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夏の夜の回転木馬
とん たんたんっ
とん たんたんっ
ある夏の夜の遊園地
回転木馬の灯りを背にして
妖精たちが軽やかに踊る
不思議な舞台のその下で
魅入られていた少年は
妖精の一人に手を引かれ
両の掌に指を絡ませ
ぎこちなくも歌い踊る
それは夢か幻か
あの日の夜に駆けてた木馬
今は静かに立ち止まり
観客のいない静かな舞台を
じっと黙って見下ろしている
命の音も自然の声も
鳴り止んだはずの場所なのに
それでも時折どこか遠くで
あの日に流れたあの歌が
吹き抜ける風に誘われて
舞って流れて響いて消えた
夏の夜の ただひとときの 思い出は
薄れていくほど 鮮やかに見えて