですか。お留守にしていましたから
「何か言ったかしら?」
「ですが、ウォーガット領の領主である以上、そうやすやすと国外には行けませんが」
「そこは考えて頂けるかしら」
(えぇぇ丸投げ?)
「期限などは在るのでしょうか?」
「そんな冷たい女神ではないはずなのですがぁおよよよよ
「聞こえました?」
「聞こえたですよ。『えぇぇ丸投げ』と呟いていたですよ」
「ごめんなさい」
「ちゃんとその辺りのBackupは考える積りですよ。
そして期限は設けていませんよ。ただ取り掛かりは早くして頂けるかしら」
「はい。判りました。
それで、ファーナはエルフやドワーフと同じで永遠の命に近いでしょうが、わたくしは頑張っても八十年程です。
妖精を宿していて発現していれば百五十から二百歳。
エルフの混血で二百から三百歳。
わたくしは人種で自身を知る限り転生者で有って混血で有りません。
世界中となると期間的に無理なような気がしますが」
「因みに・・そうですね。またその時考えましょう」
「判りました」
「ファーナ。イルリットにはわたくしの使徒として信者を増やす使命を授けました。
今の件も含めてイルリットに協力してくれるかしら?」
「勿論ですアクアスカイ女神様。イルリットと共に頑張るです」
「では、護符と協力の証の恩恵を与えましょう」
「あぁ来ましたです。凄い量なのです」
「上手く使いこなしなさい」
「はいなのです」
「それと、一点確認なのですがいいでしょうか?」
「どうぞ」
「ファーナと結婚できますか?」
「ななななな何を言ってるですかぁ?」
「私は真剣だよ」
「妖精と結婚などを考えるのは日本国からの転生者だからなのでしょうか。
その体格差で何をどうしようと言うのですか?」
「常に一緒に居られればいいのです。誰にもファーナを渡したくはありません」
「既に他者が奪う事も宿る事も出来なくなっていますよ」
「ありがとうございます。ですが、結婚がしたいのです」
「良く解かりませんが、そうですねぇ。許可を出す前に一つ条件が有ります」
「はい」
「人種やエルフの女性を二人以上娶りなさい
「えぇぇぇ?」
「いえいえ。こちらが『えぇぇぇ?』と、投げ掛けたくなりますよ。
創世の女神アクアスカイがHaremを許可するのですよ。何が不満なのですか?
ああ。あなたの常識は一夫一妻でしたね。
驚くことは無いですよ。知っての通り一夫多妻が常識ですから。養えるのなら何十人でも何百人でも。
今のあなたなら千人でもいいですよ。
そして全ての妻と必ず子を成す事。
だたし、相思相愛でファーナと同等程度愛せる相手のみです」
「ファーナが最愛です。三人同時に愛する事などできません。愛の尺度を計る方法を知りません。それは無理が過ぎます」
「その条件を確認後に考えます」
「私の話しを聞いて
「では、幸運を」
「あぁぁぁ女神様ぁぁ
「消えてしまったですよ。と、言うかいきなりでビックリです」
「ずっと決めていたんだよ。ファーナが大好き。一緒に居たい。結婚したいって」
「わた 私は・・リミットベイ隊長がいらっしゃったですよ」
「そうだね。そのまま肩でいいよ」
「はいなのです」
教会入り口から何故か、申し訳なさそうな雰囲気を醸し出したリミットベイ隊長が歩いて入って来た。
(廃嫡されて見限った・・・ああ、離職届か解雇通告書が必要でしたね)




