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 針路と進路を模索

 「真面目な話し。リットはどう思っているです?」


 「明後日の午前零時を以て廃嫡。ようは十八歳になった明日の夜中に廃嫡。

 そして明後日には荷物を纏めてここを出て行け。

 恩情が付けば北の砦が領地のウォーガット領に騎士爵として送り込まれるんじゃないかな」


 「どうして廃嫡が今日では無いのです?」


 「私の思惑通りだとして、十八歳にならないと貴族の階位は叙爵出来ないから。

 そして、今日廃嫡してしまうと平民になってしまうから色々面倒事が起きる。

 今日廃嫡されるなら潔く平民を受け入れ、ここを出て行くよ。

 ただ、今のお城の中の事情を考えると百パーセントそれはあり得ない。

 だから十八歳になった明日」


 ウォーガット領。

 この国。ミウラール王国の北の果ての大河を挟んだ山脈の向こう側。ここ、王都からおよそ千キロ離れた場所。

 冬は半年ほど雪が消えない極寒の地。永久凍土では無いので一定の作物は育つ。逆に春から初秋までは非常に過ごしやすい。

 ただ、国内最大量で凶悪な魔物がすぐに溢れるため【死神の待つ領地】と呼ばれて避忌されている。実際にスケルトンやグールーも出没する。

 魔物達は大河をものともせずに泳いで渡ってこちら側に攻め込んでくる。

 出現率は非常に低いが天災級のドラゴンやワイバーンも出没する。


 そしてなんとも厄介なのがその西に国土を持つバールデシタ帝国。

 常にミウラール王国の国土の北半分を狙って幾度となく戦争を吹っかけて来ている。

 バールデシタ帝国とは深い渓谷を通じてウォーガット領と繋がっている。

 勿論、国境砦が三重に建設され、どれも門が存在しないが爆弾。いわゆるダイナマイトを使って破壊し攻め込んでくるのが常套手段。妖精の力では破壊出来ないようだ。

 ただ、大きくは破壊できないため物資の輸送上、送り込める兵士は二千人から三千人がせいぜい。

 多少お相手をして、放置しておけば魔物達に駆逐され、引き返すの繰り返し。

 放置し過ぎると間違いなく攻め込んで来るので厄介。

 今は半年ほど前に起きた土砂崩れでウォーガット領主と領地軍が全滅。三重の国境砦が埋め尽くされバールデシタ軍が丘越えが出来れば数万人規模の軍隊が送り込める。

 ただ今は攻めあぐんでいるようだ。

 この二点でミウラール王国の国防にとっては最重要領地。

 なのだが、その補修と対策に誰が行くかで揉めているのが今の王城。押し付け合って紛糾していると言っても過言ではない。

 貴族様も国民の為に命を張りなさいと言いたい。


 「リットがたまに遊びに行っていたところです」


 「多分そうなるだろうと思って転移魔法で行って、無人の領地を少しづつ開拓していたからね」


 「もう魔物は居ないですか?」


 「一応出現地点と思しき場所三か所は潰したけど、消滅した訳では無さそう。

 野良の食べられるオークやミノタウロスは残してあるよ。こっちの人達はオーガも食べるみたいだけど私は苦手だよ」


 「何れのパターンでも、もしそうなったら寂しくなるのです」


 「どうして?一緒に来てはダメなの?」


 「妖精のままこの土地を離れる事が出来ないのです。掟なのです」


 「そうなの?」


 「はい・・なのです。掟を破れば消滅しそうです」


 「それは嫌だよ」


 「でも、リットには宿る事が出来ないです。他の人に宿ってもお話しは出来なくなるです」


 「私も離れたくないなぁ。何とかなる方法は無いのかな」


 「無い事は無いと思うのですが調べてみないと判らないのです」


 「私が居なくなると一人ぼっちになっちゃうの?」


 「妖精は元々一人ぼっち。こうしてリットとお話ししてお茶を頂く事など聞いた事が無いのです」


 「この八年。いっぱいお話ししたよね」


 「とても楽しかったですよ」


 「まだ、お別れと決まった訳じゃ無いでしょ」


 「そうなのです・・が」


 「取り敢えず準備して行ってくる」


 「今まで調べて来た証拠を叩き付けるですか?」


 「向こうの出方次第だから、それはまだかな。

 それに私の立場を確立させないと効力が発揮できないからね」


 「うぅぅむ。とっても難しいお話しだったので理解が出来ていなのです」


 「また、ゆっくり教えてあげるよ」


 「カガミザキ商会とカガミザキホテルはどうするですか?」


 「そのまま存続させるつもり。

 ただ、今日の向こうの出方次第かな。

 最悪の場合は畳んで、ここの人が付いて来ると言うなら、ナメナットにでも移住しようかな。

 十分賄える資金は出来たし、また新たな事業を始めても良いと思っている。

 ファーナも一緒に来てもらうよ。ここには置いて行かない。

 絶対に良い方法が有ると思っているよ」


 「ありがとう。なのです」


 「何を言っているの。じゃぁ行ってくるね」


 「お茶を飲んでていいです?」


 「勿論。また後でねファーナ」


 「はいなのです」

 (私も絶対に離れたくはないのです。美味しいお茶を飲んでいっぱい考えるです)

 「美味しい。ライニー侍従長さんの焼いたクッキーもぉぉ。マードさんが来たのです」


 「おやおや。殿下は行かれてしまいましたか。ファーナ様お一人で。

 では、不肖の爺が近くに居ります。ごゆっくりとなさいまし」


 「ありがとうなのです。マードさん。

 今日も見えないし、聞こえないんですよね?」


 「今日はですねぇファーナ様。お花たちが騒いでいます。

 殿下に置いて行かれるって。

 どうしたんでしょうかねぇ。

 ファーナ様はお花とお話しは出来ますか?

 これだけ歳を取ってもお花の言葉は解かりません。感じるのがせいぜいです。

 お花たちが騒ぐほどですから、殿下の身が心配ですよ。今までで初めてです。

 おっと失礼を致しました。妻を亡くし。子供らを送り出してからは独り身で、話し相手がお花だけになってしまいました。

 これもまた何度もお話ししておりましたね。

 ごゆっくりどうぞ」


 「ありがとうなのです。マードさん。

 お花さん達もマードさんも凄いのです。私も頑張るです」

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