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陰陽
陽の光って暖かいよね
身体の奥の底の底から
じんわり温めてくれる
夜になると怖い細道も
昼間は大した事ないし
晴れ渡る空の蒼い色は
心の霧も払ってくれる
そんな太陽の下に立つ
一本の木に出来る木陰
陽射しが明るいと暗く
周りが暖かくなるほど
身体の芯が冷やされる
月の光も遮る木の葉は
全部を覆い隠すようで
風に揺れて擦れる音は
どこか恐怖を喚起する
同じ様に生まれ育って
なのにあの子は太陽で
なのにわたしは陰影で
何が違ってるんだろう
同じ顔で同じ声なのに
あの子は小首を傾げる
夏の木陰は癒しだよね
暑い陽射しは嫌でしょ
暗くないと眠れないし
隠し事も出来ないよね
癒せるあなたのことが
わたしは羨ましいのに
言ったあの子は笑って
わたしをぎゅっとする
ほら、全然冷たくない
むしろこんなに温かい
続けられたその言葉に
そういうとこだよって
口に出来ずに黙ってる
結局自分も同じように
温かいって感じていて
悔しいけど心地よくて
こんな風に拗ねてるの
不貞腐れた子供みたい
それが何だか悔しくて
わたしは強く抱き返す
ぐえっと変な声が漏れ
少しは心がすっとした
陽の光 強くなるほど 濃くなって
暖かいほど 冷えてく木陰




