病院の向こう側へ
病院の向こう側を彼女は知らない。
中学校の帰り道、夕日に照らされながら病院の前を歩く。
アスファルトの照り返しと学年が上がる度に多くなる教科書が体力を奪う。
もう3年生だ。
(熱い〜、5月なのにもう暑い、もはや異常気象だろ)
俺は、日差しから逃げる様に病院に入った。
父が医者なので帰りを待つ為に来ていた。
周りは世間話をしている老人しかいない。
旗から見ると同窓会の様だった。
黙って待っても暇なので病院内を歩き周る。
(あの部屋って誰が入ってるんだろ…)
前から気になっている部屋があった。
そこは皆から避けられている様に人通りが少なく近寄り難い雰囲気がある。
実際病院の一番端っこにある部屋なので俺は行った事がなかった。
(あ!)
丁度良いタイミングで、中学生らしき女の子が部屋に入る。
光が反射するほどの艶の良い髪に透明に透き通った肌が自分の目を鷲掴みにした。
細い手には黒いカメラを持っている。
俺は糸で引っ張られる様に部屋に吸い込まれた。
これが俺にとっての運命的な出会いだった。
パシャッ
「え!なに!」
音と共に眩しい光が俺を包む。
チカチカする目を擦り、視界が元に戻ると一人の女の子。
「どうしたの、迷子?ふふふ、そんな訳ないか」
「今の何?カメラで撮ったの?」
「そうだよ、こっち見てたから気になって、駄目?」
普通なら不快に思う筈なのだが、俺は気にならなかった。
彼女の立ち姿は煌めいて見える。
「あ!丁度良いじゃん、はい、これ持って」
彼女からいきなりカメラを渡される。
見た目以上に重い。
「え、ちょっと何?」
「次は私を撮って、撮り方ぐらい分かるでしょ、私が生きてる証が欲しいの」
俺は彼女の勢いに負け、カメラを構える。
初めて使うカメラなので手でボタンの位置を確認した。
「私は美少女だから可愛く撮ってね、ニィーー」
腰を斜めに曲げニコッと笑う彼女をレンズ越しで見ながら思った。
(綺麗…)
パシャッ
「はいっ、ありがとうね、ところで名前は?」
「拓海、遠藤拓海」
「私は美咲、これから宜しくね」
「これから宜しくって…俺まだ何も言ってないけど」
「だって制服で入院するの?ここのフロワは入院患者しか入れないよ」
俺は廊下に出て看板を確認した。
確かに入院患者以外立ち入り禁止と書いている。
「よく見掛けるけど病気なの?全然そんなふうに見えないけど」
「父さんが医者でここで働いてるから帰りを待ってるだけ」
「なら又来るでしょ、私いつも暇だから遊んでよ」
まさかの提案で俺は返事に詰まる。
(どうせ父さんは俺を家に送るだけで家に居ても一人だしな…)
「いいよ、暇だったら放課後遊びに来るよ」
美咲は俺の返事を聞くと小さくガッポーズしていた。
今日から俺と美咲の奇妙な関係が始まった。
「普通に綺麗だと思うよ」
「綺麗って何?可愛いかどうか聞いてるんだけど、あと、普通って言葉いらないから」
この前撮った写真を見ていた。
絡んで数日経つが勝ち気な性格だと分かった。
「ふふふ、ねぇ見て、拓海ってバカな顔してるよ」
「バカってお前なぁ、いきなり写真撮られたら誰でもこんな顔になるわ」
確かに俺は酷い顔をしていた、否定はしない。
「私は世界一の美少女だからいつ撮られても大丈夫でしょ」
「それ自分で言うのかよ…」
「だって事実だもんね〜」
(一概に否定出来ないのが悔しい、まつ毛長いし顔は色白、見れば見るほど人形見たいだ)
夕日が沈み帰ろうと思ったが気になる事があった。
この部屋には二つのベッドがある。
一つは美咲のでもう一つは誰のか分からない。
「このベッドって誰か使ってるの?」
「最初二人部屋だったけど6年前に退院してから私だけになっちゃった」
(俺と同じで美咲も一人なのか)
「え、もしかして一緒に寝たいの?」
「…ってバカッ、一緒に寝る訳ないだろ」
「ふふふ、今変な間あったよ、拓海君って意外とエッチだね」
俺は美咲の言葉で顔が紅くなり、顔を背ける。
背中が熱い。
「うるせぇーもう帰るわ」
「拓海くん、また明日ね〜」
(また明日か…いい言葉だな)
「おう、また明日な」
俺は次の日を約束した。
次の日があるのは嬉しい。
中1の時、母さんはいきなり居なくなったから。
6月、梅雨入り。
「ビショビショじゃん!風邪引いちゃうよ!」
「途中で雨降ってきたわ、タオルある?」
俺は嘘をついた。
最初から土砂降りだったが走って病院まで来た。
なんでこんな変な嘘をついたか分からない。
「傘はどうしたの?」
「忘れた、てかいつも持ってない」
「は?何それ、意味分かんな〜い」
「でも会いに来たから」
俺はタオルで水を拭き取る。
タオルと髪の間から美咲を見ると目があった。
目が合って、時が止まって、また動き出す。
「あ、あり…がとう」
いつもは余裕そうな顔が少し崩れる。
顔を下に向け、髪で目を隠し口元が笑う。
美咲は小声で何を言ったか分からなかった。
「暑いね〜もう7月だよ」
「美咲は外出てないから暑くないだろ」
「あ!今絶対言ったら駄目なこと言ったーー、美少女の私が泣いたらどうするの?えぇーん」
美咲が分かりやすい泣き真似をする。
俺をからかっているのだろう
(でも今の発言は良くなかったなぁ、謝らないと、でも謝るのってどうするっけ?)
久しく悪い事をしたり、誰かを怒らせた事がないので対応に困った。
「その…美咲、今のは配慮がなかったと思う、ごめん」
俺は頭を下げて誠心誠意謝った。
少し不本意だが。
美咲の反応がないので顔を上げていいのか困る。
(もしかして本当に泣いてたりするのか?)
俺は恐る恐る顔を上げた。
これで泣かせていたら俺はサイテー野郎だ。
クスクス…
美咲は手の間から目線を俺に向けていた。
顔はニヤニヤして笑っている。
「アレ!?もしかしてバレたぁ、ふふふ、そんな本気で謝らなくていいのに」
「こっちは結構焦ったんだけど!」
「ふふふ、だって拓海がどんどん顔色が悪くなっていくから面白くてさぁ〜」
美咲は高笑いした。
美咲の笑顔で怒りは綺麗に消えた。
それよりも、初めてここまで笑ったのが面白くて、嬉しくて、可愛いくて、俺も笑った。
それを見た美咲は更に大笑いした。
美咲と居ると全てが面白くて新鮮だった。
8月
「海良いなぁ〜」
テレビでビーチの映像が流れ美咲は呟く。
「そんなに良いか?」
俺は海より山の方が良い。
理由は決まっている。
「海行きたくないの?」
「行かない、面倒くさいし、俺泳げないから行ってもつまらん」
「え〜カナヅチじゃん、ダッサ〜い」
「うるせぇーよ、もう来てやんねぇぞ」
少しの沈黙が流れる。
「その…なんで夏休みなのに毎日来てくれるの?」
「会いたいから」
俺は間髪入れずに即答する…そして病室は静かだ。
(聞こえなかったか?)
「美咲に会いたッッ」
「そんな!2回も言わなくても聞こえてるって!美少女だからしょうがないよね、私って罪な女、私の魅力がありすぎて怖い!」
美咲は相変わらず強気なスタイルを突き通す。
しかし顔は背けてこっちを見てくれない。
顔は紅く染まった様に見えた。
でももっとしっかり見たい。
(結構勇気を持って言ったんだけどなぁ、この程度だと駄目か…)
「真顔で言っていたらカッコいいセリフなんだけどな」
「うるさい!ちょっと今アレなだけだから…」
パタパタパタッ
美咲が手を団扇変わりに扇ぐ。
勿論、エアコンの冷房は効いている。
沈黙が病室を支配して互いに恥ずかしい。
時が進むのに時間がかかる。
俺が微妙になった空気に耐えられず沈黙を破った。
「美咲の親って見舞いに来てる?まだ見た事ないけど」
「ん〜分かんない、妹が一昨年出来てからあまり会わなくなっちゃったから、私に興味なくなったんじゃない」
美咲は寂しそうに苦笑いをした。
また俺は無神経な事を言ってしまったらしい。
でも俺が無神経なお陰で分かった事がある。
美咲の親は俺の親と似ていた。
「俺と一緒だ」
「えー、それは違うでしょ、お父さん居るじゃん」
「お父さんは…親じゃなくて保護者だよ」
自分でも何を言っているか分からない。
でもお父さんを親と呼びたくなかった。
「ふふふ、意味分かんなぁーい」
彼女が笑い終わると夏休みが終わろうとしていた。
9月
「最近来るの遅いけど何しているの?」
美咲は低く唸る声だった。
自分の爪を見ていて俺を見ようとしない。
(相当機嫌が悪いな)
「体育祭の練習、遅れてごめん」
「別に謝んなくていいよ、謝って欲しい訳じゃないし」
「明日からもっと早く来るッッ」
「辞めて!!そんな気使わないで!私が…私自身が嫌いになる、嫉妬して重くて痛くて周りを不幸にしてばっか、もう何もかも嫌!」
美咲が初めて感情を爆発させるのを見た。
今まで勝ち気で笑顔が耐えない美咲はいない。
薄々気づき、見て見ぬ振りをしていた現実が目の前に迫る。
初めて会った時より顔色が悪く、細い腕は更にか細くなっていた。
(俺はどうすればいい?何をすればいい?)
「私、また検査悪かったんだ、だから拓海に八つ当たりしちゃった、ゴメンね」
無理して笑おうとする美咲の目は絶望していた。
目を見て一昨年を思い出す。
俺も同じ目していた気がする。
父は日本の名医と言われる人だった、でも父親としては最悪だった。
父は仕事一筋で家に帰るのは1年で一ヶ月程度。
それでも結婚記念日だけは家に帰って来ていた。
それが我が家の唯一のルールである。
でも父は唯一のルールを破った。
帰ってきたのは次の日の10時。
「急患が出て帰れなかった、すまん」
(もう少しマシな言い訳をしろよ、母さんは絶対納得しないぞ)
「もう大丈夫です、いつもの事ですもんね、分かりました」
父の大好物であるカレーは皿ごと捨てられている。
当然父も気づくが、深いため息と共に寝室に入った。
父が寝室に入ると母に抱き締められた。
母の手は震え、俺の肩に涙が落ちる。
「拓海だけは、お母さんと一緒よね、良い子だから離れたりしないわよね」
震える母の手を離してはいけないと思った。
俺だけは裏切ってはいけないと思った。
俺は肩に置かれた母の手を強く握り返した。
1年後、家に帰ると誰も居なくなった。
父以外の人と仲良くなったらしい。
その日以降母の顔を思い出せない。
母は俺も嫌いになったのだろうか…
美咲は虚ろな目で布団を見ている。
自分の人生に絶望していた。
(アレ?最近美咲は、歩いているのを見てないな、ずっと布団の上だ)
前はカメラを持って病院内を撮ったり窓の風景を撮ってた気がする。
でも最近は布団の上からしか撮っていない、いやもうほとんど撮ってないかも知れない。
(今の美咲に何を言えばいいだろう、今の美咲に何を見せれば希望を持ってくれるだろう?)
俺は一つの答えを自分なりに見つける。
正解かどうかは分からない。
でも…不正解だとしても正解にしてみせる!
「美咲、カメラを貸して欲しい」
「な、なんで!いきなり」
俺は美咲の返事を待たずに、テーブルの上に置いてあるカメラを掴んだ。
日が暮れ満月が写る窓を思いっきり開けて写真を撮る。
パシャッ
「拓海、いきなり何してるの?」
俺の奇行で目を丸くしており、若干引いている。
不器用な俺でも分かった。
それでもよかった。
美咲には絶望するのではなく、希望に満ち溢れて欲しい。
「俺が外の世界を先に見せてやる、いっぱい撮って美咲に見せて、病気が治ったなら一緒に外に出よう」
「な、なんで、そんな事までしてくれるの?私、今、全然可愛くない、クラスの女の子とかにしなよ、拓海の気持ちが分かんないよ!そんな事されたら期待しちゃうじゃん!」
美咲は涙を浮かべ目は充血している。
声は掠れ唇は震えていた。
俺は細くなった手を握りしめた。
もう離したくないから、美咲には寂しい思いをして欲しくないから。
「好きだ、病気が治ったら付き合って欲しい、高校に行ったら旅行に行こう」
美咲の眼に光が灯った、俺の喉は燃えるように熱い。
時は止まり二人だけの世界に入る、他には誰も居ない。
「ふふふ、拓海ってホントーに訳わかんないよね、高一で旅行行けるの?」
「なんとかする、お金はバイトして貯めるから」
行き方もどこ行くかも決めてない。
でも美咲を外に連れ出したい、それは今もこれからも同じだ!
「それは私が世界で一番の美少女だから?」
上目遣いで聞いてくる美咲は可愛い。
顔が火照ってるのに気付かないのも可愛い。
「他の誰よりも美咲が一番可愛いよ、だから好きだ」
「ふふふひひひ…本当に私って可愛いんだ…」
美咲は引き笑いをして布団を被り顔を隠す。
足をバタバタさせた後、目元だけを布団から出す。
「拓海、カメラ貸して、ツーショット撮りたい」
美咲に促され顔を寄せる。
月を背景にして俺と美咲は写真を撮った。
俺は無駄に自信満々の顔で美咲は照れくさそうにしている。
月明かりに照らされた美咲は輝いていた。
体育祭当日
俺の一番嫌いな競技がやって来た。
親子二人三脚である。
一昨年まで母さんと出ていた。
去年は一人だったので先生と一緒に出た。
俺だけ誰も来なかった。
多分今年も。
「知ってるか?お父さんは学生の時陸上部でエースだったんだぞ」
「は!?なんで居るの!」
バァン!!
意味も分からず父と走る。
スタートは遅れ最下位からのスタートだ。
だけど今の俺には関係ない。
何故父が居るのか?横で一緒に走っているのは本当に父なのか。
疑問と困惑が入り乱れて足が進まない。
しかし父との会話は進んだ。
母が家に帰らなくなってからマトモな会話は初めてである。
「母さんの事はすまなかった」
「そんなの…今更遅いよ」
「あぁ、その通りだ、でもお前の事は諦めたくない、まだお父さんは間に合うか?」
「ギリギリかもね…」
「だよな…」
最初最下位だったが時間が経過する事に息が合ってペースは上がる。
後ろから怒涛の追い上げで周りから歓声が上がった。
「ハァ、ハァ、ハァ、クッソッ、2位かよ」
二人三脚ではあまりない疲労が溜まる。
最後は全力で走ってる気分だった。
「今日言われたんだ」
「ハァ、ハァ、何を?」
「絶対体育祭に行ってくれって、私の事はいいからってな、初めて患者に怒鳴られたよ」
誰が言ったのか頭に浮かぶ。
俺の為に怒って心配してくれる人は、世界で1人しか居ない。
本人が一番辛く大変なのに。
「父さん、頼むから治してほしい、一緒に旅行に行きたいんだ!」
「…」
父さんの顔は複雑そうに顔を背けた。
現実が急激に迫ってくる。
嫌なモノを見た、忘れたい、夢に出てきそうだ…
体育祭を終わってすぐ病院に駆け込んだ。
クタクタになっても疲れた足は止まらない。
一番会いたい人が居る、お礼を言いたい人がいる。
「美咲!!ありがとう、父さんと仲直り出来た気がする」
病室に入ってすぐに頭を下げた。
感謝の言葉しか出てこない。
美咲のお陰で父さんとの確執が少し取れた気がした。
しかし本人は知らん顔をする。
「何が〜?」
「何がってそれは…」
「そんな事よりこれ見てよ!」
美咲の手には旅行雑誌がある。
他の山積みになった本も同じだろう。
「これって…」
「ふふふ、最初はやっぱり北海道でしょ!ねぇ知ってた?函館山の夜景って日本三大夜景って言われてるんだけど…どうしたの?」
「う、うぐっ…ごめん、なんか寂しくて…ずっとい…たく…」
俺の頭は、美咲の胸に寄りかかる。
美咲の痩せ細った身体に頼らないと立っていられない。
美咲と手を握っていないと安心出来ない。
美咲の眼を見ないと前が暗くて何も見えない。
美咲の声を聞かないと生きていられない。
俺は情けない姿を見せてしまった。
気丈に振る舞う美咲の姿が胸に染みた。
俺は涙を零しながら美咲に頭を撫でられる。
「大丈夫、私はそんな簡単に死なないよ、ずっと側に居るからね」
美咲の笑顔は寂しい。
美咲の声は寂しく脆く美しい。
それから一ヶ月間旅行雑誌を読み漁った。
沢山の旅行計画を立てる、どこから行くかは決まっていない。
旅行計画を分単位まで拘っていた時間は、俺の幸せだった。
そして今日、美咲は死んだ。
学校を終わり病室を訪ねると美咲の姿はない。
胸騒ぎがする、頭が痛い。
俺は病室を出て病院内を走り回り父に呼び止められた。
美咲の訃報を知り俺は立ち尽くした。
父から渡された手紙が最後の別れを告げる。
最初の一文で駄目だった。
「あぁ、まずい、これ以上は…ここで泣くわけには…」
気持ちとは裏腹に手紙をめくる手は止まらなかった。
「拓海君へ
この手紙を読んでいる頃には、私はこの世にいないでしょうって一度は言ってみたいセリフを言わせて貰います。
可愛くないですか?エモくないですか?
ドラマのワンシーンみたいで私は胸がドキドキしています。
多分私が死んだら拓海君は悲しむ事でしょう、てか絶対悲しめ!(笑)悲しんで泣きまくって落ち込んで下さい。
でも私は拓海君と違って全然悲しくありません。
死ぬのが怖くありません。
だってこれからも一緒に居るんですから。
私が貸したカメラは返さなくていいです、その代わりにこのカメラを持って病室の外に連れ出して下さい!
このカメラを私だと思って日本中を旅して下さい。
その時は絶対に他の女の子を連れて来ないでね、もし知らない女の子がいたら拗ねちゃうからね。
ふふふ、冗談ですよ。
他の誰と居てもいいです。
私と同じぐらい可愛い子と居てもいいです。
(多分いないけど…)
私は拓海君と同じ景色を見たいです。
拓海君と同じご飯を食べたいです。
同じ電車、同じバスに乗りたいです。
拓海君と同じ様に笑って泣きたいです。
最初は函館に行きたいなぁ〜、函館山から夜景を観て次の日五稜郭に行ってフェリーに乗って帰って来る。
最高じゃないですか!私はワクワクしてきました。
ある程度日本を回ったら、次は海外が良いですね。
行くとしたらスペインに行ってサグラダファミリアを見たいなぁ〜
あ!今、欲張りな女だと思いましたね!
そうですよ!私は、欲張りな女の子なので拓海君はいっぱいお金稼いで下さいね。
ふふふ、いっぱい冗談を話して疲れました。
長くなるので、今から真面目な話をします!しっかり聞いて下さい!
拓海くん、好きです、大好きです。
初めて会った時から胸が熱いです。
拓海君が来ないと寂しいです。
拓海君が来る前に髪を整える様になりました。
前はそんな事なかったのに!
私は拓海君と出会って変わってしまいました。
だってしょうがないじゃないですか!
ずっと病室に居たのに、いつ死んでもいいと思っていたのに、いきなり現れるんですもん!
最初は王子様かと思いました。
拓海君が隣に居るだけで人生に色がつきました。
拓海君と話をしてるだけで毎日嫌だった治療を頑張れました。
最後に、私を病室の外側に連れ出してくれてありがとう。
世界一の美少女より。」
「う、うぅぐ…俺…なんかが王子様なわけねぇだろ、美咲…も、もう一回会わせてくれよ」
俺は美咲が残したカメラを胸に抱いて泣いた。
涙が止まらなかった。
高校卒業後、自分は写真家になった。
世界中の絶景をカメラに収める為に。
美咲に病院の外を見せてあげる為に。
美咲は見えているだろうか。
見ているなら隣で笑っていて欲しい。
隣に居る君は、世界で一番の美少女だから…