ていうかアンタまともな会話で来たんっすか、ライナーさん 2
この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません
「というか、あの…質問とかって許されます?」
「聞いてやらないことはない」
と言って優雅に紅茶を飲むライナーさん。
因みに今の構図は、ライナーさんが椅子に座り、ミニテーブルにはさっきメイドさんがもってきたライナーさんの朝食、私はライナーさんの傍で床に座っている。
うーん、この。
エロ同人誌風に言うなら立場をわからせるような構図だ…エロいことはしてないけど、どちらかと言うとR‐18ならぬR-18G…いやそんなことはどうでもいい。
「解放とかってしてもらえたりします?」
「なぜしてもらえると?」
「ですよねー」
くうっ、呆れたような冷たい視線が刺さるぜ。
「そもそも、解放したところでどこに行くというのかね?」
「えっ…そりゃ…実家?」
「駄目もとで聞くが、貴様が住んでいた場所はわかるのか?」
そういえば、私の実家…?というか、そもそもこの体、10歳くらいだけど私が転生?乗り移る前?の記憶が全然ない…。というか、やっぱり奴隷にされてる時点で売られているか攫われているかの二択なんだが、前者だった場合、帰ったところで気まずいというレベルじゃない。
「わか、り…ません」
「だろうな、奴隷になるやつらは大抵、もとの住処も分からなければ字も書けない、己の名前すらわからない奴もいる、貴様みたいにな」
「よくあることなんすか…」
うーん、やっぱりこの世界うすうす気づいてたけど現代と比べて随分生活水準のレベルというか教育のレベルと言うか…それらが圧倒的に低い。異世界あるあるではあるけど。
だってそもそも奴隷制度がある=人身売買でもしないと生活がままならない人がいる、だからな~。私?もたぶん生活のために売られてきたとは思うけど…
「貴様の見た目からして、どうせ村ぐるみで売られたんだろう」
「え、いくら私が美少女だからって…」
「違う」
ライナーさん曰く、私の子の黒髪と赤い瞳。片方ずつならちょっと珍しいなくらいで別に問題は無いのだが、これが両方そろうとやばいらしい。
悪魔の落とし子、災厄の前触れ、不吉の象徴、存在している場所にはあるとあらゆる災いが降りかかる、と酷い言われようである。
都心でもこの見た目の人間は遠巻きにされるらしいので、それが地方の農村や閉鎖的な村となると…まぁお察しですよ。
「それが原因で売られた可能性が高いと…」
「そうだな」
「ていうかそんな不吉な奴、なんでわざわざ…?」
「周りの人間や肉親からも見放され、絶望のどん底にいる人間が見たかったからだ」
「うわっ性格わるっ…いだだだ!!!」
「何か言ったか?」
「言ってません!何も言ってません!」
くそっ、すぐに暴力に訴えてきやがる。見事なアイアンクローをされた。
にしても握力強いな、腕はほっそいのに。まったく、頭が握りつぶされるかと思ったよ。
と言うかこの人、やっぱりシンプルに性格が悪い。人の不幸は蜜の味Lv100だろ絶対!私を買った動機が動機だし、昨日の夜の事を考えると…性悪最悪のサディストってことかよ。イケメンなら己の娯楽のためなら何でもしていいと思うなよ!
くっ、やっぱりあのおっさんの方がまだましだったか…?いやでも苦痛のジャンルが違ってくるだけでどっちもどっちだな…。
「はぁ…うーん…まぁ、実家に帰れなくても冒険者とかになりたいっすね、ドラゴンとか倒したり」
「無理だろ」
「即答じゃん…あっあれ!ステータス見ないと分かんないじゃないっすか!」
「別にみてやってもいいが…」
「が…?」
「つまらない」
「その正直さはいらない!ほら、低すぎて絶望する私の顔が見れるかもですよ」
「…なにか釈然としないが、いいだろう」
この人…性格がシンプルに悪いが扱いやすいというか…チョロいというか。単純に私が遊ばれてる可能性もあるけど。
ライナーさんは私の前に手をかざした。すると、私と彼をはさむように半透明のパネルが浮き出る。私から見ると鏡文字だが読むことはできた。
そこにはこう書かれてあった。
《人間 Lv1 名前:雑草 職業:奴隷
HP 30/30
MP 8/8
SAN 9999/9999
スキル
【自然回復 Lv 1】【絶対正気】》
「………」
「…サンドバック人間か?」
「なんで名前がもう雑草なんだよ!!??」
「貴様は貴様で、気にすることはそこか?」